「ジレンマ」の意味とは?使い方の例文・類語や対義語表現も解説

「ジレンマ」は何かの間に挟まれて窮屈な状況や、気持ち的に苦しい状況を表す時によく使われます。学生生活とは違い、社会人になるとルールや人間関係が厳しくなり、「ジレンマ」に陥ることも多いでしょう。

ここでは「ジレンマ」の意味をはじめ、使い方とその例文、類語・対義語を解説しています。世界にある3つの代表的な「ジレンマ」の種類とあわせてみていきましょう。

「ジレンマ」の意味と語源とは?

「ジレンマ」の意味は”板挟みになること・窮地や難問にぶつかること”

「ジレンマ」の意味は、“二つ以上のことで板挟みになること・解決が非常に困難な難問にぶつかること”です。二者択一という状況で板挟みになり、現状ではどちらも受け入れることができないという状況を意味します。

「ジレンマ」は二つの選択肢があり、どちらか一つを選ぶことが難しく、心や気持ちが窮地に追いやられてしまう状況を指す言葉です。

「ジレンマ」の語源はラテン語の”dilemma”

「ジレンマ」の語源はラテン語の“dilemma”です。もともとはギリシャ語で二つを表す「di」と前提を表す「lemma」を組み合わせてできたもので、英語では論理学の分野でも「両刀論法」または「三段論法」の学問で使われる法名でもある言葉です。

「ジレンマ」の使い方と例文とは?

「ジレンマ」の6つの定番表現をおさえる

「ジレンマ」にはいくつかの定番表現があります。代表的な6つを覚えておきましょう。

「ジレンマ」の定番表現
  • ジレンマに陥る
  • ジレンマがある
  • ジレンマに悩む
  • ジレンマを抱える
  • ジレンマを解消する
  • ジレンマと戦う

一般的な会話の中でよく使われるのが「ジレンマに陥る」や「ジレンマがある」です。「ジレンマに陥る」は同時にある2つのものごとや人の間で、どちらを選択肢て良いか悩み、そこから抜け出せない状況を表します。「ジレンマがある」は二者択一の状況で板挟みにあっていることそのものを意味します。

また「ジレンマを抱える」は、ジレンマが実際に生活や心の重荷になっていることを表す時に、また「ジレンマと戦う」はジレンマから抜け出すのに必死な状況を表す時に使います。

「ジレンマ」を使った例文

「ジレンマ」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。

  • 現在の会社で一生楽に働くか、待遇の良い会社に転職をするか、ジレンマに陥っている。
  • 中間管理職たるもの、しばらくの間は立場的にジレンマを解消することは難しい。
  • やきもち焼の母と愛する彼女との間でジレンマに悩む彼は、ついに結婚を決めた。
  • 甘党の私は常にダイエットとのジレンマに悩まされている。
  • ジレンマと戦い続けるより、自分にとって都合のいい方をさっさと選ぶほうが潔い。

世の中にある3つの代表的な「ジレンマ」とは?

囚人のジレンマ

「囚人のジレンマ」はゲーム理論の基本的な概念の一つです。これは二人の犯罪者にある「自白する」「自白しない」の選択肢において、それぞれが選んだ答えが結果的に矛盾する原理を表すものです。

「囚人のジレンマ」では、犯罪で捕まった二人の容疑者はそれぞれ離れた部屋にいるため、意思の疎通はできません。通常、お互いがお互いの利益を考えて「自白しない」ことで協力し合えば、懲役は二人とも最も短りますが、お互いが自分の利益だけを考え「自白する」を選べば二人とも懲役は長くなります。

つまり、この例が示すのは、容疑者がそれぞれ自分にとって最も良い選択を選んだ場合、相手と協力した時と比べ悪い結果を生んでしまうことを意味します。これが「囚人のジレンマ」です。「囚人のジレンマ」は個人には合理的で魅力的な選択でも、必ずしも全体にプラスの影響を与えるとは限らないということを表しています。

安全保障のジレンマ

「安全保障のジレンマ」は、それぞれの国が自国の安全保障のために優れた政策を進めようとする時、結果的には他国と軍備的同盟などを結ぶことになるため、安全保障政策を進める前よりも、国際的な緊張が高まってしまうことを意味します。

自国単位で見れば優れた政策でも、世界全体を視野に捉えれば与える結果はネガティブであるということを表しています。

デジタルジレンマ

「デジタルジレンマ」とは、デジタルデータの保存性におけるコストパフォーマンスの矛盾について説いたもので、画期的なデジタルデータがアナログを使った保存よりも、長期的に見れば結果的にコストが格段に高くついてしまうことを意味しています。

これは、映画業界で撮影したフィルムを保存する際、データをデジタル的に記録保存する場合と、物体的なフィルムで保存する場合では、デジタルデータの方がコストがかかることから導きだされたものです。データ保存の方が場所もとらず、経済的であるように見えますが、長期的な視野で見ればそうではないということになります。

一見するとデジタルデータは便利で保存性に長けていますが、コスト面やデータの安全性においては昔ながらのアナログのほうが長けているというジレンマが生まれています。止まることをしならないテクノロジーの進化、近年急速化するデジタル化社会においては、実に皮肉的なジレンマと言えるでしょう。

「ジレンマ」の類語と対義語とは?

「ジレンマ」の類語は”コンフリクト”

「ジレンマ」の同じカタカナ語での類語は“コンフリクト”です。意味は「葛藤」「対立」「衝突」で考え方の不一致や、戦争での長期のぶつかりあいなどを表しますが「ジレンマ」と同じく、複数のものごとが同時に存在し、身動きが取れず感情的に激しい迷いが生じているときに使われる言葉です。もちろん「コンフリクト」の意味でもある「葛藤」や「板挟み」も言い換えとして使うことができます。

その他の類語は「ジレンマ」の状態、つまり二つ以上のものごとに調和がなく、同意が欠如していることを表す言葉「不和」「不協和音」「仲違い」などがあります。

「ジレンマ」の対義語は”カタルシス”

「ジレンマ」の正式な対義語は見当たりませんが、“カタルシス(katharsis)”は日頃から鬱積(うっせき)した同類の感情を解消し、気持ちがすっきりすることを表すため、対義語に近い表現だと言えます。「カタルシス」はギリシャ語で「排泄」「浄化」の意味があります。

まとめ

「ジレンマ」とは、二つ以上のものごとの間で板挟みになること、二者択一の場面でどちらも選ぶことが困難であることを意味する言葉です。

「ジレンマ」があると気持ちが窮地に追い込まれ、心が苦しくなるのが特徴です。そして「囚人のジレンマ」や「安全保障のジレンマ」のように、自分にとって有利な方を選んだとしても、結果的には全体の利益や幸福にはつながらないという矛盾した概念とも言えるかもしれません。

社会人になってからは「ジレンマ」に陥るシーンに遭遇することも増えてくるでしょう。心や精神にとってはあまり良い状況とは言えませんが、世界にも解決されない「ジレンマ」はいくつかあることを理解し、一刻も早く脱出できるよう状況を切り抜けていきましょう。