「下位互換」は、聞いただけでは、具体的にどのような互換性があるのかわかりづらい言葉ではないでしょうか。しかし、ソフトウェアの検討や購入においては、その意味を理解しておくべき言葉です。
今回は「下位互換」の意味と、「上位互換」との違いをわかりやすく解説。事例や類語・英語表現についてもお伝えします。
「下位互換(下位互換性)」の意味と読み方とは?
「下位互換」の意味は”上位に対して下位が互換性を持つこと”
「下位互換」の意味は、“上位に対して下位が互換性を持つこと”です。簡単に言うと、ソフトウェアなどにおいて、上位グレードの製品で作成したデータを価格が安い下位グレードの製品でも使用できる場合を「下位互換性」があると言います。
「下位互換」における「下位」は、「旧製品」の意味として誤解される場合もあります。しかし「下位互換」は、製品におけるグレードの「下位」を指した言葉です。
「下位互換」の読み方は”かいごかん”
「下位互換の読み方は、“かいごかん”です。
「下位互換性」の読み方は”かいごかんせい”
「下位互換性」の読み方は、“かいごかんせい”です。「かいごかんしょう」と読み間違えないように注意しましょう。
「下位互換」の使い方とゲームで使われる場合の意味とは?
「○○の下位互換」などと使う
「下位互換」は、「下位互換」と言う言葉単独ではなく、対象となる製品名とあわせて使うことが多い言葉です。「○○の下位互換」など製品名をあわせて使います。
- 「Adobe PhotoShop Elements」は「Adobe PhotoShop」の下位互換に当たる製品だ。
- 下位互換の製品のため、機能が足りず使いづらさがあるのは仕方がないことだ。
- 予算の都合上、やむを得ず通常盤ではなく下位互換の製品を購入することとなった。
ゲーム機では「古いゲームがプレイできること」の意味
ゲーム機における「下位互換」は、”過去に発売された古いゲームがプレイできること”の意味です。古いゲーム機で楽しんだゲームを、新しいゲーム機においても楽しめることを「下位互換がある」と言います。
家庭用ゲーム機「Xbox One」では古いバージョンの「Xbox」用に開発されたゲームの一部をプレイすることが可能です。初代の「Xbox」や2005年に発売された「Xbox 360」などでプレイしていたゲームも楽しむことができます。
ポケモンなどのカードゲームでは「劣るカード」の意味
「下位互換」は、トレーディングカードゲーム(※2人以上の人数で、キャラクターなどが描かれた手持ちのカードを組み合わせて対戦を行うゲーム)においても使われる言葉。
「ポケットモンスター」や「遊戯王」などのトレーディングゲームにおける「下位互換」とは、カードの強さを比較したときに、「片方のカードが明らかに劣っていること」の意味として使います。
「下位互換」の具体的な例とは?
PhotoShopにおける下位互換
ソフトウェアにおいては、「下位互換性」を持った製品が数多く販売されています。グラフィックソフトを発売するAdobe社も「Elementsファミリー」として「下位互換」に当たる製品を発売しています。
「Adobe PhotoShop Elements」は「Adobe PhotoShop」の、「Adobe Illustrator Elements」は「Adobe Illustrator」のそれぞれ「下位互換」に当たる製品です。上位グレードとなる製品の機能の一部は持ち合わせていませんが、作成・保存したデータを読み込んで使用することが可能となっています。
パソコン用メモリにおける下位互換
パソコンのメモリは、上位のメモリに対応したメモリスロットに設定が可能な「下位互換性」を持ちます。メモリをパソコンに設定する時には、「ピン」と呼ばれる部分をメモリ用のスロットに差し込み接続します。
ピンの数はメモリの種類によっても異なりますが、同じ種類においても上位ほど数が多くデータの処理速度が早くなります。メモリスロット自体が上位の240ピンに対応している場合であっても、下位である168ピンのメモリを使用することができます。
「下位互換」の類語・言い換え表現と対義語とは?
「先方互換」「廉価版」は「下位互換」とほぼ同じ意味
「先方互換(せんぽうごかん)」と「廉価版(れんかばん)」は、「下位互換」とほぼ同じ意味を持つ類語です。
「先方互換」の意味は、「先に発売した製品が後に発売された製品と互換性を持つこと」。先に発売した製品は後で発売する製品に比べ機能や性能が劣っていることから、「下位互換」の意味合いとして使われることが多い言葉です。
「廉価版」とは、「普及している製品の機能を制限して価格を安くした製品」の意味を持つ言葉。「下位互換」とはほぼ同じ意味合いで使うことができます。なお「機能が劣る」と言う意味ではないため、「劣化版」を間違えて使わないように注意しましょう。
新製品と互換性を持つ場合は「前方互換」
「前方互換(ぜんぽうごかん)」は、「新製品に対して旧製品が互換性を持つこと」を意味する言葉。「下位互換」と混同して使われることも多い言葉ですが、言葉の意味が異なるため、意味に合わせて使い分けることが必要です。「下位互換」は「上位グレードに対して下位グレード」が、「前方互換」は「新バージョンに対して旧バージョン」がそれぞれ互換性を持つことを表しています。
「下位互換」の反対の意味を持つ対義語は「上位互換」
「上位互換(じょういごかん)」とは、「下位互換」と反対の意味を持つ対義語です。ソフトウェアなどの製品においては、「下位グレードの製品に対して上位グレードの製品が互換性を持つこと」を意味します。
また、トレーディングカードゲームにおいても「上位互換」は「下位互換」の対義語となります。「上位互換」は、対戦したカードのうちのひとつが「優れていること」を意味する言葉です。
「下位互換」の英語表現とは?
「下位互換」の英語は”lower compatiblity”
「下位互換」の英語表現は、”lower compatiblity”です。「lower」は、”低い”を意味する「low」の形容詞で、「compatiblity」は”互換性”や”適合性”を意味する名詞です。
「○○の下位互換」と表現する場合は、前に製品名をつけて「○○ lower compatibility」と使います。また、「lower」ではなく、「下向き」の意味を持つ「downward」を使った「downward compatibility」も「下位互換」の意味となります。
なお、英語表現における「下位互換」と「前方互換」も、日本語同様似通った表現となりますが、混同することがないよう注意が必要です。「下位互換」は「downward compatibility」、「前方互換」は「forward compatibility」となります。
まとめ
「下位互換」とは、一般的には、ソフトウェアなど製品において「上位に対して下位が互換性を保つこと」の意味で使う言葉です。簡単に言うと、「上位グレードの製品で作成したデータを下位グレードの製品でも使用できること」の意味です。「上位互換」と言う言葉は、「下位互換」の反対の「下位に対して上位が互換性を持つ」を意味する対義語です。