「有頂天」の意味と使い方とは?類語や仏教にまつわる語源も解説

得意満面な様子を「有頂天」と表現しますが、その語源は仏教における最高の天という意味を持ちます。普段なにげなく使っている言葉の隠れた意味を知ってしっかりとした語彙力を身に着けてみませんか?

この記事では「有頂天」の一般的な意味と語源となった仏教の世界観を解説します。あわせて有頂天の使い方と例文、類語や英語表現も紹介しています。

「有頂天」の意味とは?

「有頂天」の意味は”大得意となり舞い上がること”

「有頂天」の意味は、“大得意となり舞い上がること”です。「得意の絶頂にいること」・夢中となって他を顧みないこと」という意味もあり、得意になって他が見えない状態になっていることを否定的に表現するときにも用いられます。

「褒められて有頂天になる」はよく使われる表現ですが、「褒められて有頂天となり、周囲が見えない状態である」といったような否定的なニュアンスも含んで使われることが多いといえます。

たとえば「まったくの有頂天ぶりだった」とは、大得意となり舞い上がっていることを皮肉をこめて表現しています。

「有頂天」の語源とは?

仏教の「天上界における最上の天」が語源

「有頂天」とは、もともとは仏教の世界観を表す仏教用語です。天上界における最上の天を意味するサンスクリット語ババーグラ(bhavgra)が漢訳され、仏教とともに日本に持ち込まれました。

ババーグラ(有頂天)とは、存在=有(bhava)の頂(agra)を意味し、三界(欲界・色界・無色界)のうちの最も高位にある無色界の中での最高位を指します。修行を究めた人が有頂天に昇ることができるとされます。

有頂天という天界に登り詰めて喜びの絶頂に到達するという意が転じて、「絶頂を極める」という意味で用いられるようになり、近世に至って「喜びのあまり我を忘れてうわの空となる」という意味で「有頂天」が用いられるようになりました。

「有頂天」の使い方と例文とは?

「ネガティブに表す」場合の使い方と例文

喜びのあまり気持ちが舞い上がってしまい、結果として失敗してしまった状態を表す表現として「有頂天」を用いることが多くなっています。

例文
  • 試験合格を知った日は有頂天のあまり朝まではしゃいでしまった
  • 優秀だと褒められて有頂天になり、身の丈以上の仕事を引き受けてしまった
  • 経済的に大成功したが、有頂天になるなと親から諭された
  • 勝ち続けて有頂天になり、敗者のことを考えられなかった

「客観的に表す」場合の使い方と例文

喜びのあまり周囲が見えなくなるといったネガティブな意味で使われることが多い「有頂天」ですが、喜びのあまり夢中になっている様子をとくにネガティブな意味を含まずに用いられることもあります。

例文
  • その素晴らしい結果は有頂天の喜びをもたらした
  • 有頂天になって心の底から歓喜した
  • 優勝の誇らしさから有頂天となって仲間と抱き合った

「有頂天」の類語とは?

心を奪われ我を忘れる状態「忘我の境地」

物事に心を奪われたり、夢中になったりして我を忘れることを「忘我(ぼうが)」といいます。その状態にいることを「忘我の境地(ぼうがのきょうち)」と言い表します。

同じ意味の言葉に、「三昧の境地(ざんまいのきょうち)」「夢見心地(ゆめみごこち)」「恍惚状態(こうこつじょうたい)」などがあります。

これらの表現は、夢中になっていることを表す意味では有頂天と同様ですが、得意満面となる様子は含まれません。

手放しで大喜びする状態「歓天喜地」

大喜びする状態を表す四字熟語に「歓天喜地(かんてんきち)」があります。「天にむかって歓び、地にむかって喜ぶ」の意からできた言葉です。

「歓天喜地の大喝采となった」「歓天喜地の祝福を受けた」などと、非常に喜ぶ様子を表し、「有頂天」のような、喜ぶあまり我を忘れるというような意味は含みません。

誇らしげな様子が顔いっぱいに広がる「得意満面」

得意になっているさまを表す四字熟語に「得意満面(とくいまんめん)」があります。「得意」は思い通りになって満足することで、「満面」とは顔全体という意味です。顔いっぱいに誇らしげななようすが広がっている人について「得意満面の笑みを浮かべる」「得意満面な様子で語った」などと表現します。

有頂天と同じく、歓びのあまり舞い上がって周囲が見えないというようなニュアンスを含んで使われることもあります。

「有頂天」の英語表現とは?

「有頂天」は英語で”rapture”

「有頂天」は英語で表現すると”rapture”です。「歓喜」「恍惚」という意味で用いられることもあります。「うっとりする」というラテン語がもとになった言葉です。

「有頂天になる」の表現は「go [fall] into raptures」があります。他にも、文脈によっていろいろな表現ができ、「be beside oneself (with joy)」「be overjoyed」「walk on air」などがあります。

まとめ

「有頂天」とは、「天上界における最上の天」という意味の仏教用語が語源です。仏教の世界観には欲界・色界・無色界の三つで成り立つ「三界」があり、そのうちの最上に位置する無色界の中の最高位が「有頂天」です。

修行を極めて有頂天に達することはこのうえない喜びであるため、転じて得意の絶頂にいるという意味の一般的な言葉として用いられるようになりました。

一般的には「褒められて有頂天になる」などと、大得意となり舞い上がる状態を表す言葉として使われ、しばしば戒めの意味を含めて使われます。それは仏教由来の言葉であることが関係しているのかもしれません。