「比翼」とは?アパレル業界での意味や種類・英語表現も紹介

「比翼」は二羽の鳥が仲良く羽を広げ、翼を並べて飛ぶことを表す時に使われますが、洋服全般を扱うアパレル業界ではシャツやブラウス、コートやジャンパーなどにおいて「比翼」の意味が異なります。

ここでは「比翼」の基本的な意味をはじめ、アパレル業界での意味や「比翼」の種類、使い方と例文、英語表記を紹介しています。ファッション関係に就職を希望する人や仕事でやりとりのある人は「比翼」の意味を、ぜひマスターしておきましょう。

「比翼」の意味とは?

「比翼」の意味は”二羽の鳥が翼を並べること”

「比翼」の意味は“二羽の鳥が翼を並べること”です。「比」には「比べる(くらべる)」という意味のほかに「同類の仲間」「並ぶ」、また「翼」には「鳥の翼」「虫の羽」などの意味がありますが、「比翼」とは、まさに言葉が示す意味合いそのものだと言えるでしょう。「比翼」とは「二羽の鳥が仲良く飛ぶこと」を表す言葉です。

「比翼」はアパレル業界では”ボタン隠しや二重合わせ”のこと

「比翼」はアパレル業界で「比翼仕立て」の事を意味します。「比翼仕立て」とは、表から釦(ボタン)やホール部分が見えないように、布を二重に合わせる仕立て上がりなどのことを指します。

「比翼」という名前の由来は「比翼仕立て」の形が「まるで鳥が翼を閉じ、羽を休めているように見えるから」だと言われています。「比翼」はジャケットやブルゾン、ウインターコートやレインコートなどに用いられることが多いです。

アパレル業界の「比翼」の種類とは?

「比翼」は別名”フライ・フロント”

アパレル業界における「比翼」はブラウスやコートなどの「比翼仕立て」のことを指しますが、別名を「フロント・フライ(front fly)」と言います。もともと英語の「fly」には洋服の「前立て」や「前チャック」「ボタン隠し」などの意味があるため、「フライフロント」を「フライ」と省略して呼ぶこともあります。

たとえば「隠し釦留め」のことを「ボタン・フライ」。また「隠しジッパー留め」のことを「ジッパー・フライ」と呼んでいます。

「比翼」はウィンターコートやジャケットなどに多く見られますが、デザイン性を高いブラウスやシャツにも多く採用されています。

「比翼」は2種類”本比翼”と”略比翼”

「比翼」には”本比翼”と”略比翼”の2種類があります。

「本比翼(ほんひよく)」とは、釦やファスナを留めた時に前から見えないように布を重ねて仕立てたものを指します。つまり、ボタン留めの部分が隠れるように二重合わせにデザインの仕立てが「本比翼」です。

胸元をスッキリと演出する効果があり、着物や仁平などの日本和装にも「本比翼」が使われています。

一方「略比翼」とは、前見頃の部分を折り返し、真裏に釦ホールを作成したものを指します。トレンチコートやジャンパーなどの上着以外にも、ドレスシャツなどのアウターにも用いられる仕立て方法です。

「比翼」の使い方と例文・関連熟語とは?

「比翼」は良い意味で使われる

「比翼」は二羽の鳥が翼を揃えて颯爽と飛ぶこと、また姿を表す言葉です。そのため、人生やプライベート、ビジネスでのあらゆる状況において好調に進んでいる状況を比喩的に表したり、人々が歩幅を揃えて前向きに仲良く進む姿を意味する時に使われます。

「比翼」は会話や文章に頻繁に登場する言葉ではないかもしれませんが、おおむねポジティブな感情を持って使われる言葉となります。

「比翼」を使った例文

「比翼」を使った例文をご紹介しましょう。

  • A社の広報担当とは、比翼の鳥のようにうまくやっているよ。
  • 比翼と言われた同僚が退社し、もはや私は気力もやる気も失っってしまった。
  • 冬のトレンドは比翼仕立てのトレンチコートらしい。
  • 何といっても比翼の良さは、ファッション性に長けていることだ。

「比翼塚」とは相思相愛の男女を一緒に埋葬した墓のこと

「比翼塚(ひよくづか)」とは、相思相愛の仲であった男女を一緒に葬った墓のことを意味します。「比翼塚」は情死や心中などでこの世を去った男女を一緒に埋葬することで、いつまでも仲良くいられることを願う墓のことです。またの名を「夫婦塚」とも言います。

「比翼連理」」は男女の仲が良いこと

「比翼」という言葉でよく使われる四字熟語に「比翼連理(ひよくれんり)」があります。「比翼連理」とは「男女の仲が良いこと」を意味し、夫婦を含め、男女が固くちぎり合い、互いの仲がとても良いことを指します。

たとえば、近所や知り合いに仲睦まじい夫婦や男女がいれば、それは「比翼連理」だと言えます。

「比翼連理」は中国の伝説「長恨歌(ちょうこんか)」にある「比翼の鳥」と「連理の枝」から生まれた言葉で、つがいの鳥(比翼の鳥)と二つの別々の木枝がつながり一つになること(連理の枝)の二つを重ねて意味する言葉です。「長恨歌」では「玄宗皇帝と楊貴妃が永遠の愛を誓い合った言葉とされています。

「比翼」の英語表現とは?

「比翼」は英語で”get along”や”stick together”

「比翼」は英語で”仲が良い・仲良くする”という意味の「get along」や、”一緒にいる・共に行動する”という意味の「stick together」などを使うのが一般的です。

「比翼」を使った英語例文

「比翼」を使った英語例文をご紹介しましょう。

  • 彼らは、まるで比翼の鳥だ。
    They get along so well.
  • 比翼連理のごとく、私の両親はいつも一緒にいる。
    My parents always stick together just like never been separated before.

まとめ

「比翼」の一般的な意味は「二羽の鳥が翼を並べること」つまり「二羽の鳥が仲良く飛翔すること」です。また、アパレル業界では「比翼仕立て」のことを「比翼」と呼び、ボタンホールやジッパー部分を隠すために、布を二重にした仕立て方法を指します。

「比翼」は日常的に使われる言葉ではありませんが、意味を理解して正しく使えるようにしておきしょう。