始末書の提出を求められたものの、どのように書けばわからないという方も多いのではないでしょうか。今回は「始末書」の必要性と併せて、基本的な構成と書くべき事柄を解説します。また、ビジネス上でトラブルになりやすい紛失、事故、遅刻の3つの状況に合わせた始末書のテンプレートと書くときのポイントを紹介します。
「始末書」はなぜ必要なのか?
「始末書」とはトラブルの報告と反省・謝罪をするために必要な書類
「始末書」とは、“トラブルが起きたときに、その事実の報告と反省や謝罪をするための書類”です。起こったトラブルを客観的に記述し、トラブルが起こったことに対する反省や謝罪を簡潔にまとめます。
「始末書」の目的は、同じトラブルが起きないようにするための再発防止です。
「始末書」の基本構成と記載すべき事柄
始末書の基本的な構成は、次の通りです。
- トラブルの事実とその理由
- トラブルを起こした反省または謝罪
- 再発を防ぐための対策
- 意思表明
起ったトラブルを明確化して、それに対する反省や謝罪を述べた後、再発を防ぐための対策を書き、今後は同じことが繰り返されないように注意するといった意思を表明します。
始末書を書くときは、事実を正直に、そして端的にわかりやすく書くことが大切です。
「始末書」を書くときの注意点
始末書は上司の指示があった場合に書く書類で、勝手な判断で書きません。また宛名は特に指定がなければ、会社社長宛てに書かれます。
指定の用紙があればその用紙を使いますが、特にない場合は、便箋1枚に手書きで縦書きをするのが正式な始末書だとされています。しかし最近ではA4またはB5サイズの白い用紙1枚にパソコン等を使って横書きでまとめることも増えてきました。どちらの形式にするかは自分で判断するのではなく、会社の慣例に従います。
また始末書の最後には、自著と捺印も忘れないようにしましょう。
「始末書」と「顛末書」の違い
始末書に似た書類に「顛末書」がありますが、「顛末書」とは、トラブルの詳細をまとめた文書です。「始末書」との違いは、「顛末書」にはトラブルの事実や起こった理由を客観的にまとめた書類であり、始末書のように反省や謝罪の意思を示さないことです。
ただし、会社によっては「顛末書」と「始末書」の区別がされず、「顛末書」に始末書のような形式を求めてくるケースもあります。そのため、「顛末書」を提出する場合は、どのような構成で作成するべきかを過去の事例を合わせて確認する必要があるでしょう。
「始末書」のテンプレートと書き方【紛失編】
紛失の始末書の書き方ポイント
物を紛失したときに提出する始末書では、今後は自己管理ができるのかが問われます。紛失したことの事実の説明や反省の言葉ととともに、同じミスを繰り返さないという決意も書き添えるといいでしょう。
何かを紛失したときの始末書テンプレート
ここでは、社員証を失くしたときの始末書のテンプレートを紹介します。
〇〇年〇月〇日
代表取締役 〇〇様
始末書
この度は、社員証を紛失してしまい、誠に申し訳ありませんでした。
令和元年2月3日の午前9時ごろ、自社に到着して社員証がないことに気が付きました。すぐに総務部に連絡し、仮社員証を発行していただきました。
社員証の取り扱いには注意をしていたつもりでしたが、このような事態を引き起こしたことに深く反省しています。今後は社員証は鞄の決まったポケットに入れることを心がけ、確認を怠らないようにする所存です。
重ねてお詫び申し上げるとともに、二度と同じ不始末が繰り返されないことを誓います。
以上
営業1課 山田 太郎 印
「始末書」のテンプレートと書き方【事故編】
事故の始末書の書き方ポイント
勤務中に発生した事故に関する始末書は、事故状況の説明と謝罪や反省を述べ、再発防止を誓う書類です。
事故状況の説明は誰が、何を、どのようにしてなどの5W1Hを明確にして説明することに加えて、会社への損失、社内規定の違反の有無など、会社に与えたダメージについても記します。
事故の始末書のテンプレート
ここでは社用車で事故を起こしたときの始末書のテンプレートを紹介します。
〇〇年〇月〇日
代表取締役 〇〇様
始末書
私は、令和元年5月14日の午後3時ごろ、東京都世田谷区の世田谷区役所付近で、社用車による交通事故を起こしました。ここにご報告するとともに、会社並びに関係者に大変なご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。
当日は、A商事に納品を済ませて自社に戻る途中、私の不注意からわき道から侵入してきたタクシーに接触しました。
この事故により社用車の前方にかすり傷ができ、総務部に修理をお願いしています。また相手方とは、保険会社により折衝が済み示談が成立しています。
今後は私の不注意による事故を起こさないように気を引き締めて、安全運転を徹底することを誓約いたします。
この度はご迷惑をおかけしたことを、心より謝罪します。
以上
営業部 山田太郎 印
「始末書」のテンプレートと書き方【遅刻編】
遅刻の始末書の書き方ポイント
遅刻が理由で始末書の提出が求められる場合とは、遅刻が度重なり業務に支障が出た場合や重要な会議に遅れた場合などです。始末書の提出により、遅刻をしたことの反省と、今後は遅刻をしないように自己管理を促すことが求められています。
始末書には、遅刻の事実と理由のほかに、今後はどのような対策で遅刻をなくすのかを書きましょう。
遅刻したときの始末書のテンプレート
ここでは度重なる遅刻についての始末書のテンプレートを紹介します。
〇〇年〇月〇日
代表取締役 〇〇様
始末書
私は、昨年度から何度も遅刻をしてしまい、業務に支障をきたしたことを心より謝罪いたします。関係者に迷惑をかけただけでなく、お客様の信頼を失わせてしまったことを、謹んでお詫び申し上げます。
兼ねてより通勤電車とバスの遅延が多いことがわかっていながら、特に対策を立てないまま今日に至りました。今後は出勤時間を早めて余裕を持った通勤を考えております。
二度とこのようなことがないように自己管理に努めて、信頼回復のために日々一層の業務に専心いたします。
以上
営業部 山田太郎 印
「パワハラ・社外向け」の始末書の作成ポイントとは?
「パワハラ」の始末書では事実を認めて反省の意を表することが大事
「パワハラ」が起因して提出する始末書を書くときのポイントは、3つあります。
- パワハラの事実を認めること。
- 謝罪・反省の気持ちを伝えること。
- 二度としないことを誓うこと。
パワハラの事実を記載するときに、「嫌がらせ」などと言葉を濁さず、はっきりと誰に何をしたのかを説明して、その行為がパワハラであったことを認めることです。そして、パワハラをしたことを反省していること、最後にパワハラを繰り返さないことを誓います。
社外向けの始末書は特例文書
始末書は一般的には社内向けに書かれて提出するものですが、トラブルが他社を巻き込んだもので、他社から始末書を提出するように求められた場合に社外向けの始末書を書くことがあります。
社外向けの始末書では、トラブルの詳細の報告はもちろんですが、反省や謝罪の意を明確に表すことも大切です。トラブルの報告は情報の共有化する役割があり、反省や謝罪には他社からの信頼回復を目的としています。
トラブルを客観的に記載し、相手への誠意を見せる文書としてまとめましょう。
まとめ
「始末書」はトラブルがあった時にその事実を記載し、反省もしくは謝罪をして、二度と同じ問題を起こさないように今後の教訓とするための書類です。読み手にわかりやすいように簡潔でありながら、反省や謝罪の気持ちもしっかりと伝えるような文書を作りましょう。