役目や役割を引き受けるという意味の「務める」ですが、同音異義語の「勤める」や「努める」とはどのように違うのでしょうか。今回は「務める」「勤める」「努める」のそれぞれの意味と使い分け方のほかに、「務める」の言い換え表現や尊敬表現、「務」を使った熟語と併せて「務める」の英語表現も解説します。
「務める」とは?
「務める」の意味は”ある役割を引き受けて行うこと”
「務める」の意味は、“ある役割や役目、任務を引き受けて、それを行うこと”です。
「務める」は「役目にあたる」という意味から、与えられた役目を負うときに使われます。また、演劇などで配役を演じることを表現するときにも、「務める」が使われます。
- 「案内役を務める」
- 「主役を務める」
- 「司会を務める」
- 「グループリーダーを務める」
「務める」は英語で”serve”
「務める」は英語で“serve”と表現します。「働く」という意味もある「serve」は、職務や任期を務める場合に用いられる言葉です。
- “He serves as a guide.”
「彼は案内役を務める」 - “She served as a team leader of the project.”
「彼女はプロジェクトのチームリーダーを務めた」
「務める」と「勤める/努める」との違いと使い分け方とは?
「務める」の同音異義語に「勤める」や「努める」がありますが、どの語も語源は同じで、「努力する」という言葉から派生しています。
「務める」「勤める」「努める」はそれぞれ意味が違うため、文脈に応じて使い分けましょう。
「勤める」の意味は”勤務する”
「勤める」は、「勤務する」と同じく「雇われて働く」という意味の言葉です。また仏道に励むという意味もあります。
「勤める」は「雇われて働くこと」を意味することから、職場で仕事を従事するときに使われます。
- パン屋に勤める
- 教師として学校に勤めている。
また法事など仏事を営む場合にも「勤める」が使われます。
- 「法事を勤める」
- 「お勤めを終えたお坊さん」
「努める」の意味は”努力する”
「努める」は、努力することで、「力を尽くして行う」という意味です。同義で「勉める(つとめる)」と表記することもできますが、「勉める」は常用外のため主に「努める」が使われます。
「努める」は「努力する」という意味から、物事を成し遂げるために頑張る、力を尽くすといった状況で使われます。
- 「問題の解決に努める」
- 「今は辛抱して療養に努めるときだ」
「務める」と「勤める」の使い分けには注意
「務める」と「勤める」の使い分けは、役割と仕事の境界を引きにくいケースがあるため難しい場合があります。
例えば「司会」ならば、司会という役割をこなす場合は「務める」ですが、司会を司会業ととらえれば仕事となり「勤める」でもいいように思えます。しかし通勤しているわけではないので「務める」を使うほうが自然です。
「務める」と「勤める」の使い分けの目安としては、通勤しているかいないかを基準にするのがいいでしょう。
「務める」の類語・言い換え表現とは?
言い換え表現は「引き受ける」や「遂行する」
「務める」の言い換え表現としては、「引き受ける」や「遂行する」などがあります。
「引き受ける」とは、「ある役目や仕事を責任を持って受け持つ」という意味です。
- 「幹事を引き受ける」
- 「会計係を引き受ける」
「遂行する」は、「任務や仕事をやり遂げる」という意味です。
「全うする(まっとうする)」は、「完全に終わらせる」という意味で、役目引き受けてそれを最後まで成し遂げるという場合にも使われます。
「請け負う」も務めるの言い換え表現
「請け負う」は「仕事上の契約によって仕事を受ける」、または「義務を引き受ける」という意味の言葉です。引き受けた以上、最後まで成し遂げるだけの責任も負うような状況で使われます。
- 「プロジェクトを請け負う」
- 「借金返済を請け負う」
「務める」の敬語表現とは?
尊敬表現は「お務めになる」
「務める」の尊敬表現は、尊敬を表す「お~になる」という形式を用いて「お務めになる」、さらなる敬意を表す場合には「お務めになられる」と表現します。
- 「○○さんは事務局長をお務めになっています」
- 「お務めになられています」
謙譲表現は「努めております」
「務める」の謙譲表現は、「務める」に「いる」の謙譲表現「おる」に丁寧助動詞の「いる」を語尾につけて「務めております」と表現します。
相手に許可を求めている場合には「務めてさせていただく」という表現も使えます。
- 「○○商事で経営部長を務めております」
- 「本日、司会を務めさせていただきます○○と申します」
「務」の漢字の入った熟語とは?
四字熟語なら「開物成務」
「開物成務(かいぶつせいむ)」とは、「人の知恵を開発して、人が成し遂げようとしている事業を完成すること」という意味の四字熟語です。この四字熟語を略した「開成」という言葉もよく使われます。
「開物成務」の出典は、中国の古典の五経のひとつである「易経」です。
熟語は「義務」「業務」「労務」など
「務」を使った熟語は「会務」や「医務室」などたくさんありますが、ここでは主にビジネスで使われる熟語を例にとり解説します。
「義務」とは「立場に応じてしなくてはならないこと」です。倫理的には道徳上行うべき櫃減のことであり、法的には人に課せられる拘束を意味します。
「業務」とは、「職業において継続して行う仕事」のことです。一回で終わってしまうような仕事は業務とは言わず、日常的に継続して行われる仕事のことを指します。
「労務」とは、単なる仕事という意味ではなく、「報酬を受け取る目的で行われる勤務」のことです。企業では労働力の管理面に関する事務のことを指す場合もあります。
まとめ
「務める」とは「役割や役目を引き受けて行う」という意味の言葉です。同音異義語として「勤める」や「努める」があり、それぞれ「勤務する」や「尽力を尽くす」のように意味が違うので、文脈から使い分けられます。