「なまじ可愛い」や「なまじ頭がいい」などと使われる「なまじ」という言葉。ちょっと変わった響きのある言葉ですが、その意味を正しく理解できていますか。今回は「なまじ」の意味と使い方を例文と併せて解説します。また「なまじ」の漢字や語源のほかに類語と英語表現も紹介しますので、参照してみてください。
「なまじ」の意味と例文とは?
「なまじ」の意味は”中途半端・無理にしようとする”
「なまじ」の意味は、“完全でなく中途半端であること”です。形容動詞と副詞として使われます。
副詞として使われるときは、「中途半端」の意味の他に無理にしようとするさまという意味もあります。ある事柄をしなければよかったという後悔の気持ちが含まれています。
「なまじ」を使った例文
「なまじ」が形容動詞として使われた時の例文:
- 「なまじな練習では、次の試合には勝てないぞ」
- 「なまじに思いやりがあると、相手のいい迷惑になる」
「なまじ」が副詞として使われた時の例文:
- 「なまじお人よしですぐ相手にお節介をする」
- 「なまじ金があるものだから、つい無駄遣いをしてしまう」
「なまじ」の漢字表記と語源とは?
「なまじ」は漢字で”生地”ではなく「憖」
「なまじ」とは漢字で“憖”と書き表します。「憖」という字は、訓読みで”なまじ(い)”、音読みは「ギン」や「キン」です。意味は”強いて・無理して・強く願う・傷つける・慎み深い”などのさまざまな意味があります。
「なまじ」の漢字の書き間違いに「生地(きじ)」があるのでご注意ください。
「なまじ」は方言ではなく”憖い(なまじい)”が転じた和語
「なまじ」は「憖い(なまじい)」が転じた言葉で、日本固有の言葉である和語です。古くは「生強い(なまじい)」と書き表し、「生」が中途半端の意味で、「強い」がある状態を強いるという意味であり、「なましい」と読まれていたこともあります。
「生強い」も「なまじ」と同様、形容動詞と副詞として使われますが、中途半端という意味の他に、副詞として使われた時には、「うかつ」や「できそうのないことを無理にする」、もしくは「したくないことをいやいやする」という意味もあります。
「なまじ」の使い方と誤用とは?
「中途半端」の意味での使い方
「なまじ」は「中途半端」の意味で使い、ある状態が中途半端なためによくない、または上手くいかないといった悪い結果に落ち着く文章で使われます。
- 「なまじ可愛いだけに、言葉遣いが悪いのが惜しいなあ」
- 「なまじ頭がいい人ほど周囲に誤解されやすい」
- 「なまじ経験があると、逆に不利になる」
「無理をしたため悪くなる」という意味での使い方
また「まなじ」は、ある事柄を無理に行ったため悪い結果になったという文章でも使われます。
- 「助けるつもりでなまじ手伝ったせいで、かえって迷惑をかけた」
- 「あの映画は、なまじリアルに描こうとしたために辻褄が合わなくなってしまった」
「なまじ」の誤用に注意
「なまじ」を「中途半端」もしくは「無理にして悪くなる」という意味ではなく「ある程度」という意味と間違えて、「なまじ間違いではない」や「なまじ嘘じゃない」といった例があります。この使い方は誤用なので注意しましょう。
「なまじっか」や「なまじか」とは?
「なまじっか」は”なまじ”の促音化された表現
「なまじっか」という言葉は、「なまじ」と同じ意味で「中途半端」や「無理にやろうとするさま」です。語源の「なまじ」から「なまじか」と変化して、さらに促音化されて「なまじっか」になったと言われています。
漢字では「憖っか」と書き表しますが、「憖」という漢字が難しいため、ひらがなで「なまじっか」と書き表されることが多いです。
「なまじか」も”なまじ”からの派生語
「なまじか」も「なまじ」からの派生した言葉です。意味も「なまじ」と同様、「中途半端」や「無理にやろうとするさま」です。
- 「なまじか才能があると思い込んでいるから、質(たち)が悪い」
「なまじ」の類語とは?
「中途半端」「至らない」「生半可」などがある
「中途半端(ちゅうとはんぱ)」は「なまじ」の類語には、物事が完成していない状態を表す言葉で、「中途半端」や「至らない」、「生半可」などが挙げられます。
- 「中途半端」:
「物事が完成していないさま」を意味し、「仕事が終わらずに中途半端になってしまった」などのように使います。
「中途半端な言い回しをしたため誤解を招いた」
- 「至らない」:
「至らない(いたらない)」には「ある状態までに及んでいない」という意味と「注意が十分に行き届かない」という意味があります。目的に到達していないという意味合いからネガティブに使われることもあれば、単にある状態になっていないという意味合いで状況説明の表現として使われます。
「今回は再試には至らないものの、このままでは落第もありうるぞ」
- 「生半可」:
「生半可(なまはんか)」とは、「中途半端」や「不十分」という意味で使われます。
「生半可な努力では試験に合格できないぞ」
「なまじ」の英語表現とは?
「なまじ」の英語表現は文脈から意訳する
「なまじ」を意味する英単語はないので、文脈から英語表現に直します。
例えば「なまじな努力をしても試験に合格しない」という文なら、「たとえ努力をしても試験に合格するのは難しい」という文脈にして英訳します。
- “Even if you make reasonable efforts, it would be difficult for you to pass the exam.”
「なまじ頭がいいと、不利になる」という例文なら、「経験があったとしても、不利になるだろう」と言い換えて英訳します。
- “If you are smart, it will be a disadvantage.”
まとめ
「なまじ」は「中途半端」という意味の言葉で、「無理にしようとするさま」という意味もあり、ネガティブな意味合いの文脈で使われる言葉です。方言ではなく標準語なのですが、若い人には理解されないこともありますので、相手を見て使うようにしましょう。