「焦燥感」は、「焦燥感に駆られる」や「焦燥感に襲われる」などの言い回しでよく使われ、焦るような気持ちやせきたてられるような気持ちを表す言葉です。今回は「焦燥感」について、一般的な意味や使い方・例文を解説します。あわせて類語と英語表現も紹介しています。
「焦燥感」の意味と読み方とは?
「焦燥感」の意味は”思い通りにならず焦る気持ち”
「焦燥感」の意味は、“目的が実現せずに気が焦る気持ち・思い通りにならず苛々する気持ち”です。「焦燥」もほぼ同じ意味ですが、「焦燥」に「感」を付けることで、「焦る気持ちを感じている」という心の状況を一言で表すことができます。
「焦燥感」の読み方は”しょうそうかん”
「焦燥感」の読み方は“しょうそうかん”です。焦燥と同じ読み方で、古くは「焦躁」とも書きましたが、現在は「焦燥」が一般的です。
「焦」「燥」とも苛々する気持ちを意味する
「焦(あせ・る)」とは、思うようにいかないことなどで心が苛々するという意味を持ちます。「焦(こが・す)」と読む場合は、焼いてこげた状態にするという意味に加えて心を苦しめ、悩ますという意味も持ちます。
「燥」には、「苛立つ」という意味があります。このように「焦燥」には、「焦」の字が持つ、「焦げるほど心を悩ます、苛々する」という気持ちと、「燥」が持つ「苛立つ」という意味が重ねて使われており、思い通りにならない強い不快感を表わす言葉となっています。
「焦燥感」の使い方と例文とは?
強い焦りの気持ちを表す「焦燥感に駆られる」
「焦燥感」は、焦ったり苛々したりする気持ちが強いときに用いられる言葉です。そのため、「焦燥感に駆られる(しょうそうかんにかられる)」という言い回しで使われることが多いです。「駆られる」とは、理屈抜きの強い衝動や、激しい感情に動かされるという意味です。
「焦燥感に駆られ、夜も眠れない」「このままではいけないと焦燥感に駆られる毎日だ」などと用いられます。「焦燥感が募る」「焦燥感が迫る」などの表現より切迫した気持ちを表します。
違う根拠からくる「焦燥感」の使い分け
「焦燥感」は先に説明したとおり、目的が実現せず、思い通りにならないことに対して苛々する気持ちを表す言葉ですが、その心理の根底には不安が存在することがあります。
明確な目的がありながらも、それが外的な要因などにより、思う通りに達成できない時などに苛々する気持ちとは別に、合理的な理由が思い当たらないのに、意味もなく激しい焦燥感に駆られる時があります。後者の場合は強い不安感が伴うことが特徴です。
不安から生じる焦燥感と、思い通りにならないために苛々する気持ちの焦燥感は、別のものととらえる必要があります。
AとBの例文は、違う根拠からくる焦りの気持ちを表しています。根拠なく過剰な焦燥感や不安を感じる時は、精神科の病気が疑われることもあります。心配がある場合は、専門医に相談してみましょう。
「焦燥感」の類語と言い換え方とは?
思い悩み焦るという意味の類語「焦心」
「焦燥」と同じ意味を持つ言葉に「焦心(しょうしん)」があります。心が苛立つこと、思い悩み焦る気持ちを表します。焦燥と同じ意味合いも含まれますが、「思い悩む」気持ちを強く伝えたい時は「焦心」を用いるのが適切です。
「根拠のない非難の声に焦心する」「成績不振に焦心する」などと用いられます。
「焦燥感」の言い換え方は苛”々が募る”
「焦燥感」は”苛々が募る”と言い換えることもできます。募るとは、ますます激しくなるという意味で、心が落ち着かない状態がますます激しくなることを表します。
「予定通りにならないことに焦燥感が募った」は「予定通りにならないことに苛々が募った」とも表現できます。
「焦燥感」の英語表現とは?
「焦燥感」は英語で”frustration”や”fretfulness”
「焦燥感」を表す英語の形容詞には“frustration”があります。カタカナ語「フラストレーション」の語源となった英語です。焦りの気持ちよりも、思い通りにいかずに苛々する気持ちの意味が強い言葉です。
不安から生ずる焦りも含めた焦燥感を表す英語には“fretfulness”があります。「不機嫌」という意味合いもあり、動詞では「fret」となります。
強い焦燥感を表す「彼は焦燥感に駆られていた」に近い表現には、「He was fretting with impatience.」があります。「impatience」は我慢できないこと、苛立ちという意味です。
まとめ
「焦燥感」とは、「思い通りにならず焦る気持ち」という意味です。目的が達成できなかったり、望む方向に事態が進まないことなどに苛々を募らせる気持ちを表します。「問題が解決されないことに焦燥感が募る」「事業の不振に歯止めがかからず焦燥感に駆られる」などと使われます。
焦る気持ちを表す意味で使われるとともに、うつ病などの精神疾患の症状として「焦燥感」が現れることが指摘されています。その場合の焦燥感は、合理的な根拠がないのに切迫した気持ちに駆られる症状を表わしているため、一般的な意味での焦燥感とは異なります。
・A:死ぬのではないかという焦燥感に襲われ、夜も眠れない
・B:地球温暖化が加速してゆくことに焦燥感が募る