「万夫不当」の意味や由来とは?「一騎当千」などの類語も解説

「万夫不当」は、“向かうところ敵なし”のような非常に強い相手などに使う四字熟語です。三国志の中では、並外れた強さを持つ武将を表現するために用いられています。今回はそんな有名な歴史書にも使われている「万夫不当」の意味や由来、また使い方の例文や「一騎当千」などの類語を解説していきます。最後に英語表現も紹介します。

「万夫不当」とは?

「万夫不当」の意味は”強くて勇ましいこと”

「万夫不当」の意味は、“多くの男が一緒になって立ち向かってもかなわないほど強く、そして勇ましいこと”です。「万夫不当」を構成するそれぞれの言葉の意味を見ると、よりこの四字熟語を理解できます。

「万夫不当」を構成する言葉の意味

  • 万夫(ばんぷ)
    →たくさんの男たち、多くの武士、無数の人
  • 不当(ふとう)
    →当たらないこと、相手にならないこと

※『不』には“打消し”の、『当』には“当たる”や“敵対する”という意味がある

「万夫無当」と表記されることもある

「万夫不当」は、「万夫無当(ばんぶぶどう)」と表記されることもあります。『無(ぶ)』には『不(ふ)』と同じく打消しの意味があることがその理由です。しかし「万夫無当」と表記されることは稀で、ほとんどが「万夫不当」の表記で使われています。

「万夫不当」の由来は中国の詩人による詩

「万夫不当」の由来は、中国の唐の時代の詩人「李白」の詩にあると言われています。李白は自身の詩『蜀道難(しょくどうなん)』で以下のような一文を残しています。

「蜀道難」の一文

  • 「一夫當關万夫莫開(一夫関に当たれば万夫も開くなし)」
    →1人の兵士が関所を守れば、無数の兵士が攻めてきたとしても突破できない

この一文は、“蜀”という場所の関所が守りに有利であったことを表現したもので、“どんなに人が来たところで険しい地形にできた関所を突破することはできない”ということを意味しています。「万夫不当」は、この“いくら働きかけようとも思い通りにならない関所の様子”がもとになり誕生した四字熟語とされています。

「万夫不当」の使い方と例文とは?

「万夫不当」は人以外にも使える

基本的に「万夫不当」は強く勇ましいとされている人に対して使います。しかし要害堅固な関所の様子を表現した由来から、人以外の物事に対し、比喩的に「万夫不当」を用いる時もあります。

  • 要害堅固(ようがいけんご)
    →丈夫なため攻撃されても簡単に破られない、地勢が険しく攻めにくい

「万夫不当」はビジネスシーンでも使える

「万夫不当」はビジネス用語ではありませんが、ビジネスシーンの中で並外れた才能や能力のある人、また多大な実績を上げた人などに対して使われることがあります。何をどうしても超えられないような人の様子を、強く勇ましいと比喩的に表現しています。

「万夫不当」はネガティブな使い方もある

「万夫不当」は、誰も太刀打ちできない圧倒的な強さや才能を持つ人に対しての褒め言葉として使われる以外に、孤高なイメージとネガティな意味合いで使われることもあります。

  • 孤高(ここう)
    →孤立しつつ1人で自分の志を守ること、またはその様子

「万夫不当」を使った例文

「万夫不当」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。

  • 「あの万夫不当のセキュリティを突破しようなんて無謀な考えだ」
  • 「僕は万夫不当の武士のような男になってみせる」
  • 「彼こそが万夫不当の豪傑と呼ばれた伝説の男だ」
  • 「万夫不当と言えども、実の母に強く出ることはできなかった」
  • 「今から優勝を狙うには、あの万夫不当と言われている主将を倒すしかない」
  • 「彼は誰よりも優しいのに、あの体格ゆえに万夫不当と恐れられている」

「万夫不当」の類語とは?

類語①「一騎当千」の意味は”多くの人を相手にできること”

「一騎当千(いっきとうせん)」の意味は「人並み外れた経験や能力の例え」、「群を抜いた勇者の例え」です。「万夫不当」のように、多くの人が立ち向かってもかなわないというニュアンスがあります。

類語②「一人当千」の意味は”千人の力にも匹敵する力・実力”

「一人当千(いちにんとうせん)」の意味は「非常に大きな力・実力があること」です。一人の力が千人の力に匹敵するというニュアンスが、「万夫不当」のどんな人数でも太刀打ちできない様子と似ています。

類語③「国士無双」の意味は”並ぶ人がいないほど優れた人物”

「国士無双(こくしむそう)」の意味は「国の中で並ぶ相手がいないほど優れた人物」です。「万夫不当」の圧倒的な何かを持っているニュアンスが似ています。「国士無双」の場合、対象がその国の中の人物と限定されています。

類語④「蓋世不抜」の意味は”比較対象がないほど優れていること”

「蓋世不抜(がいせいふばつ)」の意味は「才能や性格などが他の人と比較できないほど優れていること」です。「蓋世不抜」も圧倒的な何かを持っているというニュアンスが、「万夫不当」と似ています。

「万夫不当」の英語表現とは?

「万夫不当」の英語表現は”invincible”

「万夫不当」を英語にする場合、“無敵の”という意味を持つ形容詞「invincible」を使うことで日本語の意味に近い表現ができます。

  • 「invincible」・・・【形】無敵の、征服できない、頑強な

例文

「He is an invincible person.」
→彼は無敵だ(彼は万夫不当だ)

「unstoppable」でも表現できる

「万夫不当」は、“止められない”という意味を持つ形容詞「unstoppable」でも似た意味を表現できます。

  • 「unstoppable」・・・【形】止められない、防止できない

例文
「He is unstoppable.」
→彼は誰にも止められない(彼は万夫不当だ)

まとめ

「万夫不当」は、“向かうところ敵なし”のような圧倒的な強さを持つ人や物事を表す四字熟語です。同じような強さを表す類語はたくさんあるので、表現や理解の幅を広げるためにもあわせて覚えておくことをおすすめします。

「万夫不当」はビジネス用語ではありませんが、“優れた人”などの意味合いで並外れた才能や能力のある人、また多大な実績を上げた人などに対して使われることがあります。使い方次第で相手を不快にする場合もあるので気をつけましょう。