「リーダーシップ」の意味と定義とは?種類や具体例・本も紹介

「リーダーシップ」は常に古くて新しい議論のテーマです。リーダーシップの意味や定義は、時代とともに変遷してきました。そのため、さまざまなリーダーシップ論が乱立しているともいえます。そもそもリーダーシップとは何なのでしょうか?

この記事では、リーダーシップとは何かについてと、リーダーシップ論の種類と具体例を、研究の推移をたどりながら解説します。

「リーダーシップ」とは何か?

リーダーシップの意味は「統率力」「指導力」

「リーダーシップ」の意味は、統率力・指導力です。

しかしリーダーシップとは何か、と考えるとき、「統率力」「指導力」という言葉だけでは真の意味を理解することはできません。リーダーシップの定義とは何かについて次に紹介しましょう。

リーダーシップの語源は英語のleadreship

リーダーシップとは、英語「leadership」を語源とするカタカナ語です。「leader」は「指導者」という意味で、「ship」は接尾につけて身分や姿勢などを表す言葉です。

リーダーシップの定義は「目標に向かって他者に影響を与えること」

リーダーシップとは何かについては、古来からさまざまな研究や議論がされてきましたが、普遍的なリーダーシップは存在しない、という結論が近年主流となっています。

  • 現代のリーダーシップ

現代では、リーダーシップの包括的な定義とは「目標に向かって他者に影響を与えること」だと言えます。

現在のリーダーシップ論に共通する基本的な概念をまとめると、リーダーシップには「なんらかの成果を得る」という目標があるということと、「影響を与える他者がいる」ということが挙げられます。現代のリーダーシップは、参加する人全員が対象となっており、リーダーシップは特別なものではなく、誰もが身につけることができるものだとして、その定義や種類などがさまざまに研究されています。

  • 過去のリーダーシップ

過去の時代には、特別な存在である一握りのカリスマ的リーダーや、権力者からの上意下達をリーダーシップと呼びました。しかし、今日の社会は複雑にグローバル化し、激しい変化に対応が求められる時代となり、一握りの権力を持つ人のリーダーシップで社会が動いていた時代は終りました。

「リーダーシップ論」の推移とは?種類や具体例とともに解説

リーダーシップ論の推移を俯瞰すると、リーダーシップとは何か、そして長い間論じられ続けた理由やリーダーシップを理解するために必要な視点が理解できます。

古い「リーダーシップ」は「権限を持つ人」の命令だった

リーダーシップについては古くはプラトンの『国家論』でも論じられ、マキャベリは『君主論』において優れたリーダーについて分析しました。

近代民主主義が成立する前には、リーダーは「権限を持つ人」のことを指していました。人類の長い歴史の中でのリーダーシップとは、権限を持つ人の命令でした。国王や貴族などの間で伝承されてきた「帝王学」とは、強大な権限のもとでの効果的な命令の出し方であるとも言えます。

近年はますます変化のスピードが早く、多様性が求められる時代となったことから、権限に頼らないリーダーシップ、つまり参加者全員にリーダーシップが求められる時代となったのです。

1920年代に始まった本格的な研究「リーダーシップ特性理論」

初期のリーダーシップの研究は1920年代にアメリカを中心に行われた「特性理論」です。有能なリーダーに共通する性格や身体的特徴などの特性を研究するもので、その根本にはリーダーシップとは生まれ持った特性によるものであるという思想がありました。

しかし、有能なリーダーに共通する普遍的な特性は、何人もの研究者が研究したもののみつからなかったため、特性理論は人気を失いました。

1940年代は「リーダーシップ行動論」が発展

行動理論とは、リーダーとは生まれ持った特質であるという特性理論とは反対に、リーダーとは作りあげるものであるとの前提に立つ理論です。リーダーシップを発揮している人とそうでない人の行動を分析して行動様式を定義しました。

代表的なものに「PM理論」があります。集団機能は、目標達成能力(Performance function)と集団維持能力(Maintenance function)により成り立つとして、リーダーシップ行動の類型化を試みました。P・Mの能力がともに大きい者は目標を達成する力、および集団を維持しまとめる力があり、リーダーの理想像とされました。

1960年代は「リーダーシップ条件適合論」が発展

条件適合理論では、特性論や行動論のように、望ましいリーダー像を分離するのではなく、普遍的なリーダーシップは存在しないという前提に立ち、リーダーシップの特性を明らかにしようとしました。

具体的には、リーダーシップを発揮する優秀なリーダーは、環境の条件によってリーダーシップスタイルを変化させるという考え方で、リーダーシップの多様性が認められました。

代表的な理論に「パス・ゴール理論」があります。リーダーシップとは、メンバーが目標(ゴール)を達成するために、どのような道筋(パス)を通れば良いのかを示すことだという考え方に基づくものです。

1980年代から現代は「コンセプト理論」が主流

東西冷戦が終結し、インターネットが発達して新しい時代に入った1980年代頃からは、アメリカを中心として、リーダーシップの種類は広がりを見せ、経営学の研究者などによってさまざまに定義されています。

現在主流である理論は「コンセプト理論」です。条件適合論における流動的なリーダーシップの必要性を継承し、さまざまな状況や環境に対応できるリーダーシップが議論されています。

代表的な理論のひとつに「EQ型リーダーシップ」があります。社会で成功するために大切なのはIQよりもEQであると主張したベストセラー『EQ こころの知能指数』を著したダニエル・コールマンが提唱しました。

EQ型リーダーシップは、優れたリーダーシップにはEQ(感じる知性)が必要だとする考え方で、感情の共鳴の重要さに着目した理論です。

リーダーシップに関するおすすめの本

日本社会では、リーダーシップとは権限、あるいは命令であるとの誤解が未だにぬぐいきれない側面があるともいえます。リーダーシップとは何かの根本を理解するためには次の本がおすすめです。

まとめ

リーダーシップは古くから関心を集めており、20世紀初頭からアメリカを中心に研究が行われてきました。初期の特性理論では、リーダーシップは生まれつき備わった性質であるとして研究されましたが、リーダーシップの普遍性をみつけることはできませんでした。時代とともに、リーダーを取り巻く環境や行動が研究の対象とされるようになり、現在はさまざまなアプローチから、状況に応じたリーダーシップ論が研究されています。

めまぐるしく状況が変化する現代において、ビジネスを成功させるためには、素早く対応できるリーダーシップが欠かせません。完全無欠のリーダー論を卒業し、誰もがリーダーとなってリーダーシップを発揮することが求められているといえます。