「大衆」の意味や使い方とは?由来や四字熟語・類語表現も解説

「大衆」の語は「大衆的な…」「大衆〇〇(文学・音楽など)」の表現で目にすることが多い言葉です。「大衆」とはそもそもどのような意味なのでしょうか?

この記事では「大衆」の意味や使い方、由来、そして大衆を含む四字熟語を解説します。あわせて類語の「庶民」「民衆」との意味の違いと、英語表現も紹介します。

「大衆」の意味と由来とは?

「大衆」の意味は”社会の大部分を占める人々”

「大衆」の意味は、“社会の大部分を占める多くの人々”のことです。大衆は文化の担い手であるため、「大衆文学」「大衆音楽」「大衆食堂」など、「大衆」を冠する多くの文化やサービスが浸透しています。

政治学や社会学などにおいては、大衆は特に個性を持たない無名の集団として扱われ、社会の主体的な構成員としての市民とは区別されます。

「大衆」の由来は仏教用語の”大衆(たいしゅ)”

「大衆」の語は、仏教用語の“大衆(たいしゅ)”に由来があります。仏教における「大衆」とは、寺を運営するにあたっての実務を担った衆徒(僧侶)を指します。祈祷や修行などとは別に、寺院の管理や炊事などの世俗的な実務を行う僧侶の呼称です。

「衆徒」は寺の中でも多数を占めたことから、「大衆」の呼び名で示されることが多くありました。

「大衆」の使い方とは?

多くの人に受け入れられ共感を呼ぶ「大衆的」

多くの人に受け入れられ、共感を呼ぶことを「大衆的」と表現します。幅広い層に人気のある女優を大衆的な女優と呼んだり、多くの人が利用しやすい雰囲気と良心的な値段のレストランを大衆的なレストランと呼んだりします。1970年代に登場したファミリーレストランは大衆的なレストランとして人気を得ました。

また、大衆的なワインバーなどと、あえて「大衆的」を冠してPRすることで、多くの人が利用しやすいリーズナブルな店であることを訴える効果もあります。

「大衆」の語が入る四字熟語とその意味とは?

娯楽性に主眼を置いた「大衆文学/大衆小説」

「大衆文学」とは、純粋な芸術性を表現する純文学と区別して、大量消費を前提とした娯楽性に主眼を置いて創作される文学作品のことです。大勢の読者を楽しませるために書かれた作品は大衆文学の他にも、大衆文芸、大衆小説、通俗文学、娯楽小説などと呼ばれます。

大衆文学は純文学に比べて芸術性が乏しく、価値が低いとみなされことがありますが、それらは明確に区別し分類されているわけではありません。一般的に推理小説やSF小説は大衆文学として認識されています。

なお、「大衆文学」は英語では「popular literature」と呼ばれ、「大衆小説」は一般的に「popular novel」や「popular fiction」と呼ばれます。

「popular」にはいろいろな意味がありますが、ここでは「大衆向けの」「平易な」という意味で使われています。大衆音楽は「popular music」です。

庶民的な演劇やその劇団は「大衆演劇」

日本の演劇のジャンルに「大衆演劇」があります。一般的な大衆を観客として、娯楽性に主眼を置いた庶民的な演劇のことを呼びます。一般的には、江戸時代に多く存在した、家族を基本とする旅役者の一団を「大衆演劇」と呼んでいます。

大衆に受けようとする姿勢は「大衆路線」

大衆の要求に基づいて政策を進めようとする共産党の政治方針のことを「大衆路線」と呼んだことが転じて、その後は大衆に受けようとする一般的な姿勢を大衆路線と表現するようになりました。

「大衆路線を狙ったテレビ番組」「高級ブランドが大衆路線に舵を切った」などと用いられます。大衆路線の反対の概念に高級路線があります。

「大衆」の類語と対義語とは?

特別の地位や特権を持たない一般市民「庶民」

「大衆」とよく似た意味の言葉に「庶民」があります。社会の大部分を占める人々である一般大衆を構成する要員として大衆に含まれますが、その定義は大衆とは異なります。

庶民とは、特別の地位や特権、財産を持たない一般の人たちという意味です。またそのような属性を持つとともに、健全な労働者という概念も含まれます。大衆は庶民に比べ、より大枠な「多くの人々」という概念です。

「庶民的な〇〇」と言うときは、特別の地位を持たない健全で一般的な人々が親しみを持てる様子を表します。たとえば、親しみやすい町のありようを「庶民的な下町風情」と表現したり、良心的な価格のお店を「庶民の味方」と言ったりします。

国家に対して被支配階級を指す「民衆」

「民衆」は、社会の大部分を占める人々という意味では「大衆」と共通の意味を持ちますが、特に国家などの支配者に対して、社会を構成する被支配階級の一般的な人々を指すのが「民衆」です。

社会的な存在として一般の人々を取り上げるときは「大衆」ではなく「民衆」を用います。社会革命家が導くのは大衆ではなく民衆であり、社会に反乱を起こすのも民衆です。

「大衆」は指導者や知識人の対義語としても使われる

大衆は、社会の指導者層や知識人に対して、権力や特権、思想などを持たない、庶民や労働者階級を指す概念としても用いられます。指導者や知識人の対義語として用いられるときの「大衆」は、没個性的で無力な存在として、しばしばネガティブに捉えられます。

「大衆」の英語表現とは?

「大衆」は英語で”the masses”や”the general public”

大衆は英語では「the masses」と表現されます。「mass」とは「集団」という意味です。このことから一般大衆の集団をカタカナ語で「マス」と表現することもあります。

なお、「大衆伝達」と訳される「マスコミ」とは「mass communication(マスコミュニケーション)」の略語で、テレビや新聞などのマスメディアを通じて不特定多数の大衆に大量の情報を伝達するという意味です。

大衆は他にも「the general public」とも表現されます。「general」とは「(特殊ではなく)一般的な」という意味です。「public」とは「一般の人々、公衆」という意味です。

まとめ

「大衆」とは、「社会の大部分を占める人々のこと」という意味です。「大衆的なレストラン」などと「大衆的な〇〇」の表現で使わわれるときは、「多くの人に受け入れられ共感を呼ぶもの」という意味で使われます。

「大衆」は「一般大衆」とも呼ばれるように、特別な地位や財産を持たない普通の労働者という概念の「庶民」よりも、より大枠での社会を構成する大部分の人々の集まりを指します。