「変形労働時間制」の正しい運用とは?残業や有給はどうなる?

勤務時間を柔軟に調整できる「変形労働時間制」。便利な制度ですが、意外と守るべきことや手続きが多いというデメリットもあります。今回は、変形労働時間制の正しい運用方法を紹介しています。悪用されている場合もありますので、法律を守って正しく運用できるように確認しましょう。



変形労働時間制とは?

変形労働時間制とは労働時間を月や年で決めること

変形労働時間制とは、働く時間を月や年などで決める制度です。残業代の計算なども通常と異なります。

通常は、「1日の勤務時間は8時間」など、毎日同じ時間働くように決まっています。1日8時間、週に40時間という「法定労働時間」を超える場合は残業代の支払いが必要になります。

しかし、変形労働時間制は、例えば「1ヶ月160時間」などのように全体の時間と、毎日の勤務時間などを決めます。その範囲内であれば、1日10時間などの8時間を超えて働いた場合でも残業代を支払う必要がなくなる制度です。

変形労働時間制には4つある

変形労働時間制には、以下の4つの種類があります。

1ヶ月単位の変形労働時間制

1ヶ月の労働時間を決めて運用する制度です。

1年単位の変形労働時間制

1年以内で労働時間を決めて運用する制度です。最高1年で、3ヶ月や6ヶ月なども可能です。1ヶ月単位とは異なり、1日10時間以内、週52時間以内の労働時間の上限があります。

フレックスタイム制度

出勤時間や退社時間を個人が自由に決められるのがフレックスタイム制度です。フレックスタイム制度は、3ヶ月以内で労働時間を決め、その時間になるように本人が調節しながら勤務します。

他の変形労働時間制では、事前に勤務時間をシフト表などで配る必要がありますが、フレックスタイム制度では、必要ありません。会社によっては、必ず出社しなければならない「コアタイム」と、本人が自由に選択できる「フレキシブルタイム」を決めていることもあります。

1週間単位の変形労働時間制

従業員が30人未満の小売業、旅館、料理店、飲食店のみで、使うことができます。1週間の上限は40時間以内で、1日10時間までと決められています。

「変形労働時間制」の所定労働時間や残業、休日は?

変形労働時間制で定められる所定労働時間

変形労働時間制では、1ヶ月や1年など、長期間の労働時間を決めなければなりません。ここで守らなければならないのが「所定労働時間」です。

「所定労働時間」とは、就業規則などで定めた1日の労働時間です。例えば、「1日の勤務時間は7時間」と就業規則で記載した場合は、所定労働時間は7時間になります。法律では、1日8時間という「法定労働時間」が決まっており、混同しやすいので注意しましょう。

変形労働時間制では、平均を出したときに「所定労働時間」を超えないようにする必要があります。例えば所定労働時間が7時間、1ヶ月20日あり、1ヶ月単位の変形労働時間制を行う時には、1ヶ月の労働時間は「7時間×20日=140時間」にしなければなりません。

変形労働時間制でも残業代の支給は必要

変形労働時間制でも、一定の時間を超えた場合には残業代の支給が必要です。1ヶ月単位、1年単位、1週間単位の変形労働時間制を利用する場合は、事前にシフト表などで勤務時間を決めておく必要があります。事前に決めた時間を超えると、残業代の支給が必要になります。

例えば1ヶ月のうち1週目は1日10時間、3週目は1日6時間などと決まっている場合、1週目は10時間を超えた分の残業代が必要で、3週目は6時間を超えた分の残業代が必要です。

変形労働時間制でも休日は必要

変形労働時間制で1ヶ月や1年など、事前に決めた期間全体の労働時間を守っていても、休日がないシフトを作ってはいけません。例えば、月150時間と決めている場合、5時間勤務を30日間行い、休みがないのは違法です。

事前に休日を決めた上で、休日に出勤した場合は、休日出勤として割増賃金の支払いが必要になります。法律では、法定休日として週に1日の休日を与えることが決められています。

週に1日の休日とは、例えば、月曜日から日曜日の1週間で、1週目は月曜日に休日を取り、2週目は日曜日に休日をとった場合も週に1日の休日を与えたことになります。つまり、最高で12日の連続出勤が可能です。

ただし、1年単位の変形労働時間制を利用している場合には、「対象期間」と「特定期間」を定める必要があり、対象期間内の連続勤務日数は6日までとなっています。「対象期間」とは6ヶ月や1年など、変形労働時間制を利用する期間のことをいい、特定期間とは、その中でも特に忙しい時期として設定した期間です。

「変形労働時間制」のメリットとデメリット

変形労働時間制のメリットは残業代の節約

変形労働時間制のメリットは、労働時間を調整し、残業代が節約できることです。例えば、月初が閑散期で1日6時間分しか仕事がないが、月末が繁忙期で1日10時間分の仕事がある場合、通常であれば、月初に8時間勤務をした上で、月末に8時間を超えた分の残業代を支払うことになります。

しかし、変形労働時間制を使えば、月初は6時間勤務で帰り、その分月末に残業代をかけずに10時間勤務をすることが可能になります。

変形労働時間制は、閑散期と繁忙期が決まっている会社におすすめの制度です。

変形労働時間制のデメリットは手続きや時間管理

変形労働時間制のデメリットは、手続きや時間の管理が煩雑になることです。事前にシフト表などで勤務時間を決めなければなりませんし、就業規則や労使協定の届出も場合によって必要です。時間の管理をしていく上で、残業時間の把握や、長時間労働による体調管理など、気を付けるべきポイントも増えます。

「変形労働時間制」は労働基準監督署に届出が必要?

就業規則や労使協定などの届出が必要

変形労働時間制を取り入れる場合には、変形労働時間制の種類によって以下のような届出が必要です。

  • 1ヶ月単位の変形労働時間制…労使協定・就業規則のいずれか
  • 1年単位の変形労働時間制…労使協定
  • フレックスタイム制度…労使協定と就業規則の両方
  • 1週間単位の変形労働時間制…労使協定

「変形労働時間制」とシフト制の違いは?

変形労働時間制は残業時間や残業代が違う

1ヶ月、1年、1週間単位の変形労働時間制は、事前にシフト表などで勤務時間を決めておかなければなりません。「シフト制」と同じように思われるかもしれませんが、残業時間の考え方が異なります。

変形労働時間制の場合は、事前に届出をし、シフト表などで勤務時間を決めておくことで、1日8時間以上勤務しても残業代の支払いが不要です。これに対してシフト制では、そもそも法定労働時間を超える1日10時間などのシフトを設定ができません。1日の上限は8時間であり、それを超える場合は残業代の支給が必要です。

まとめ

変形労働時間制には4つの種類があり、どれも1ヶ月や1年など一定の期間の中で労働時間を設定し、1日の勤務時間を調節できる制度です。一定の期間内で労働時間の上限を超えていなければ、1日8時間を超えても残業代の支給が必要なくなるため、繁忙期と閑散期がある会社には便利な制度です。正しい運用のポイントは、事前に設定した勤務時間を超えた場合には残業代の支給が必要なことと、週に1日の休日は確保すること、事前に労働基準監督署に届出をすることです。変形労働時間制の正しい運用ができるようにチェックしましょう。

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kingyo120

国立大学法学部卒。事務職、コールセンターでの勤務経験あり。現在は2児の育児をしながらフリーランスとして活動しています。趣味は料理と裁縫。健康のためにウォーキングに挑戦中です。