「腹に据えかねる」の意味や由来とは?使い方・例文と類語も紹介

「腹に据えかねる」とは、怒りの感情をおさえてきたが、これ以上は我慢できないという気持ちを伝える慣用句です。使ったことがない人でも、一度はどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか。

この記事では、「腹に据えかねる」を使いこなせるよう、その意味や由来と、使い方・例文を紹介します。あわせて類語・対義語と英語表現も解説しています。

「腹に据えかねる」の意味とは?

「腹に据えかねる」の意味は「怒りを我慢しきれない」

「腹に据えかねる(はらにすえかねる)」とは、「怒りをおさめる範囲を超え、心中の怒りを我慢しきれない」という意味です。「彼の乱暴な言動は腹に据えかねる」などと用います。我慢ができずにイライラしている気持ちや、これ以上は我慢できないほどの怒りを感じる、我慢できる範囲を超えるほどひどい、といった心情を表します。

「据えかねる」とは「我慢しかねる」という意味

「腹に据えかねる」の「据えかねる」とは、「我慢しかねる」という意味です。「据える」とは、しっかり置く、落ち着けるという意味があります。ここでは我慢という感情を置きかねるという意味で使われています。

「…しかねる」という表現は、否定の意思を直接的に伝えるのではなく、婉曲的な断りの表現であるため、我慢できないところだが、ぐっとこらえている、という気持ちを含んで用いられます。

なお、「据えかねる」の表現は、「腹に据えかねる」の慣用句として使われることがほとんどです。

「腹に据えかねる」の由来

語源・由来は「腹」に心があるとする古代の考え方

「腹に据えかねる」の慣用句の語源や由来は、出典や逸話からではなく、古代の人々の考え方にあります。

「腹」とは、人間の体でへそ・胃腸のある部分を指しますが、古代の日本では、腹に心や感情があると考えられていたため、腹を用いた感情を表現する慣用句が多く作られました。

例えば、腹を割る(本心を打ち明ける)、腹に一物(心の中で何かをたくらむ)、腹の虫がおさまらない(怒りがこみ上げてくる)などの「腹」を使う慣用句が古くから用いられてきました。

「肝に据えかねる」は「腹に据えかねる」の誤った表現

「腹に据えかねる」「腹をくくる」などの「腹」を使う慣用表現は、「肝(きも)」を使う表現と混同されることがあります。「肝 」とは医学的には「かん」と呼ばれる臓器で、胃の上にあります。肝も腹と同じく、心があると考えられていた場所です。例えば「肝が据わる」とは、度胸があり、動揺しないことを表します。「腹が据わる」も同じ意味です。

「腹」と「肝」は似ているため、「腹に据えかねる」を「肝に据えかねる」としたり、「腹をくくる」を「肝をくくる」とすることがしばしば起こりますが、これらは誤りです。

「腹に据えかねる」の使い方と例文

怒りをおさえきれない気持ちに使う

「腹に据えかねる」は、我慢する限界や許容値を超えた出来事が起こったときに、怒りをおさえることができないほどの気持ちだということを一言で表現することができます。次の例文のような使い方です。

  • 彼の不遜で傲慢なふるまいは、腹に据えかねる思いだった
  • 彼女の激しい批判の言葉から察するに、相当腹に据えかねるものがあったようだ
  • 謝罪こそしたものの、腹に据えかねる状態であったことは間違いないだろう
  • 理不尽な通告を、腹に据えかねる思いで受け入れた

「腹に据えかねる」の類語と対義語とは?

「強烈な怒りがこみ上げる」という意味の類語「はらわたが煮えくり返る」

「はらわた(腸)が煮えくり返る」とは、強烈な怒りがこみ上げる、腹が立って怒りをこらえられないという意味の慣用句です。

怒りをこらえることができないという意味では「腹に据えかねる」と同じですが、「はらわたが煮えくり返る」の方が怒りの感情を隠さずに直接的に表明している違いがあります。

「心底から激しく怒る」という意味の類語「怒り心頭に発する」

「怒り心頭に発する(いかりしんとうにはっする)」とは、心の底から激しく怒るという意味の慣用句です。「心頭」とは「心の中」という意味です。怒りが心頭(心の中)より発した、ということになります。「怒り心頭」のみでも用いられます。

「はらわたが煮えくり返る」と同じく、「腹に据えかねる」と比べて直接的な怒りの表現です。

なお、「怒り心頭に達する」という誤った使い方をする人が多いという調査結果があるので注意が必要です。

「怒りが爆発する」という意味の類語「堪忍袋の緒が切れる」

「堪忍袋の緒が切れる(かんにんぶくろのおがきれる)」とは、我慢の許容量を超えて怒りが爆発することをたとえた慣用句です。「堪忍」とは、怒らず我慢するという意味です。その我慢の袋がふくらみ、しばった紐(緒)が切れることから、怒りが爆発するという意味を伝えています。

「腹に据えかねる」状態がさらに悪化すると、「堪忍袋の緒が切れる」ということになります。

「我慢してこらえる」という意味の対義語「腹を据える」

「腹に据えかねる(怒りを我慢できない)」とは反対の「怒りを我慢してこらえる」という意味の対義語に「腹に据える」という表現があります。「なんとか腹を据えて結果を受け入れた」などと心中にある怒りを我慢してこらえる心情を表現します。

また、「腹を据える」には「覚悟を決める(腹をくくる)」という意味もありますが、「腹に据えかねる」には「覚悟を決めかねる」という意味はないため、この意味においては対義語となはりません。

「腹に据えかねる」の英語表現は?

「腹に据えかねる」の英語表現は「can’t stomach」

英語の名詞「stomach」は「腹(胃)」の意味ですが、動詞になると「~に耐える、~を我慢する」という意味を持ちます。「can’t stomach」は「耐えられない」という意味となり、「腹に据えかねる」に近い意味があります。

「彼の傲慢さは腹に据えかねる」は、「I can’t stomach his arrogance.」と表現できます。他には「I can’t put up with his arrogance.」という表現もできます。

まとめ

「腹に据えかねる」とは、「怒りを我慢しきれない」という意味の比喩的な慣用表現です。古代の人々は、「腹」に心や感情が宿っていると考えていたため、怒りもまた腹にたまると考えました。怒りの蓄積が許容量を超えたときに、これ以上は我慢できない、という意味で「腹に据えかねる」を用いました。

「腹の虫がおさまらない」や「腹に一物」などの慣用句からも、怒りやたくらみなどのネガティブな感情が腹には収まっているようです。また、「腹を割って話す」とは、普段は隠している感情をさらけ出して話し合うという意味ですから、「腹に据えかねた」時は、腹を割って話すのがよいかもしれません。