「行く」の尊敬語4種類!ビジネスで使える便利な表現も

敬語は小学校でも習いますが、大人になるにつれ忘れてしまったという人も多いのではないでしょうか。周りに合わせてなんとなく使っていると、いつの間にか間違った表現が身に付いているといったことにもなりかねません。

今回は、そんな敬語の中から「行く」の尊敬語をピックアップ。実は、「行く」は尊敬語だけで4つの言い方があるんです。

「行く」の4種類の尊敬語とその使い方

尊敬語は、相手の行動を敬って言うものです。「行く」の尊敬語には4つの言い方があります。順番に見ていきましょう。

尊敬語①「行かれる」の使い方

「行く」の尊敬語は、「行かれる」です。「行く」に尊敬の「れる、られる」がついたものです。「先週、お祭りには行かれましたか」「今度の集会には行かれますか」といった形で使います。

4つの中ではもっとも簡単な形なので、尊敬の度合いは一番低いとされています。身近な上司や先輩など、比較的親しい間柄で、目上の方に使うとよいでしょう。

尊敬語②「いらっしゃる」の使い方

「行く」の尊敬語二つめは、「いらっしゃる」です。「行かれる」より敬語の度合いが高いとされており、どんな相手にも使えます。

「京都にはいついらっしゃったのですか(京都にはいつ行ったのですか)」「週末の展示会にはいらっしゃいますか(週末の展示会には行きますか)」のように使います。

尊敬語③「おいでになる」の使い方

「行く」の尊敬語「おいでになる」は、4つの尊敬語の中でもっとも尊敬の度合いが高いとされています。漢字で書くと「お出でになる」です。

「今度の休みにはどちらにおいでになりますか(今度の週末はどこに行きますか)」「あちらにおいでになったことはありますか(あそこに行ったことはありますか)」といった使い方ができます。

尊敬語④「お行きになる」の使い方

最後に紹介するのは「お行きになる」で、「行く」に尊敬語の「お~なる」をつけた言葉です。

文法上は正しい尊敬語なのですが、使われる機会はあまりありません。そのため、「お行きになる」と聞いたときに違和感を覚える人もいます。

決して間違いではありませんが、スムーズなコミュニケーションのためには避けた方がいいでしょう。

「いらっしゃる」「おいでになる」は「来る」「いる」の意味も

「行く」の尊敬語である「いらっしゃる」と「おいでになる」は、「来る」と「いる」の尊敬語でもあります。

たとえば、「先週末は海外においでになったんですね」「先週末は海外にいらっしゃったんですね」という例文を見てみましょう。これは、「先週末は海外に行ったんですね」とも、「先週末は海外にいたんですね」ともとらえられます。

他にも、「パーティーにおいでになりますか」「パーティーにいらっしゃいますか」は、「パーティーに行きますか」とも、「パーティーに来ますか」とも考えられます。自分が主催側なら「来る」、そうでなければ「行く」と、場合によって解釈が変わるのです。

少し複雑に感じられるかも知れませんが、実はこれは至って単純な仕組みになっています。

「行く」も「来る」も、過去や未来にその場所に「いる」ということを表します。また、「行く」と「来る」はどちらから見るかが違うだけで、移動するという動作自体は同じです。

そう考えると、「行く」「来る」「いる」という3つの言葉は、本質的にはそれほど違いがないものだと考えられます。だからこそ、尊敬語にしたときに同じ言葉で表せるのです。

使う場面によっては解釈に迷うこともあるかもしれませんが、逆に考えれば、これさえ覚えておけば3つの言葉の尊敬語がマスターできてしまう便利な表現ということになります。

「いらっしゃる」「おいでになる」は、「行く」だけでなく「来る」「いる」という意味もぜひ覚えておきましょう。

「行く」を使ったさまざまな表現を敬語にすると?

たとえば上司と一緒にいるときに「行きましょう」という、目上の人に「行ってください」とお願いするといったときに、もっと丁寧な言い方はないかと悩んだ経験がある人もいるのではないでしょうか。ビジネスシーンで使える便利な表現をご紹介します。

「行ってください」の丁寧表現

「行ってください」はそれ自体が尊敬の意味を含む言い方です。

これをさらに丁寧にするには、「くださいませんか」「いただけませんか」といった問いかけの形にするという方法があります。こうすることで、こちらが一方的に頼むのではなく、判断を相手に委ねる姿勢が伝わるのです。

また、「恐縮ですが」「お手数ですが」など、表現を柔らかくする言葉、いわゆるクッション言葉を前につけるのも効果的です。

これらを使うと、「お手数ですが、行っていただけませんか」のようになります。これなら、相手を気遣いながら自分の意思を伝えられます。

「一緒に行きます」の丁寧表現

自分が相手と一緒に行くことを示すには、「ご一緒する」という言葉があります。

「ご一緒する」は、「一緒に行く」の謙譲語です。「一緒に行きます」は丁寧語ですから、これよりも丁寧な表現になります。

また、「同行する」という意味の謙譲語には、「お供する」というものもあります。少し固い表現になりますから、より目上の上司や年配の方に対して使うとよいでしょう。

まとめると、「一緒に行きます」をより丁寧にすると、「ご一緒します」「お供します」といった表現ができます。

「一緒に行きませんか」の丁寧表現

「一緒に行きませんか」は「一緒に行きます」の疑問形ですから、これも丁寧語ということになります。

「一緒に行きます」の場合は「行く」のが自分なので謙譲語を使いました。一方「一緒に行きませんか」の場合は「行く」のは相手なので、尊敬語が使えます。つまり、「行きませんか」の部分を、「行く」の尊敬語を使って表せばよいのです。

また、「一緒に」を丁寧にするには、丁寧語の「ご」をつける、もしくは「一緒に」自体を避けて相手の名前を呼ぶといった方法があります。

具体的には、「一緒にいらっしゃいませんか」「○○さんも行かれませんか」「ご一緒においでになりませんか」といった言い方ができます。

「行く」の謙譲語と丁寧語

尊敬語は、相手が「行く」ときに使う表現でした。自分が「行く」ときには謙譲表現を使います。

「行く」の謙譲語は「伺う」

「行く」の謙譲語は、「伺う」です。「私が伺います」「田中とともに伺います」など、自分や自分側の人の行動をへりくだっていうときに使います。

この場合、敬意の方向は行く先の相手に向かっています。つまり、「御社に伺います」といったときは、相手方の御社や御社の人に敬意を払っているわけです。

「16時に伺ってもよろしいでしょうか」など、アポイントメントをとるときにも使います。

「行く」の丁重語は「参る」「行きます」

「参る」「行きます」は丁重語に分類される言葉です。

丁重語は謙譲語の一種なので、自分の行動をへりくだって言うときに使います。「伺う」との違いは、敬意の方向が話し相手に向いているということです。

たとえば上司に対して、「私がA社に参ります」といったときは、敬意はA社ではなく上司に向かっています。

また、「伺う」と同じように、行く先の相手に対して「御社に参ります」と伝えることもできます。行く先と話し相手が同じになっているので区別しづらいかもしれませんが、この場合も、敬意は話し相手に向いているということになります。

まとめ

「行く」の尊敬語は、「行かれる」「いらっしゃる」「おいでになる」「お行きになる」の4種類あります。このうち、「お行きになる」はあまり使われませんから、3つの言葉を覚えておけばよいでしょう。敬語は正しく使うことで、相手とコミュニケーションがとりやすくなったり、より親密な仲が築けたりといった効果が期待できます。いろいろな意味があって複雑に感じられるかもしれませんが、しっかり使いこなせるようにしておきましょう。