「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」の意味と由来とは?類語も紹介

「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」ということわざは、聞いたことはあるけれど使ったことはないという人が多いかもしれません。詩的な比喩表現のため、意味がいまひとつわかりにくいのではないでしょうか。

この記事では、「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」の意味や由来を解説し、使い方と例文も紹介します。あわせて類語や英語表現も紹介しています。

「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」の意味とは?

意味は「捨て身の覚悟があってこそ成就できる」ということ

「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ(みをすててこそうかぶせもあれ)」とは、「捨て身の覚悟で取り組んでこそ物事を成就できる」「身を捨ててかかれば成らぬことはない」という意味の格言的なことわざです。

「捨て身の覚悟でやれば成功する」との主旨でピンチの状況にある人などを励ましたり、苦境に陥ったときの自分を奮い立たせる言葉として用います。

「身を捨てて」とは「捨て身の覚悟で」、「浮かぶ瀬」とは「浅瀬に立つ」という意があります。また、「浮かぶ瀬もあれ」の「あれ」は「あればこそ」の活用形です。そのようにあれ、というような命令形ではありません。

由来・原文は江戸時代の仮名草子との説

語源・出典は諸説ありますが、江戸時代の仮名草子(江戸時代にかなを交えて書かれた文学や散文の総称)に次の句があったことがわかっています。

ものゝふのやたけ心のひとすじに身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ
(意味:武士が勇猛心をひとすじに奮い立て、身を捨ててかかれば成らぬことはない)

また、溺れかけたときは、もがけばもがくほど深みにはまってしまうが、捨て身になって水の流れに身を任せれば、浅瀬に自然とたどり着いて立つことができる、という経験則から生まれたことわざだとの説もあります。

「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」の使い方と例文

実践的精神としての使い方と例文

「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」は、実践的精神として相手や自分を鼓舞する時に使います。次のような例文です。

  • 身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれと言うから、あきらめずに頑張ろう
  • 身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、政治家には捨て身の覚悟で頑張ってもらいたい
  • あえて言うが、身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、自分を犠牲にする覚悟で挑んでほしい

「身を捨ててこそ立つ瀬もあれ」は誤り

「瀬」という語を使う「立つ瀬」という表現があります。「立つ瀬」とは「立場」という意味で、「立つ瀬がない(立場がない)」の慣用句で用いられます。

「瀬」といえば「立つ瀬」の印象が強いためか、「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」を「身を捨ててこそ立つ瀬もあれ」としてしまうことがあるようですが、これは誤りです。

「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」の類語とは?

「捨て身で勝つ」という意味の「肉を切らせて骨を切る」

「肉を切らせて骨を切る」または「肉を切らせて骨を断つ」とは、自分自身も痛手を受ける覚悟の上で、相手にそれ以上の打撃を与えるという、「捨て身で勝つ」という意味のことわざです。

「肉を切らせて骨を切る覚悟で交渉に臨む」などと、ビジネスの場でも捨て身で勝つ覚悟であるときにたとえの表現として使います。

「身を捨ててかかれば成らぬことはない」という意味の「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」とはその精神性が共通しています。

「絶望的な状況から打開策を求める」という意味の「死中に活を求める」

「死中に活を求める(しちゅうにかつをもとめる)」とは、ほとんど助かる見込みがなく、死を迎えるような絶望的な状況から、なんとか生きる道を見い出そうとするという意味です。「死中」とは死を待つ絶望的な状況という意味で、「活」とは生きるという意味です。

転じて、窮地に陥ったとき、あえて危険な道を選択して打開策を探るという意味でも比喩的に用いられます。

自身に危険が及ぶ状況から生き延び、勝利を収めるという意味では「身を捨ててこそ立つ瀬もあれ」と似た意味があります。しかし「死中」はすでに絶望的な状況が広がっているのに対し、「身を捨ててこそ」は能動的にあえて捨て身の覚悟で臨むという部分が違います。

「死中に活を求めて、あきらめずに戦い抜いた」などと用います。

「危険を避けては大きな成功もない」という意味の「虎穴に入らずんば虎子を得ず」

「虎穴に入らずんば虎子を得ず(こけつにいらずんばこじをえず)」とは、危険を避けていては、大きな成功はない、という意味を例えたことわざです。虎の子を捕らえるためには、危険を冒して洞穴に入らねばならない、との言葉がある中国の故事が語源です。

犠牲を払って成功を手にするという意味で、「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」とも同じ意味を持つ格言です。

「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」の英語表現とは?

危険を冒してこそ成功が得られる「Nothing venture, nothing gain.」

「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」とは「捨て身の覚悟があってこそ物事が成就できる」という意味の格言的なことわざです。

その意味に相当する英語表現で、ビジネスの場でもよく用いられる英語の格言に「Nothing venture, nothing gain.」もしくは「Nothing ventured, nothing gained.」があります。

ventureは「思い切って~する」「(大切なもの)を危険にさらす」という意味で、gainは「(欲しい・必要なもの)を獲得する 勝ち取る」という意味です。

状況がおもわしくない時などに、身を犠牲にするだけの覚悟があれば、成らぬことはない、といった意味で成功哲学として語られることもあります。「虎穴に入らずんば虎子を得ず」にも相当する英語表現です。

まとめ

「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」とは、「自分の命を捨てる覚悟で物事に取り組めば(身を捨ててこそ」)、「自然と活路が開かれ(浮かぶ瀬もあれ)」、成功する道ができるという意味のことわざです。

水におぼれかかったときは、じたばたせずに身を任せていれば、自然と浅瀬に立つことができるとの意から、捨て身で頑張れば成功する、あるいは運を天に任せて身を委ねれば活路が開ける、などの意味を持って相手や自分を励ます時に用いられます。

また、保身に走り地位などに固執する人に対して、心機一転やりなおしたらどうか、といった提案を遠まわしに伝えるときにも用いられることがあります。