「死生観」の意味とは?レポート課題になる理由や宗教別の考え方も

誰にでも訪れる死についてどのように考えるのかを表す「死生観」という言葉は、死だけでなく生についても考えるようになり、どのように今を生きるのかを考えさせられます。今回は「死生観」の意味と医療現場で取り扱われる死生観について、また「神道」「仏教」「キリスト教」別の死生観に加えて英語表現も解説します。

「死生観」とは?

「死生観」の意味は”生と死の考え方”

「死生観」の意味は、“生と死に関する考え方”のことです。生をどのようにとらえ、死をどのような基準で判断するのかという点が重視されることもあるのですが、主に死を中心にして、死をどのように捉え、または死後はどうなるのかといったことがテーマになる場合もあります。

死生観は、文化的または宗教的な影響を受けることも多く、またその人の経験などから死生観が考えられて、人それぞれが異なる死生観を持つこともあります。

由来は加藤咄堂の著書『死生観』

死生観という言葉の由来は、加藤咄堂の著書『死生観』(1904)だとされています。死生観の研究に関しては、民俗学者の柳田国男が先駆者とされていて、1913年に雑誌『郷土研究』を創刊し、死生観に関するフィールドワークを通した研究が行われました。

死生観が問われる延命治療や臓器移植

延命治療や臓器移植について語られるとき、死生観が問われます。

延命治療とは患者の病気の治療をするのではなく、回復の見込みのない患者の生命維持のために施される医療行為のことです。また、臓器移植は日本では法的に認められているものの実証例が多くありません。

延命治療の是非、また臓器移植に必要性が問われるとき死生観が注目され、死生観が単なる生活の一環という観点ではなく、科学的な知見や文化との関係から死生観が浮き彫りになります。人の生や死をどのように捉えるべきなのか、あらゆる視点で見直される機会となります。

死生観を問うことが一般化

自分の死に備える終活、遺言やエンディングノートの作成などが世代を超えて興味が示されています。また学術分野では、死生観を主軸とした学問「生命倫理」や「死生学」、「death and life study」や「thanatology」に発展し、一般向けに死生観を学ぶ機会が増えてきています。

「死生観」をなぜ看護学生が学ぶのか?

「死生観」がレポートの課題になる理由

看護学校で終末期看護や緩和ケア(ホスピス)について学ぶときに、死生観は大切なテーマのひとつです。看護学生は自分の価値観や死生観を問い直し、レポートの課題として出題されることは多いです。

死を目前にした重病患者や、病気から回復し社会復帰を目指してリハビリテーションに励む患者などに接することになる看護学生にとって、死生観を養うことが一つの課題となるからです。

患者の死生観に寄り添う医療が求められる

80年代ごろまでの医療の現場では、医師と家族の判断により延命措置を施すのかどうかを判断していたことがありました。病名すら本人に告げないということもありました。

しかし現在ではインフォームドコンセントが定着化し、患者に病名を告げ患者の死生観により延命治療を施すのか、それとも延命治療をしない自然死を選ぶのかを判断するという傾向があります。

宗教別の「死生観」とは?

神道では人は死後、神になる

神道では、人は神から魂をいただいている分霊なので、死後は霊界に戻り神に戻ると考えられています。

生きている間は、神の加護を受けて幸せに暮らすことができるので、人は正直な心が持てるように禊(みそぎ)や御祓いを行い、欲望に負けることなくいい人生を追求するように心がけます。

仏教では現世の生き方で死後が決まる

仏教では、死後の世界は生きている間の行いによって決まると言われています。

釈迦の教えによれば、死後の世界があるのなら、生前、良い行いをすれば死後の世界で報われ、死後の世界がなかったとしても立派に生きた人は立派だと認められます。もしも悪いことをしていた人は苦しみの世界、地獄に堕ちます。

また無神論者には、大事なこととは生きている間の行いだと説きました。

キリスト教では神を信じる者は天国へ行く

キリスト教では、死後は天国か地獄に行くと信じられています。神のいる天国に行けば、悲しみも苦しみもない世界が待っていて、天国に行けるのは神を信じるものだけです。地獄には神を信じない者が行くとされています。

天国に行ける者は神を信じて生活している者で、キリストのように神の教えを守り人々に仕え、人々のために生きることが大切だと説いています。

「死生観」の使い方と例文とは?

「死生観を持つ」とは”死と生の明確な考え方がある”こと

死と生についての考え方があることを、「死生観を持つ」と表現します。

死生観を持つことにはメリットがあると考えられ、死の前の最後の時間をどのように過ごしたいのかがはっきりするので、死に対する恐怖心や不安が減ります。また当人の周りにいる家族なども対応しやすくなり、医療関係者に何を求めるのかが明確になります。

「死生観」を使った例文

「死生観」を使った例文をご紹介しましょう。

  • 「死生観を持つことで、死への不安が少なくなった」
  • 「エンディングノートを書き始めた父は、明確な死生観を持っている」

「死生観」の英語表現とは?

「死生観」は英語で”view of life and death”

英語で「死生観」は「生と死の視点」という意味の“view of life of death”と表現されます。死生観は死が先行するのに対して、英語では死よりも生の意味である「life」が先に表されます。

例文
  • “He has a view of life and death.”
    「彼は死生観を持っている」
  • “The style of funeral ceremony depends of the view of life and death.”
    「葬儀の仕方は死生観に関わっている」

まとめ

「死生観」は死と性についての考え方のことですが、死についてだけ語られることもあります。死生観を持つことで、死と向き合い、死への不安を軽減できるというメリットがあり、死に直面した当人だけでなく周囲の人も死から受ける恐怖感や戸惑いを減らすことができます。

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「難解なワードでもわかりやすく」をモットーに、常識ワードからビジネス用語、時には文化・アート系など、幅広く記事を書かせていただいています。ドイツ在住で2児の母。好きな食べ物はビターチョコレートとナッツ類。