日本語には読み方が難しい言葉がたくさんありますが、その中の一つに「齟齬」があります。社会人になると会話やメールの中で登場することもある重要な言葉であり、意味と使い方を知ればコミュニケーションの幅を広げることもできます。
今回は「齟齬」について、読み方や意味、使い方を中心に類語と対義語や英語表現を紹介しています。語彙力をアップしたい方はぜひマスターしましょう。
「齟齬」の意味と読み方は?
まずはじめに「齟齬」の読み方と意味から紹介します。
齟齬の意味は「食い違い」
「齟齬」の意味は、「ものごとが上手く行かず噛み合わない」「ものごとに食い違いがある」です。お互いの意見や考えに食い違いが生じた時や意思の疎通ができずお互いに対立している時、また純粋にものごとがうまく進んでいない時などに使われます。
「齟齬」それぞれの漢字の意味
「齟(そ)」の訓読みは「かむ」「くいちがう」で「上下の歯がそれぞれ噛み合わない」「食い違う」「物事がうまく進まない」という意味がありますが、さらに「齬(ご)」の訓読みも「くいちがう」で「お互いに噛み合わない」という意味があります。これらの背景からも「齟齬」の意味も容易に想像できるでしょう。
齟齬の読み方は「そご」
「齟齬」の読み方は「そご」です。「齟齬」は2つの難しい漢字から成る言葉ですが、一つ一つの漢字の意味を見てみると面白いことがわかります。
齟齬の類語とは?
それでは「齟齬」の類義語についてみてみましょう。
類語①「差異」「不一致」など
「ものごとがお互い対立し、主張や考えに調和がないこと」という意義での類語には「差異」「不一致」「ずれ」「不整合」「不統一」「背中合わせ」「仲たがい」などがあります。
- 二人の意見には齟齬がある
- 二人の意見には不一致がある
- 二人の意見には差異がある
類語②「矛盾」「不両立」など
「2つのものごとや意見が相反し、お互い対立すること」の意義での類語では「矛盾」「不両立」「相反」「背馳」などがあります。
- 両者の考えには齟齬がある
- 両者の考えには矛盾がある
似た言葉「相違」との違い
「齟齬」と似た言葉の一つに「相違」があります。同じような意味を持つ「相違」と混同しがちですが、この2つの言葉にはニュアンスや意味の上で違いがあります。
まず「相違」とは「2つのものごとや状況が同じではないこと」「それぞれが一致せず、違いがあること」を意味する言葉であり「ものごとの異なりや違い」を表現する言葉です。
一方「齟齬」は「それぞれが食い違うこと」であり「意見が噛み合っていない」「論点がずれている」というニュアンスがあります。
つまり「相違」は「両者の意見や状況に明らかな違いがある」、「齟齬」は「両者の話がずれて意思が通じていない」という状況を表現しているということになるのです。
「齟齬」を使った例文とビジネスシーンでの注意点
つづいて「齟齬」を使った例文と実際にビジネスシーンで使う時の注意点を紹介しましょう。
齟齬が生まれる(生じる)
あることが原因でそれぞれの意見や主張に食い違いが生じることを意味します。
- 曖昧な会話を繰り返しているうちに、やがて齟齬が生まれる
- お互いの主張をしてばかりでいるから、齟齬が生まれるのだ
齟齬をきたす
お互いに意思や考えに食い違いがあることで、衝突を起こしたり意見が真っ向から対立してしまうことを意味します。
- 報道では両者の主張に齟齬をきたすような発言があった
- 齟齬をきたすことのないように、二人の言い分をあらかじめ聞いておこう
齟齬する
両者の意見がちぐはぐで噛み合わないさまを表しています。
- ニュース番組でコメンテーターの意見が齟齬する
- 指示する党派によって考えは齟齬する
ビジネスシーンで「齟齬」を使う時に注意点
「齟齬」はもともと第三者の視点で公平な立場を尊重して使うことが鉄則です。「齟齬がある」は「食い違いがある」という意味ですが、実は「意見が違うため、あなたも改めてください」という隠れたニュアンスがあります。
つまり両者にある「食い違い」という事実を「あなたも悪いかもしれないので、改めてください」とする「責任転嫁」の意味があるのです。そのためお世話になっている取引先や上司、目上の人に使う時は気を付けるようにしましょう。
「齟齬がある」という言われて相手が憤慨しないように「円滑なビジネスが続けられるよう、不明な点や質問等いつでもお受けいたします」などと平易な表現に言い換えをしたほうが無難かもしれません。
「齟齬」を英語で表現すると?
最後に「齟齬」の英語での表現方法を紹介しましょう。
英語表現は状況によって異なるが「disagree」が一般的
「齟齬」の意味を含む英語表現はいくつかありますが、状況によって異なります。
「意見の対立があったり、考えが異なる」という意味では「disagree」を使うのが一般的ですが、ややストレートで攻撃的な印象を与えることがあります。
英語環境ではものごとの良しあしをはっきり表現する傾向がありますが、それでも多様な国際社会では強い表現を用いるより「やや控えめに」のほうが良い場合もあるでしょう。
話がかみ合わず、論点にズレがある」ということを強調したi時は「taking at cross-purposes」を使うとスムーズに意味が通じます。状況に合わせて使ってみて下さい。
「齟齬」を使った英語例文
- Look at those two people. They are definitely taking at cross-purposes, aren’t they?
あの二人の会話、完ぺきに齟齬が生じているよね?
まとめ
「齟齬」は学生時代や新社会人の世代にとっては馴染みのなく、人よっては聞いたことがない言葉かもしれません。しかし、社会人経験が豊富になり、さまざまな取引先や立場の人と関わりを持つようになると「齟齬があるようです」「齟齬をないようにしましょう」などと会話やメールの中に登場してくるでしょう。
「齟齬」と「相違」の違いは「齟齬」が「意見がちがうはぐで論点が外れていること」に対し「相違」は「二つが異なること」「同じではないこと」です。言い換えをする時は状況を把握して適切な方を選ぶようにして下さい。