複合企業のことを「コングロマリット」と呼びますが、どのような定義や意味で使われている言葉なのでしょうか?この記事では、コングロマリットの意味を解説し、あわせてそのメリット・デメリットも紹介します。
加えて日本やアメリカのコングロマリット企業の具体例や、コンツェルン・財閥との違いも解説します。
「コングロマリット」とは?
「コングロマリット」の意味は”複合企業(体)”
「コングロマリット」の意味は、“関連のない多種の企業を統合してできた複合企業グループ”のことです。同業他社ではなく、市場や技術が異なる業種に参画し、多角経営を目指す統合形態です。
異業種で構成された複合企業体をコングロマリットと呼び、その中でも特に巨大グループ会社を指すことが一般的です。
語源の英語「conglomerate」には”集合体”という意味もある
「コングロマリット」の語源は英語”conglomerate”です。巻きつけるという意味のラテン語からできた言葉です。
カタカナ語のコングロマリットは、異なった分野で構成される多角経営の複合企業のみを指して使われますが、英語の「conglomerate」には、「集合体」「集塊」という意味もあります。
「コングロマリット」のメリット・デメリットとは?
メリットは「規模の経済性」と「多角化によるリスクヘッジ」
「コングロマリット」のメリットは、企業の合併や買収により、一気に市場規模を拡大できることです。企業が成長・拡大するためには自社設備への投資や新しい技術の開発、ノウハウの蓄積など多大なコストと時間がかります。企業をコングロマリット化することは規模の経済性に優れているのです。
さらに、安定した実績のある多業種の企業を統合することにより、新しい市場にゼロから参入するリスクを減らせるとともに、市場の変化に対するリスクヘッジを行うことができます。安定した収益の維持のためには事業の多角化が有効です。
デメリットやリスクに「コングロマリット・ディスカウント」がある
コングロマリットのデメリットとしては、期待していたシナジー効果が得られない結果となったり、買収時の評価額が数年後に下落したりすることがあります。
また、コングロマリットの全体像が見えにくかったり、価値を評価するのが難しいことなどから市場評価が低くなり、株価が下落するリスクがあります。
各事業ごとの企業価値の合計よりも、コングロマリットとしての企業価値が小さい状態を「コングロマリット・ディスカウント」といいます。上場子会社を多く抱えながら株価が割安なコングロマリット・ディスカウントの会社はたくさんあり、巨大なコングロマリットであっても、事業分離を進めている例があります。
「コングロマリット」の企業例とは?
アメリカを拠点とするGE、フランスを拠点とするLVMH
アメリカにおけるコングロマリットとして巨大かつ有名な企業としてはゼネラル・エレクトリック(General Electric Company、略称: GE)が挙げられます。アメリカを拠点とした多国籍コングロマリット企業で、世界最大の総合電機グループです。医療機器や家庭用電化製品、金融事業など幅広い分野でビジネスを展開しています。
1981年から2001年にかけて最高経営責任者を務めたジャック・ウェルチは、「世界で1位か2位になれない事業からは撤退する」と主張し、GEの事業拡大を推し進め、「伝説の経営者」と呼ばれました。
フランスを拠点とする世界最大のアパレル系コングロマリットにはLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)があります。1987年にルイ・ヴィトンとモエ・ヘネシーの合併により誕生し、傘下ブランドの事業拡大を図りながら、セリーヌやフェンディ、ケンゾーなどの世界ブランドを買収してきました。
日本企業では楽天やソニー
日本の代表的なコングロマリットとしては、積極的なM&Aにより多角的に事業を拡大している楽天グループが挙げられます。ECモールを中心としたインターネットサービスから創業し、現在は金融サービスや総合旅行サイトなども運営しています。
日本に本社を置く多国籍企業のコングロマリットとしては、ソニーグループが最大規模です。ハードウェア、映画、音楽、金融など多種多様な会社を統合しています。
「コンツェルン」と「コングロマリット」との違いとは?
コンツェルンは「独占形態」、コングロマリットは「多角化形態」
「コンツェルン」とは、持ち株会社の形態による資本提携を基礎として、支配会社がその傘下に子会社を置く従属関係によって形成される企業の結合体のことをいいます。
また、コンツェルン型の巨大な独占企業集団の中で、同族支配による企業の結合体を「財閥」と呼びます。アメリカのモルガン財閥、ロックフェラー財閥、第2次世界大戦終結までの日本における三菱財閥、三井財閥などがそれにあたります。
「コンツェルン」「コングロマリット」とも、合同企業の形態としてはほぼ同じ意味を持ちますが、コンツェルンはおもに第二次世界大戦以前に行われた、大企業による市場支配を狙った独占形態を指すのに対し、コングロマリットは事業の多角化を目的に形成された企業複合体を指します。
まとめ
「コングロマリット」とは、異業種で構成された大きな複合企業体のことです。アメリカを拠点とするGE、フランスを拠点とするLVMH、日本を拠点とするSONYなどが、多国籍に展開する巨大コングロマリットです。
コンツェルンも合同企業ですが、コングロマリットが多角化経営を狙って形成されるのに対し、コンツェルンは大企業による支配・独占形態を指すところが異なる点です。