「デカダンス」の意味と使い方とは?世紀末文学やデカダンも解説

ドラマや曲名、魚釣りのルアー名にも用いられる「デカダンス」という言葉。ふとしたところで聞かれますが、「デカダンス」の本来の意味は何でしょうか。「デカダンス」の意味や使い方、イギリスの世紀末文学や世紀末ウィーンに日本芸術に見られるデカダンスを解説して、さらに「デカダン」と「デカダンス」の違いも紹介します。

「デカダンス」とは?

「デカダンス」の意味は”退廃的な生活”

「デカダンス」の意味は、“退廃的で虚無的な風潮や生活習慣のこと”です。フランス語の「décadence」が語源です。

「退廃的」とは「道徳や健全さが失われている状態」を意味し、「虚無的」とは「世の中や人生を虚しく思うこと」という意味です。

また「デカダンス」は、19世紀のヨーロッパ、特にフランスで文学の世界で起こった退廃的で懐疑的、耽美的または悪魔的傾向の芸術傾向を指す言葉でもあります。この傾向が後に絵画や映像などの芸術にも広まっていきました。

デカダンスな芸術作品の特徴は「退廃的で耽美的」

デカダンス的な芸術作品として知られる作品の傾向は、伝統的な規範や道徳を批判した結果、病的な趣きがあります。また洗練された技巧などは否定し、むしろ異常性や奇怪であることが好まれるといった退廃的な美の在り方が追求されました。

デカダンスが生まれた当時に代表される詩人にはボードレールやマラルメ、作家ではユイスマンスなどが挙げられます。

「デカダンス」の使い方とは?

「デカダンス」の退廃的で虚無的という意味での使い方

退廃的な虚無的な生活をしている人やその生活態度を表すときに「デカダンス」が使われます。その生活ぶりは堕落しているといったネガティブな意味合いが込められます。

  • 「彼には少しデカダンスに感じられるところがあり、慎重に付き合った方がいい」
  • 「彼はデカダンスな人であまり近寄らないほうがいい」
  • 「デカダンスな生活を送る彼に、まともに取り合う者はいなかった」
  • 「失恋した彼女はすべての希望を失ったようで、デカダンスに陥った」

「デカダンス」をロマンチックな意味で捉えた使い方

「デカダンス」の退廃的という意味から、そこに既成価値にとらわれない美を追求している意味合いが含まれることがあります。フランス文学のデカダンス的な風潮で、退廃的であるからこそ美しさがあるといった意味や、退廃的であることでエロティシズムを感じられるといった意味で「デカダンス」が使われることがあります。

  • 「彼はデカダンスな日々を謳歌し、酒に酔いしれながらロマンチックな詩を口ずさんでいた。
  • 「デカダンスを気取りながら、彼は流ちょうに語り続けた」

「デカダンス」が世界に与えた影響とは?

イギリスの世紀末文学へと発展

デカダンスの風潮はフランスからヨーロッパの隣国へと広がっていき、イギリスではオスカー・ワイルドを中心とした「世紀末文学」へと受け継がれます。

「世紀末文学」は19世紀末のイギリスで、伝統的な規範、社会的な道徳に反発し、そこからの開放を説き美を追求する退廃的傾向を含む唯美主義の文学界での風潮のことです。代表作としてオスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』が挙げられます。

またこの世紀末文学の影響は美術界にも影響を与えて、ペン画で有名なオーブリー・ペアズリーやエドワード・バーン=ジョーンズなどが活躍しました。

クリムトをはじめとする世紀末ウィーンへと発展

「デカダンス」は、9世紀末、オーストリア=ハンガリー帝国の首都ウィーンでも影響を与えます。当時の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の後押しを受けて「世紀末ウィーン」へと発展しました。

美術では官能的で退廃的な美を表現したグスタフ・クリムトや意図的に捻じ曲げられたポーズの人物画が印象的なエゴン・シーレ、建築では合理性と機能性を重視た建築設計でユーゲント・シュティール建築の傑作を残したオットー・ワーグナーに象徴されます。

クラシック音楽では教会音楽の強い影響から抜け出し軽音楽が多く作られ、数多くのワルツ音楽を作曲したヨハン・シュトラウス2世やヨハネス・ブラームス、グスタフ・マーラー、アルノルト・シェーンベツクなどが有名です。

日本文学・美術にもデカダンス的風潮がある

日本の文学界にもデカダンス的風潮は見られ、懐疑的な視点の中に本質を見ようとしたデカダンス的な傾向のある作品が生まれました。代表的な作家には、谷崎潤一郎や太宰治、三島由紀夫、坂口安吾などが挙げられます。

美術では、退廃的であり妖艶な女性を描くことを得意とする金子國義、イラストレーターで自ら平成耽美主義と自分のスタイルを名付けた山本タカトなどが挙げられます。

「デカダン」とは?

「デカダン」とは”デカダンス派に属する芸術家”のこと

「デカダン」とは「デカダンス派の芸術家、またはその芸術的傾向」のことを意味します。また「デカダン」は単に退廃的という意味でも使われるため、「デカダン」は「退廃的な生活をする人」を指すこともあります。

「デカダンス」と「デカダン」との違い

「デカダンス」と「デカダン」の違いは、「デカダンス」は芸術の風潮として、または退廃的な状態という意味で使われるのに対して、「デカダン」はデカダンス派や退廃的な傾向のある人のことを指します。芸術としての風潮や退廃的な状態が語られているときには「デカダンス」を使い、その風潮のある芸術家や退廃的な人を語るときには「デカダン」が使われると覚えておくといいでしょう。

また「デカダン」は形容動詞的にも使われるため「デカダンな生活」といった表現もできます。「デカダンス」を形容動詞的には「デカダンス的な」という表現方法になります。

まとめ

「デカダンス」とは「退廃的で虚無的な生活態度や風潮」を意味する言葉で、19世紀フランスで生まれた退廃的であり耽美的な芸術的風潮のことも指します。デカダンス的傾向のある芸術家はデカダンス派やデカダンと呼ばれます。

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「難解なワードでもわかりやすく」をモットーに、常識ワードからビジネス用語、時には文化・アート系など、幅広く記事を書かせていただいています。ドイツ在住で2児の母。好きな食べ物はビターチョコレートとナッツ類。