日本語の中には難しくて読みづらい漢字がたくさん存在しますが、「哭く」もその一つではないでしょうか?「哭く」は頻繁に目にする言葉ではありませんが、読み方や意味を把握しておけば、自信を持って言葉を使いこなすことができます。
ここでは「哭く」について、読み方と意味、「泣く」との違い、使い方と例文、英語表現について解説させていただきます。
「哭く」の意味や読み方とは?
「哭く」の意味は”大声を高く上げて泣き叫ぶ”
「哭く」の意味は、“大声を高く上げて泣き叫ぶ”です。「哭く」はシクシクと泣く、めそめそする、というニュアンスとはかけ離れ、大声を張り上げておたけびのように泣きわめくという意味で使われます。そのため「哭く」人をはたからみると、「一体、何があったのだろう」と思うのが通常の印象でしょう。
また、「哭く」には「人が亡くなった時に、死を悲しんで泣き叫ぶ儀式」のことを意味することがあります。つまり、深い悲しみを伴い、つらい気持ちを吐き出すように、声を上げて激しく泣くことを総称して「哭く」という言葉で表します。
「哭く」の読みは”なく”
「哭く」の読み方は“なく”です。上に「口」二つ、下に「犬」という漢字が入ります。音読みでは「コク」となり、「慟哭(どうこく)」「痛哭(つうこく)」などのように使います。
「哭く」の使い方と例文とは?
「哭く」は”我を忘れた尋常ではない泣き方”を表す
「哭く」は日常生活で使うのはごく稀かもしれません。しかし、「哭く」は「我を忘れたように、尋常ではない泣き方をする」時に使うと、言葉が持つ威力を発揮することができます。「哭く」はごく単純に涙を流して泣いているのではなく、何かこらえきれない事情があって、声をあげて泣き崩れるようなシーンで使いましょう。
「哭く」は人以外の”大きな音・鋭く耳につく音”に対しても使われる
「哭く」は人に対してのみ使われるのではなく、激しい風や雨、うねりを上げるような荒波などの「鋭く耳に着くような大きな音」に対しても使う場合があります。
- 今朝上陸した台風は、昼を過ぎても激しい風を伴い大きく哭いている。
- うねりを上げた海は、まるで耳をつくように哭き続けている。
「哭く」を使った例文
「哭く」を使った例文をご紹介しましょう。
- 私たちは突然の火事で家を失い、崩れ落ちるように哭いた。
- 予期せぬ途方に、家族はひとしきり哭いた。
- 哭き続ける突風に加え、河川が氾濫し始めた。
「哭く」と「泣く」「鳴く」「啼く」の違いとは?
「哭く」は大声で泣き叫ぶこと、「泣く」は悲しみのニュアンスを伴う
「哭く」とは”大声を上げて泣き叫ぶ”ことを意味しますが、「泣く」は悲しみや辛いことに直面した時、また感動して感情が込み上げた時などに「涙を流すこと」「涙が出ること」を意味する言葉です。
また、状況によっては「辛い思いをすること」を指すこともあります。以下で「哭く」と「泣く」を使った例文を挙げてみましょう。
<泣くを使った例文>
- 娘が書いたポエムに感動して泣いてしまった。
- 予想もしなかった結果に、くしくも泣いた。
- 道端で迷子になった子供が泣いていた。
このように「哭く」と「泣く」では、感情や泣き方の激しさの度合いが大きく異なります。違いを理解して、使い分けに気をつけましょう。
「鳴く」「啼く」は鳥などが声を出す様子
「なく」には「哭く」「泣く」の他、「鳴く」「啼く」という漢字表記があります。「なく」は同じ読み方で、同じような意味合いを持つ感じが4つあるため、それぞれの意味と使い方を習得しておく必要があります。
「鳴く」は「鳥獣や虫類が声を出すこと」、また「啼く」も「鳥や獣などの生物が声を出すこと」を意味します。「鳴く」も「啼く」もほぼ同じような意味を持ちますが、一般的には「鳴く」の方が好んで使われる漢字となります。
どちらかと言えば「啼く」は詩や俳句など、文章にある程度の風格や独特のニュアンスを加えたい時に使われる傾向があります。
「哭く」の英語表現とは?
「哭く」は英語で”bawl one’s eyes out”
「哭く」を英語で表現するなら「bawl one’s eyes out」が最も適切な表現でしょう。英語圏で激しく泣き叫ぶ時に頻繁に使われる熟語表現となります。「bawl」にはもtもと「大声でわめく」「叫びちらす」というような意味があり、「目が落ちてしまうほど、激しく泣き叫ぶ」というニュアンスで使われます。
その他「cry out」も「泣き叫ぶ」という意味がありますが、やはり「bawl my eyes out」の方が口語的で一般に見聞きするフレーズとなるので、ぜひ覚えておきましょう。
「哭く」を使った英語例文
「哭く」を使った英語例文をご紹介しましょう。
- That little girl was bawling her eyes out for getting attention from her mum.
小さな女の子がお母さんの気を懸命に引こうと、激しく哭いていた - Stop bawling your eyes out , otherwise you would ended up losing your voice.
哭くのはやめなさい。さもないと、声が出なくなりますよ。
まとめ
「哭く」は読み方はもちろん、意味や使い方などを含め、社会人としては知っておきたい言葉の一つです。ビジネスではあまり登場しないかもしれませんが、ビジネスを通して日常的な会話に発展した時に、「哭く」への知識があるのとないのでは、相手に与える印象が異なってくるかもしれません。
あらためて「哭く」とは「声を高く上げて泣き叫ぶ」、「泣く」は「つらい思いをする」「涙を流す」です。違いを理解して、正しく使い分けをしていきましょう。