「及び」と「並びに」はどちらも、複数の物事を並べて述べる場合に使う言葉ですが、それぞれの意味の違いを詳しくご存知でしょうか。今回は「及び」と「並びに」の言葉の意味の違いとそれぞれの使い方を紹介し、述べる場合の順番についても解説します。また「又は」「若しくは」などの類語との違いや、英語表現もお伝えします。
「及び」と「並びに」の意味や違いとは?
違いはレベルや種類が”同じ”か”異なる”か
「及び」と「並びに」の違いは、レベルや種類が”同じ”か”異なる”かどうかです。「及び」は、同じレベルや種類の物事を並べて述べる場合に使います。一方「並びに」は、異なるレベルや種類の物事を並べる場合に使います。「及び」「並びに」のどちらも、複数の言葉をつなぐ役割を持っていますが、述べる内容によって使い分けることを覚えておきましょう。
「及び」の意味は”〜と〜”
「及び」とは、「AとB」など複数の物事を並べて述べる場合に使う言葉です。たとえば「上着の着用及びネクタイが義務付けられる」と言う表現は、「上着の着用とネクタイのどちらも義務付けられる」の意味。「及び」は2つを並べて述べる場合と、前の物事に後ろの物事を付け足して述べる場合にも使いますが、どちらの場合も、2つの物事を同じレベルや種類の固まりとして見なします。
「並びに」の意味も”〜と〜”
「並びに」(ならびに)と言う言葉も、「及び」同様に、「AとB」など複数の物事を並べて述べる場合に使います。たとえば「児童並びに職員は着席したままとすること」は、「児童と職員はどちらも着席したままとする」を意味する表現です。「並びに」を使用する場合は、2つの物事を別のレベルや種類の固まりと見なしていることとなります。
「及び」と「並びに」の使い方と例文とは?
「及び」は2つでも3つ以上でも使用可
「及び」と言う言葉は、物事が2つの場合も、複数の物事も場合もどちらも使うことができます。たとえば、「担当者」と「関係者」を並べて述べる場合の表現は、「担当者及び関係者」となります。
また「先生」「生徒」「保護者」の3つを並べて述べる場合の表現は、「先生、生徒、及び保護者」です。「先生及び、生徒、保護者」と言う並べ方は、一般的には行われません。
「及び」は句読点の位置に注意
2つの物事を述べる場合には、「A及びB」と書き、読点「、」を使う必要はありません。
「、」を使用する場合には、「A、及びB」と「及び」の前につけます。「及び」と言う言葉は、動詞の「及ぶ」としても使用される言葉です。「及び」が動詞として使われているのか、接続詞として使われているのかがわからないと、文章の意味がわかりづらくなる場合があるためです。
「並びに」は異なる種類の2つの物事に使う
「並びに」は、異なる種類の2つの物事をつなぐ言葉として使います。したがって「並びに」と言う言葉の一般的な使い方は、「A並びにB」です。なお、後ほどご紹介する法律における「並びに」の言葉は、一般的な使い方とは異なるルールで使います。
AとBには同列のものを入れて使い、「並びに」の前後どちらに置いても意味の違いはありません。たとえば「先生並びに生徒」と「生徒並びに先生」と言う2つの表現は、同じ意味合いとなります。
「及び」と「並びに」を使った例文
「及び」と「並びに」を使った例文をご紹介しましょう。
- 今回の出張においては、英語及びフランス語が堪能な人材がふさわしい。
- 舞台上では、受賞者及び受賞作品の名前が読み上げられている。
- 紳士並びに淑女の皆様、本日は心ゆくまでシェフが腕をふるった料理をご堪能ください。
- ご来賓の皆様並びに保護者の皆様にも、楽しんでいただける卒業式としたいと後輩一同で準備を行いました。
法律や公用文・公文書における「及び」「並びに」とは?
使い方や順番の厳密なルールがある
先にご紹介した「及び」と「並びに」の使い方は、ビジネスシーンや日常生活における一般的な使い方です。法律用語や公用文や公文書における「及びと「並びに」の言葉は、異なるルールで使うことが必要です。
法律における「及び」「並びに」の言葉は、単独や併用、並べる順番などが厳密に定められています。したがって、弁護士や公務員は定められたルールにしたがって、文書の作成を行います。
「並びに」は「及び」との併用が必要
法律においては、「並びに」は単独では使用しない言葉です。先ほどご紹介したような「A並びにB」と言う表現は、法律においては使用しないルールとなっています。
「並びに」を使うのは、「及び」と言う言葉と併用を行う場合です。たとえば、「生徒及び保護者並びに職員が同席を行うことが必要」という表現においては、生徒と保護者は同じまとまりとして「及び」の言葉を使ってつなぎます。次に「生徒と保護者」とは別のまとまりである「職員」を「並びに」の言葉を使ってつなぎます。
「及び」と「並びに」の類語とは?
どちらか一方を意味する場合は「若しくは」「又は」
「若しくは」「又は」、「及び」「並びに」の類語です。しかし「若しくは」「又は」ともに、どちらか一方を意味する言葉として使うため、言い換えの言葉としては適さないと言えます。
若しくは(もしくは)
前後に並べたうちのどちらかを選ぶ場合に使う言葉です。法律用語として使う場合には、「若しくは」は「又は」より小さい括りをつなぐ言葉として使います。
又は(または)
「又は」は2つ以上のうちの1つを選択する場合に使います。「鶏肉または豚肉」「コーヒー、紅茶またはハーブティー」など、2つの場合、2つ以上の場合のどちらにも使用することが可能な言葉です。
両方を意味する場合は「かつ」
「かつ」とは、「AかつB」などと使う言葉で、「AとBどちらも」を意味する言葉です。
ビジネスシーンでよく使われる表現のひとつに、「迅速かつ丁寧」があります。「迅速かつ丁寧に行いなさい」と言われた場合は、物事を迅速に進めるだけでなく、丁寧に進めることが必要。又、「3年の実務経験がありかつ資格を取得済みの者」は「3年の実務経験」と「既に資格を取得していること」のどちらもが必要要件となります。なお「かつ」は、「且つ」と漢字で書かれる場合もあります。
「及び」と「並びに」の英語表現とは?
英語では「and」や「as well as」
「及び」と「並びに」の英語表現には、「and」や「as well as」を使うことができます。「A and B」と「A as well as B」のどちらも「AとB」を意味する言葉ですが、ややニュアンスが異なります「as well as」は「AもBも」の意味合いとなり、前に置く言葉に意味の重点が置かれます。「AだけでなくBも」のニュアンスを含む表現として使います。
まとめ
「及び」と「並びに」は、どちらも複数の物事をあわせて述べる場合に使う言葉で、「AとB」の意味を持っていますが、使う対象が異なります。「及び」には同じレベルや種類の物事を、「並びには」違うレベルの種類や物事を並べて述べる場合に使います。
公用文や公文書など、法律における「及び」「並びに」は使用のルールが厳密に定められています。「及び」は単独使用を行わない、大きな括りから順番に述べるなどのルールがあります。