「てにをは」の意味とは?間違いやすい助詞や正しい使い方も解説

「てにをはが合わない」などと、文章や会話について指摘されることがあります。「てにをは」とはどのような言葉なのでしょうか?この記事では、「てにをは」の意味や、てにをはの使い方を解説します。あわせて「てにをは」が総称する助詞の使い方も紹介します。

「てにをは」とは?

「てにをは」とは”助詞”の代名詞という意味

「てにをは」とは、言葉をつなぐ「を」「が」「に」などの“助詞”を総称する代名詞として使われる言葉です。

漢文を訓読する時、漢字の読み方を示すための点図の四隅がそれぞれ「てにをは」であったことから、「てにをは」の呼称が生まれました。広義では助詞や助動詞、副詞など含め、狭義では助詞のみを指します。最近では、助詞のみを示す代名詞として「てにをは」が用いられています。

なお、「てにをは」は助詞全般を示す言葉であり、「て・に・を・は」の4語のみを表わしているのではありません。漢字では「弖爾乎波」「天爾遠波」と書きます。

日本語に重要な「てにをは(助詞)」

日本語は、助詞を介して言葉が結びつき、文を作るため、助詞の使い方がたいへん重要です。助詞は、名詞に接続して主題を作ったり、語と語を接続したりする働きをします。

助詞が一文字変わるだけで、文章の意味が大きく変わったり、あるいは適切な助詞の選択を誤ると、意味が変わらなくても、稚拙な印象を与える文章になることがあります。

たとえば、「猫が好きだ」と「猫は好きだ」では、文章の意味が違ってきます。「コーヒーでいいです」と「コーヒーがいいです」では受け手の印象が変わります。

また、「確認を急ぐ」「確認に手間取る」「確認の電話を入れる」など、結合する言葉によって用いる適切な助詞があります。「確認に手間取る」を「確認が手間取る」としても、文章の意味に違いはありませんが、受け手には違和感があります。

助詞の使い方が間違っていることを「てにをはが合わない」と表現する

助詞の使い方が間違っていることを「てにをはが合わない」と表現します。活用する「れる」「られる」などの助動詞の間違いを含むこともあります。「この文章はてにをはが合わない」などと使われます。

また、助詞の使い方が間違っているという意味が転じて、「話のつじつまが合わない」「文章作成能力が低い」などの意味で「てにをはが合わない」の表現が使われることもあります。

さらにまた、「話のつじつまが合わない」の意味が転じて、会話や議論がかみ合わないときに「てにをはが合わない議論だ」などと使われることもあります。

助詞の使い方を直すことを「てにをはを直す」と表現する

文章の校正などで、助詞の使い方が間違っているとき、「てにをはを直してください」と表現することがあります。「てにをはを直す」とは、正しい助詞に直すという意味です。

間違いやすい「てにをはの使い方」とは?

てにをはの間違い例「上や下への大騒ぎ」

「てにをは(助詞)」の使い方の間違いとして、慣用句の「上を下への大騒ぎ」を、「上や下への大騒ぎ」または「上へ下への大騒ぎ」と間違ってしてしまう例があります。「上を下へ返す」の意から「多くの人が入り乱れて混乱する様子」を表わす言葉として「上を下への大騒ぎ」ができたため、「上を下へ」が正しいのです。

たくさんの意味がある「に」の使い方

助詞の「に」には10通り以上の意味があるといいます。「に」の使い方を確認してみましょう。

「明日は会社に行く日だ」と「明日は会社へ行く日だ」はどちらも正しい使い方です。「に」「へ」はどちらも移動する方向を表わす意味があります。

ただし、「月へ到達した」よりも「月に到達した」とした方が違和感がないように、「に」は移動の到着点や目的を示す意味も含まれています。他の例を挙げると、「家に帰ります」が到着点を示し、「家へ帰ります(向かいます)」が方向を示しています。

このように、助詞は話者の細かな気持ちを表わす意味を含んで使われています。

「は」と「が」の使い分け方

次に、先に例に挙げた「猫は好きだ」と「猫が好きだ」の使い分け方を考えてみます。この場合、「猫は」は対比の表現として使われています。「(犬は嫌いだが)猫は好きだ」という意味です。「猫が」は「どんな動物が好きですか?」の課題への回答として「(色々な動物の中で私は)猫が好きだ」と複数の中から取り立てる意識が込められています。

また、「鍵はかかっていた」は「鍵はどうなっていたか」の回答となっており、その一方で「鍵がかかっていた」は現状をそのまま叙述しています。小説などで、とくに問いが書かれていなくとも、読み手の心理として「鍵はどうなっていたのだろう」という展開のあとには、「鍵はかかっていた」と記述すると読み手の心理に沿った展開となります。

「てにをは(助詞)」の英語表現とは?

「てにをは(助詞)」は英語で”postpositional particle”

英語をはじめ、ほとんどの他言語には助詞の役割をする語がありません。例えば、「私は窓を閉めます」「私が窓を閉めます」はどちらも「I close the window.」です。「I(私)」という主語に「私は」「私が」という形で助詞(は、が)が含まれているため、追加する必要がありません。

他言語においては、助詞は後置詞、接続詞に当たります。英語で助詞を表わす言葉は「後置詞」という意味の「postpositional particle」という言葉があてられます。

まとめ

「てにをは」とは、助詞全般を指す代名詞として使われている言葉です。いかにも日本風な表現ですが、それは助詞の性質をよく表わしているともいえます。

「てにをは(助詞)」は、会話の話者や文章の書き手の気持ちや心の機微を伝える言葉として、日本語として独自の発達をしたものです。「てにをは」は、表現に奥行きを与えるとともに、同じ意味でも多様な表現を可能とします。

てにをはを正しく使い、豊かな表現力を身に着けるためにも、古典文学や優れた小説など、多くの文章を読みたいものです。さらに一歩進んで「てにをは」の使い方を詳しく知りたい方には次の辞典がおすすめです。