「清水の舞台から飛び降りる」とは、江戸時代の民間信仰を起源としたことわざですが、現代のビジネス系の記事などでも意外に多用されている表現です。民間信仰とビジネスの接点はどこにあるのでしょうか?
この記事では、「清水の舞台から飛び降りる」の意味や語源を解説します。あわせて使い方・例文や類語、英語表現も紹介しています。
「清水の舞台から飛び降りる」とは?
「清水の舞台から飛び降りる」の意味は”思い切って大きな決断をする”
「清水の舞台から飛び降りる」の意味は、“思い切って大きな決断をする”ことです。
舞台から飛び降りるという視覚的に訴えかけるたとえがわかりやすいためか、ビジネス系の記事などでもしばしば用いられます。「清水の舞台から飛び降りる覚悟で決断を下す」などと用いられます。
語源・由来は「京都の清水寺の舞台」から願をけて飛び降りる信仰
「清水の舞台から飛び降りる」の”清水”とは、京都の東山区にある音羽山清水寺のことです。清水寺の本堂の前面には、崖にせり出すように造られた高さ13メートルの舞台があり、「清水の舞台」とはそれを指しています。
清水寺のご本尊は「十一面千手観世音菩薩」で、人々を苦難から救うとされ、篤く信仰されています。清水の舞台は、ご本尊である観音様に、雅楽や能などの芸能を演じて奉納する場所として古くから親しまれてきました。
いつの頃からか、観音様に願をかけて清水の舞台から飛び降り無事であれば、願いが叶うという民間信仰が生まれました。実際に無病息災などを願い、舞台から飛び降りる人が続出したとの江戸時代の記録もあります。
13メートルもの高さの舞台から飛び降りることは、相当な覚悟を持たなければできないことであるため、転じて、思い切って大きな決断をすることを「清水の舞台から飛び降りる」と表現するようになったのです。
「清水の舞台」の読み方は”きよみずのぶたい”
「清水の舞台から飛び降りる」の”清水”は「きよみず」と読みます。「しみず」と読まないように気をつけましょう。京都の「清水寺(きよみずでら)」が由来となったことわざであるためです。
「清水の舞台から飛び降りる」の使い方と例文とは?
高額な買い物をするときによく使われる
一般的な場面では、思い切って高額な買い物をする時に、「清水の舞台から飛び降りる」を心情のたとえとして用いることが多いようです。
「清水の舞台から飛び降りるつもりでマンション購入を決意した」などと、日常的な買い物とは違う特別な買い物に踏み切ったときに用います。
大きな覚悟を持って決断する時の使い方
「清水の舞台から飛び降りる」は、大きな覚悟を持って決断する時や、成功する確証がなくとも、いちかばちかといったような切羽詰まった気持ちで何かを決断する心情を表す時などに使われます。
「清水の舞台から飛び降りる覚悟で重要な決断をした」「清水の舞台から飛び降りる覚悟が迫られる決断だった」などのように用います。
度胸や勇気を持って事にあたるときの心情を表す使い方
決断することの他にも、大きな覚悟や勇気を持って事にあたるときの心情を表す時に「清水の舞台から飛び降りる」を使うことがあります。
「清水の舞台から飛び降りるような度胸や勇気が必要だ」などの使い方です。
「清水の舞台から飛び降りる」の類語とは?
類語①「運を天に任せる」の意味は”思い切った行動に出る”
類語「運を天に任せる」は、”成り行きに任せる”という意味で使われることが多いですが、思い切った行動に出るという意味もあります。
「運を天に任せて彼女に告白した」は、「清水の舞台から飛び降りる気持ちで彼女に告白した」とも同じような、勢いに任せて思い切って行動したといったニュアンスがあります。
類語②「背水の陣」の意味は”必死の覚悟で事にあたる”
類語「背水の陣(はいすいのじん)」とは、あとに引けない切羽詰まった状況において、”必死の覚悟で事にあたる”ことを表します。漢の名将が、わざと川を背にして退却できない覚悟で戦い、敵を破ったとの故事が由来です。
「背水の陣で挑む」などと用いられ、「清水の舞台から飛び降りる覚悟で挑む」とも同じ意味を持ちます。
「清水の舞台から飛び降りる」の英語表現とは?
「重大な決意をする」という意味の”cross the Rubicon”
古代ローマ時代の軍人カエサルが、「賽は投げられた」との言葉とともにルビコン川を渡ったことにちなむ「cross ( pass) the Rubicon」(直訳:ルビコン川を渡る)は、「清水の舞台から飛び降りる」のように行動をたとえに用いた「重大な決意をする」という意味のことわざです。
ルビコン川を渡ることによって賽は投げられた、つまり事はすでに始まり後戻りできないのだから、もはや断行するしかない、重大な決意をする、という意味で使われます。
「He crossed the Rubicon to start his own business.」
(彼は独立して商売をすることを決めた。)
他にも「one’s Rubicon」と書いて「重要な決断」という意味の表現もあります。
まとめ
「清水の舞台から飛び降りる」とは、清水寺のご本尊である観音様に願をかけて飛び降りるという江戸時代に流行した民間信仰をもとに成立したことわざです。
実際に飛び降りて亡くなる人も後を絶たないため、明治時代に飛び降りは禁止されましたが、ことわざはその後も生き続け、現代においても「思い切って大きな決断をする」ことのたとえとして使われています。
日常的なものごとから離れて、心が動く大きな決断をするような時の心情を表すには、非日常的な情景が浮かぶ比喩的な表現がぴったりするということかもしれません。