「陶器」と「磁器」の違いとは?見た目や色味・材料の特徴も解説

食卓に並ぶお皿をはじめ、さまざまな器を「陶器」や「磁器」と呼びますが、これらの違いをご存知でしょうか?この2つは元となる材料や作り方が異なるため、出来上がった器の見た目や色にも違いが出てきます。

ここでは「陶器」と「磁器」の違いやそれぞれの特徴、見分け方のポイント、英語表現についてもわかりやすく解説させていただきます。

「陶器」と「磁器」の違いとは?

「陶器」と「磁器」の違い①素材

「陶器」と「磁器」の違いは“素材”にあります。

「陶器」は別名”土もの”と呼ばれ、粘土である「陶土(とうど)」という素材を使います。陶土は白色で腰が強く仕上がりがタフ、乾燥しても縮みにくいという特性を持ちます。この「陶土」に「珪石(けいせき)」や「長石(ちょうせき)」を混ぜて使うのが一般的です。

一方「磁器」は”石もの”と呼ばれ、「石英(せきえい)」や「長石」などを砕き、粘土と混ぜ合わせて使います。「石英」は「クオーツ(quartz)」とも呼ばれ、ガラス光沢を持つ透明な水晶を指します。

「陶器」と「磁器」の違い②焼き上げ時の温度

「陶器」と「磁器」の違いは“焼き上げるときの温度”にもあります。「陶器」は窯内の温度800度~1250度で焼き上げます。「陶器」は窯内に十分な酸素をめぐらせ、少しずつ温度を上げていく「酸化焼成(さんかしょうせい)」という焼き方か、もしくは不完全燃焼の状態で焼き上げる「還元焼成(かんげんしょうせい)」という焼き方を用います。

一方「磁器」は、陶器より400度以上高い1200度~1400度で焼いていきます。焼き方は「還元焼成(かんげんしょうせい)」のみとなります。

「陶器」と「磁器」の違い③割れやすいか頑丈か

「陶器」と「磁器」の違いは、“割れやすさ”という点にもあります。「陶器」の方が素材や焼き方の影響で割れやすくなります。「陶器」は粘土の暖かい風味が特徴ですが、一定の衝撃を受けると飲み口や取っ手などの部分にヒビが入ったり、欠けや割れを起こしてしまうことがあります。

「磁器」は堅焼きであるため、「陶器」に比べ衝撃に強く頑丈であると言えるでしょう。

「陶器」と「磁器」の見分け方とは?

音:「陶器」は低くにぶい音、「磁器」はキンキンと澄んだ音

スプーンで軽く叩いてみると、「陶器」はゴンゴンと低くにぶい音がしますが、「磁器」はキーンキーンという金属的で高い音が出ます。陶器は粘土で出来ているため音に広がりがありませんが、「磁器」はガラス素材が入っているため美しく音が響くのが特徴です。

見た目:「陶器」は土のぬくもり、「磁器」はガラスのなめらかさ

風合いの観点から見てみると、「陶器」は土から生まれる独特の温かさやぬくもりがありますが、「磁器」は繊細でエレガント、そして輝くようなガラスの光沢となめらかさが印象的です。がっちりと重みを感じ、厚手で素朴なのが「陶器」で、細かいデザインが生きてくるのが「磁器」とも言えるでしょう。

色味:「陶器」は色合いが豊富、「磁器」はほとんど白

見た目で最も判断しやすいのは「色」の違いです。「陶器」は赤、黒、緑、黄色、青、白などおよそ80色以上の色合いで焼き上げることができますが、「磁器」はほとんど白色です。「陶器」も白色を醸し出すことができますが、オフホワイトやグレーがかった白など「純白」ではない様々なタイプの「白」を生み出すことができます。

器の底にある高台:「陶器」は土色で荒い、「磁器」は薄く繊細

器の底につけられた円状の輪の部分「高台(こうだい)」からも、「陶器」と「磁器」の見分け方のヒントがあります。

「陶器」は茶色く土っぽくザラザラとした感触がありますが、「磁器」は薄くサラッとし、なめらかで綺麗なのが特徴です。表からは見えない部分となりますが、高台は素材や焼き上げの過程で差が出てくる部分でもあります。「陶器」か「磁器」が見分けがつかない場合は、器をひっくり返し高台をチェックしてみましょう。

遮光性:「陶器」は光を通さない、「陶器」は光を通す

「陶器」は光を通しませんが、「磁器」は光にあてると少し透けて光が見えることがあります。磁器の透明感が生まれるのは「光が透ける」という点にあるのかもしれません。

また「陶器」では実現できませんが、「磁器」を太陽の光がさす窓際に磁器を飾ると、ほんのりと光を通すため独特の輝きと光沢を生むことがあります。

「陶磁器」とは何か?

「陶磁器」とは陶器・磁器の総称

「陶磁器」という言葉がありますが、これはシンプルに「陶器」と「磁器」を組み合わせた呼び名となります。

一般的には「焼き物」と言えば「陶磁器」という認識が高いようです。さらに趣味の域になると、それぞれの特徴を理解したうえで「陶器」と「磁器」を上手に使い分け、その日の気分や用途にあわせて風合いを楽しむこともできます。

「陶器」と「磁器」の英語表現とは?

英語で「陶器」は”crockery”、磁器は”china”

「陶器」は英語で「crockery」や「earthenware」です。粘土で作られたという意図で表現する時は粘土素材のという意味の「clay」を使いましょう。趣味として一般的に陶器を意味する場合、たとえば「陶器に夢中になる」という例文なら「be into pottery」というように「pottery(ポタリー)を使います。

また「磁器」は「china(チャイナ)」や「porcelain(ポーセリン)」が一般的です。

英語圏では「陶磁器」として”ceramics”で一括り

英語圏では日本のように「陶器」と「磁器」を区別する習慣や文化がないという国が多いと言えます。そのため、「陶磁器」としてひとまとめで「ceramics(セラミックス)」と称する場合がほとんどでしょう。

たとえば、「日本製の陶磁器は素晴らしい」と表現するなら「Japanese ceramics are fantastic」となります。

まとめ

「陶器」と「磁器」の違いは「原材料、焼く時の温度、焼成方法」などです。仕上がりや見分けについては、「陶器」は暖かくぬくもりがあり、「磁器」は繊細で薄くガラスのような光沢があるのが特徴でしょう。

「陶器」や「磁器」は、それぞれ風合いが異なりますが、用途や目的、また自分自身の好みによって選ぶことができるのも楽しみの一つとも言えるかもしれません。

また、万が一「陶器」や「磁器」が割れてしまった場合は、陶器よりも磁器の方が割れ口が鋭くなります。ケガをしないよう気にを付けましょう。