「ゼロサム」の意味とは?「ゼロサムゲーム」の例文や反対語も

経済記事などで「ゼロサム」や「ゼロサムゲーム」という言葉をしばしば目にします。結論の部分に用いられることが多いため、その意味を知らないと情報を正しく理解することができません。

この記事では、ゼロサムの意味や使い方と例文を解説します。あわせてゼロサムの複合語や関連語、反対語も紹介します。

「ゼロサム」とは?

「ゼロサム」の意味は”合計するとゼロ”

「ゼロサム」の意味は、“合計するとゼロになること”です。「一方の利益が他方の損失になること」とも言い換えられ、「プラスマイナスゼロ」と同じ概念です。

「ゼロサム」の語源は英語の「zero-sum」です。「zero」は「ゼロ」、「sum」は「合計・総和」という意味です。

「ゼロサムゲーム」とは”ゼロサム”の関係にあること

お互いがゼロサムの関係にあることを「ゼロサムゲーム」と表現します。本来は応用数学のゲーム理論の概念で、一者の利益がもう一方の者の利益の損失と同じになり、全体の損得が常にゼロであるとき、参加者が自分の利益を最大にしようと画策するゲームのことを言います。

ゼロサムゲームの例としてよく引き合いに出されるのが、外国為替を売買して為替差益で利益を得るFX取引です。FX取引は、何かの通貨が安ければ何かの通貨が高くなる構造であるため、勝者の儲けと同じ額で敗者の損失が発生します。

「ゼロサム」の漢字は「零和」であり「令和」ではない

「ゼロサム(zero-sum)」は「零和(れいわ)」と訳されます。数字「0」で表わされる数の「ゼロ」は漢字で「零」と書きます。

2019年からの元号である「令和」が、「合計するとゼロ(ゼロサム)」「プラスマイナスゼロ」の意味となってあまり縁起が良くないのではないかとの憶測が元号の決定時にありました。しかし「ゼロ」の漢字は「令」ではなく「零」であるため、その憶測は懸念に終わりました。

「ゼロサム」「ゼロサムゲーム」の使い方と例文とは?

経済関係の総和がゼロであることを表現する例文

「ゼロサム」「ゼロサムゲーム」は、経済関係について使われることが多い言葉です。次のように使われます。

  • ゼロサムゲームの市場参加者全体の利益と損失の合計はゼロになる。
  • ゼロサムゲームのシナリオによれば、市場のパイを最も多く取った者以外は全て敗者である。
  • 人件費の削減によって利益を確保するだけではゼロサムゲームから抜けられない。
  • トランプ大統領の登場によって、国際貿易は利益を奪い合うゼロサムゲームとなった。

結果がプラスマイナスゼロであることを表現する例文

経済関係以外でも、ある事柄の関係や結果がプラスマイナスゼロであることを表現するのにゼロサムやゼロサムゲームが使われます。

  • 人口減少の加速する日本では、東京から地方に人を移動させてもゼロサムゲームとなるだけだ。
  • 給料が上がっても物価が値上がればゼロサムだ。
  • ナショナリズムは、他者の利益が自分の損失と考える国際関係を生み出す。
  • A社にとって悪いことは何でもわが社にとっていいことだと考えるゼロサムゲームを脱却すべきだ。

「ゼロサム」の複合語や関連語とは?

二者択一に縛られる思考「ゼロサム思考」

勝ちか負けかなどの二者択一に縛られる思考・考え方を「ゼロサム思考」と言います。全体の総和がゼロという本来のゲーム理論の概念とは異なり、心理学的な認知バイアスの一種で、状況に対する個人の主観的判断を指します。次のように使うことができます。

  • 男性社会で女性が追い込まれると、仕事を取るか子どもを取るかのゼロサム思考に陥ることがある。
  • 世論は「勝ち負け」のみを論じるゼロサム思考で分断された。
  • 相手の利益は自分の損失であるとのゼロサム思考が世界を席巻している。

ある者の利益は誰かの不利益となる「ゼロサム社会」

「ゼロサム社会(The Zero-Sum Society)」とは、アメリカの経済学者L.C.サローの用語です。経済成長が停止した社会では、資源や富の総量が一定となり、誰かが得をすると誰かが損をし、経済全体での所得配分はゼロサムとなるという主張です。

サローは、環境や所得格差などの解決すべき社会問題にはゼロサムの要素が存在し、ゼロサム問題を解決して分配の公正を行うことが大切だと主張しました。

宝くじや競馬は「マイナスサムゲーム」

「ゼロサムゲーム」の他にも、利害の総和によって「マイナスサムゲーム」と「プラスサムゲーム」に分類されるゲームがあります。参加者全員の利益の合計が、投資額よりプラスになるときは「プラスサムゲーム」となり、マイナスになるときは「マイナスサムゲーム」となります。

胴元が一定の収益金を差しくギャンブルは、参加者全体の投資額に対する収支はマイナスになるため、「マイナスサムゲーム」に分類されます。代表的なものに宝くじや競馬が挙げられます。

「ゼロサム」の反対語や反対の概念とは?

一人の利益が誰かの損失にならない「ノンゼロサム」

「ノンゼロサム」または「非ゼロ和」は、一人の利益が必ずしも誰かの損失にはならないという意味です。誰かが利益を得ると誰かが損失するというゼロサムとは反対のゲーム理論の概念です。

どちらも勝つ「ウィンウィン」

「ウィンウィン」は「双方が利益を得る」という意味の経済用語です。お互いが勝利する考え方であるため、一方が損失を被るゼロサムとは対峙する概念です。

まとめ

「ゼロサム」とは「zero-sum」(ゼロ-合計)を語源とする外来語で、「合計するとゼロ」という意味です。誰かが利益を得ると、他の誰かがその分を失い、全体の総和がゼロになる関係を「ゼロサムゲーム」と表現します。

世界的な経済の悪化から、他国の利益が自国の損失と考えるゼロサムの国際関係が生み出され、また付加価値を生み出さず、資産の取り合いを行うゼロサムの社会が生まれていると警笛が鳴らされています。

ゼロサムの反対語「ウィンウィン」は、相手の利益になる結果を得ようとする姿勢です。競争よりも協力の考え方の重要性が、もう少しすると目に見えてくるのかもしれません。