「まずはお礼まで」とは?使い方や敬語・ビジネス例文や返信も

ビジネスメールやはがきなどで、「まずはお礼まで」という表現をよく目にします。何気なく使うことも多い慣用句ですが、どのような意味や目的で使われているのでしょうか?

この記事では、「まずはお礼まで」の意味や使い方・例文を紹介します。あわせて「まずはお礼まで」と書かれたはがきなどを受け取った際の返信をどうしたらよいのかや、同じ意味の英語表現があるのかについても紹介しています。

「まずはお礼まで」とは?

「まずはお礼まで」の意味は”取り急ぎのお礼”

「まずはお礼まで」の意味は、“取り急ぎのお礼”のことです。本来は直接に出向くべきところを、すぐにお礼を伝えたいため、とりいそぎ手紙やはがきでお礼の一報をお送りします、という意味の気持ちが込められています。

「まずは」とは、「ひとまず」の「まず」を強めた言い方で、ここでは十分な対処は後回しにして、暫定的な対応として「取るべきものも取らずに」という意味で使われています。本来は「まずはお礼まで」と書いたはがきなどを出したあとには、相手先に出向き、正式なお礼を直接述べることがマナーです。

しかし近年は、手紙やはがきのみでお礼を済ませることがマナー違反であるという考え方は薄くなってきており、加えてインターネットメールやSNSで挨拶を済ませることも珍しくありません。そのため、正式にお礼に伺う予定ですが、その前に「まずはお礼まで」と書く締めの挨拶文は、形式的に行われているものだと言えます。

「まずはお礼まで」とは手紙・はがき・メールの「締めの言葉」

「まずはお礼まで」とは、お礼の気持ちを伝える手紙やはがき、メールなどで「締めの言葉」として用いる表現です。本文でお礼を述べたあと、手紙を締めくくる形で使います。

「まずはお礼まで」の使い方と例文とは?

「まずはお礼まで」は取引先のビジネスメールや目上の人にも使える

「まずはお礼まで」の締めの言葉は、目上の人やビジネスの取引先などに対しても使える表現です。先に説明したとおり、取るべきものも取らずにお礼の気持ちを伝えています、という前提で使用している表現のため、あえて短い言葉を使ってその気持ちを伝えるという意味合いもあるからです。

逆に、冗長な表現や丁寧な表現が続くと、取るべきものも取り合えず急いで送りました、という気持ちと矛盾することになります。

「まずはお礼まで」の敬語は”まずはお礼申し上げます”

取り急ぎのお礼の手紙は、要点を簡潔に短く伝えることが手紙のマナーであるという前提にのっとった表現が「まずはお礼まで」という略した言い方です。しかし近年は、そのような古くからの手紙のマナーを知らない人も多いため、略された表現が失礼なのではないかと感じる人も多いようです。

不安を感じる場合は、「まずはお礼まで申し上げます」あるいは「まずはお礼申し上げます」と「申し上げます」を付けると安心できる敬語となります。

他にも「略儀ながらまずはお礼まで」「略儀ながらまずはお礼まで申し上げます」と、踏むべき手続きを簡略化したものであることをあらかじめお断りする表現を入れることもできます。この程度であれば冗長的な表現にはならないため問題ありません。

「取り急ぎお礼まで」も同じ意味の使い方

「まずはお礼まで」とは、先に説明したとおり、正式なお礼の挨拶に出向く前に、取り急ぎ手紙でお礼の意を送ります、という意味で使います。そのため、「取り急ぎお礼まで」も同じ意味で結びの言葉として使うことができます。

また、「まずは取り急ぎ書中にてお礼まで」のように「書中にて」を入れることで、正式な挨拶の前にお手紙を差し上げます、という気持ちを伝えることもできます。

丁寧な敬語にしたい場合は、「取り急ぎお礼まで申し上げます」「取り急ぎお礼申し上げます」とします。

「まずはお礼まで」を使った手紙・はがきの例文

「まずはお礼まで」で締めて終わる取引先への手紙・はがきの一例を紹介します。3月の時候の挨拶を使用しています。

拝啓 早春の候、貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
平素は格別のお引き立てにあずかり、ありがたくお礼申し上げます。
さて、このたびは…    をいただき、まことにありがとうございました。
平素は一方ならぬご支援ご協力をいただいておりますうえに、このようなお心づかいをいただき、恐縮いたしております。
今後とも、貴社の一層のご発展をお祈り申し上げます。
まずはとり急ぎ書中にてお礼申し上げます。

敬具

「まずはお礼まで」の返信は必要?

「まずはお礼まで」の返信は基本的には不要

先に説明したとおり、「まずはお礼まで」は暫定的なお礼の挨拶であり、後日正式に伺いますという前提で書かれているものであるため、返信の手紙などを送る必要は本来はありません。

しかし、近年は手紙を出したあとに改めて直接出向くことも少なくなったため、お礼の挨拶の返事ができないことが気になるケースもあるかもしれません。そのようなときは、お礼のはがきや手紙を確かに受け取りましたよ、という主旨で、メールなどで返信するとよいでしょう。

「まずはお礼まで」の英語表現とは?

「まずはお礼まで」に相当する英語の締めの言葉はない

「まずはお礼まで」という締めの言葉には、「本来はお伺いしてご挨拶すべきところを、略儀ながら取り急ぎ書中にて、お礼を申し上げます(+のちほど正式なご挨拶に伺います)」という複雑な意味合いが込められています。

日本独自に発達した、相手を丁寧に思いやる文化のあらわれだとも言えます。そのため、結論ファーストで単刀直入に要件を伝える文化圏には、「まずはお礼まで」に相当する締めの言葉はありません。

なお、「まずはお礼まで」を直訳すると「This is a quick note to thank you.」となりますが、文末にこの一文を入れても、違う文化圏の人にはその意味が通じることはあまりないと言えます。ありがとうの気持ちを簡潔に伝える英文を記せばよいでしょう。

参考までに、基本的に英文で感謝を伝えるのは文頭です。何はさて置き、まず第一に感謝の気持ちを伝えたいときは「First of all, thank you very much for _」と書き出します。締めの言葉に「Thank you again for _」とagainを使って繰り返すこともあります。

まとめ

手紙の締めの言葉として使う「まずはお礼まで」とは、お礼の挨拶に伺うべきところを、取るものも取りあえず、取り急ぎ略儀ながらご挨拶申し上げました、という気持ちを込めて使われる表現です。

「まずはお礼まで」は、目上の人にも使える、手紙のマナーにのっとった締めの言葉ですが、昨今はマナーや慣例が変化してきていることから、その意味するところが伝わらないことも多いようです。そのため、表現が簡略すぎて相手に失礼にあたるのでは?と感じる人もいるようです。

違和感があると感じる場合は、「略儀ながら、書中にてお礼を申し上げます」とすると、意図も伝わりながら敬語としても安心できる表現になります。