// 「良妻賢母」の意味や使い方の例文は?類語や対義語なども解説 | TRANS.Biz

「良妻賢母」の意味や使い方の例文は?類語や対義語なども解説

「良妻賢母」とは、古くから理想とされている女性像を表した四字熟語です。昔は女子校の理念の1つとしても掲げられていました。男性も家事・育児をする時代となった今では、あまり耳にしないかもしれません。今回はこの「良妻賢母」の意味や語源、使い方の例文や類語などを解説していきます。似た表現の「賢妻良母」や英語表現も紹介します。

「良妻賢母」とは?

「良妻賢母」の意味は”よき妻であり賢い母であること”

「良妻賢母」の意味は、“夫に対して良い妻、そして子に対しては賢い母であること”です。“女性の任務は家を整え、子供を産み、その子供を育てることにある”という思想に基づいた婦人の理想像を表しています。基本的に良い意味として使われます。

語源は学術総合雑誌「明六雑誌」にあり

「良妻賢母」の語源は、明治時代初期に創刊された学術総合雑誌「明六雑誌(めいろくざっし)」の中で主張された中村正直氏の記事にあると言われています。

その記事には、「文明開化を成し遂げるには女性に家庭を支えるための家事や裁縫、また心や行いが正しく温厚になるための教育が必要だ」といった考えが書かれています。これが「良妻賢母思想」の始まりであり、使われはじめた語源とされています。

【中村正直(なかむらまさなお)

幕末から明治初期にかける啓蒙思想家、文学者、教育家、東京大学教授とさまざまな顔を持っていた歴史的人物

「良妻賢母」の背景に”男尊女卑”の思想あり

「良妻賢母」は、明治初期から使われはじめた言葉とされています。その頃の日本は封建制社会のイデオロギー「男尊女卑」の思想より、“女性に知的教養は不要”と社会活動を制限されていました。

明治維新以後には「男女同権思想」が出てきたものの定着することはなく、「良妻賢母」は第2次世界大戦が終わるまで日本の女子教育の基本理念として使われ続けました。その間女性は、男性よりも低いとされていた歌舞などの芸能を中心に教育を受けていたと言われています。

この背景からわかるように、「良妻賢母」という言葉はもともと男女差別を感じさせるネガティブな意味合いがあったと言えます。

  • 「封建制(ほうけんせい)」…自分が仕えている主人などから土地をもらい守ってもらう代わりに、その家来は戦地に行くなどの義務を負うといった主従関係をつくる制度
  • 「イデオロギー」…信念や理念、思想や考えをまとめたもの
  • 「歌舞(うたまい)」…歌と舞

中国では「賢妻良母」

「良妻賢母」と似たような表現に「賢妻良母(けんさいりょうぼ)」という言葉があります。この言葉は日本ではなく、中国で使われている言葉です。一見すると同義語にも見えますが、2つの意味は少し異なります。

「賢妻良母」の意味は、「夫に対して賢い妻であり、子に対しては優しく慈しみある母であること」です。中国では、夫に対しアドバイスできるような女性が理想とされているようです。

良妻賢母と賢妻良母の意味の違い
  • 「良妻賢母」・・・夫に対して良い妻、そして子に対しては賢い母であること
  • 「賢妻良母」・・・夫に対して賢い妻であり、子に対しては優しく慈しみある母であること

「良妻賢母」の使い方と例文とは?

「良妻賢母」は褒め言葉として使う

「良妻賢母」には時代的な背景はあるものの、現代では基本的に“家庭的な女性”といった褒め言葉として使います。ただ近年では女性も社会に出て働いていることから、人によって昔の男尊女卑のようなネガティブな意味合いで使う人・捉える人もいます。誤解が生まれないよう、使う場面や相手は選びましょう。

「良妻賢母」を使った例文

「良妻賢母」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。

  • 「良妻賢母だった憧れの母に近くため、花嫁修行をしている」
  • 「手相占いに行ったら、良妻賢母線があると言われた」
  • 「いつから良妻賢母の思想が教育に反映されたか調べている」
  • 「彼女は良妻賢母でありながら、フリーライターとしても活躍している」
  • 「良妻賢母の妻のおかげで、私は安心して働きに出ることができる」
  • 「女性の社会的な進出が当たり前となった今、良妻賢母という言葉は聞かなくなった」

「良妻賢母」の類語と対義語とは?

「良妻賢母」の類語は”賢夫人”や”慈母”

「良妻賢母」の類語には、「賢夫人」と「慈母」を紹介します。

「賢夫人(けんぷじん)」

意味は「しっかりとした賢い夫人のこと」です。出世した夫を陰ながら支えた功績のある夫人を表しています。「良妻賢母」の“良妻”にあたる部分が似ている言葉です。「賢夫人」には、“子に賢く”という意味はありません。

「慈母(じぼ)」

意味は「いつくしみ深い母親」です。母親に対し、尊敬と愛情の意味合いが込められています。“子に対して賢い母”という意味はありませんが、「良い母である」という意味では似た意味を持っています。「慈母」には夫に対する意味は含まれていません。

「良妻賢母」の対義語は”愛妻家”や”毒親”

「良妻賢母」の対義語には、「愛妻家」と「毒親」を紹介します。

「愛妻家(あいさいか)」

意味は「妻を人並み以上に大事にする夫」です。「良妻賢母」の“妻が夫を支えている”というニュアンスの逆を表していることから対義語と言えます。

「毒親(どくおや)」

意味は「子に対して悪い影響のある親」です。この言葉は比較的新しい言葉で、近年目立ってきた児童虐待や過干渉・束縛・依存など子供の成長を妨げる親を表して使われるようになりました。「良妻賢母」にある“子に対して賢い”という意味とは真逆の意味を表しています。

「良妻賢母」の英語表現とは?

「良妻賢母」の英語表現は”a good wife and wise mother”

「良妻賢母」を英語にする場合、“良い妻”を表す「good wife」と“賢い母”を表す「wise mother」を組み合わせた“a good wife and wise mother”と表現します。簡単な単語ばかりなので覚えやすいでしょう。

「a dutiful wife and sensible mother」でも表現できる

「良妻賢母」は、“従順な妻”を表す「dutiful wife」と“賢明な母”を表す「sensible mother」を組み合わせた「a dutiful wife and sensible mother」でも表現できます。こちらの表現の方が形式ばっています。

まとめ

「良妻賢母」は、「夫に対しては良い妻、子供に対しては賢い母であること」を表現した四字熟語です。基本的に現代では褒め言葉として使いますが、時代背景より“男尊女卑”のイメージを持っている方もいるので使う場面には注意が必要と言えます。

女性も社会に出るようになったことで使用頻度は減りましたが、それでもまだ日常会話にはよく登場するので覚えておきましょう。