「物に当たる」の意味とは?治す方法やパワハラ・DVとの関係も解説

日本語表現で「〇〇に当たる」がありますが、中でも日常生活でよく使われるのが「物に当たる」です。無意識のうちに口から出る言葉ですが、正しい意味への理解や使い方に自信はありますか?

ここでは「物に当たる」に焦点を当て、言葉の意味、パワハラやDVとの関係、英語表現について解説させていただきます。物に当たるのを治す方法と併せて紹介していきましょう。

「物に当たる」の意味と使い方とは?

「物に当たる」の意味は”感情の矛先が物に向かうこと”

「物に当たる」の意味は、“怒りや不満などの感情が物に向かうこと”す。たとえば、会社で上司で喧嘩をした、契約が取れなかった、彼女に裏切られた時など、不満や憤懣の矛先を当事者に向けるのではなく、「物」に転嫁して気持ちを発散させることを意味します。

つまり、ストレスや不安定な感情が原因で、周囲にある物を蹴ったり、投げつけたりと、物を乱雑に扱う行為そのものを総称して「物に当たる」と言います。

「物に当たる」は相手をののしったりする場合には不適切

「物に当たる」は、皿やガラス製のコップを割ったり、物を壁にぶつけたりするような、いわば「感情の向け先を物に転嫁する」行動に対して使うのが適切です。そのため、相手をののしったり、嫌味を言ったりするような場合、「物に当たる」と表現することは不適切となります。

「物に当たり散らす」「物に当たりまくる」は強調する意味で使われる

「物に当たる」ことを強調する意味で使われる表現に「物に当たり散らす」「物に当たりまくる」があります。手が付けられないくらい「物に当たる」状況であれば、これらの表現を使うこともできます。

また、全く関係のない「物」に対し、やたら目ったら’当たるという状況なら「物に八つ当たりする」を使っても良いでしょう。

近しい彼氏・旦那/彼女・妻が物に当たる場合の対処法とは?

大切なものを周囲に置かない

物質的な対処法となりますが、基本的に壊してほしくないものは周囲に置かないことが大切です。「物に当たる」時は、冷静さに欠け、どうしても正しい判断ができなくなってしまいます。そうすると、高価な物でも、安価なものでも、「物の価値」というものが見えなくなってしまいがちです。

「物に当たる」相手のクセや性格を根本的に治す対処法ではないかもしれませんが、大切なもの自体を置かなければ、壊される心配もありません。加えて、「あれ、いつもあるモノが消えている」と疑問に感じさせることができれば、新しい気づきになることも期待できます。

「物に当たる」ことで出費が重なることを伝える

辛いことや嫌なことがあっても、「物に当たる」ことは決して正当な行いではありません。それなら「物に当たる」ことは、結局「無駄遣い」「余計な出費」につながるということを冷静に伝えてみましょう。

この時に気を付けたいことは、「物に当たる」相手の存在を否定しないことです。「あなたのことは尊敬できるけど、これ1万円したよね?」という事実だけを、感情的にならずに相手にやんわりと言ってみて下さい。出費が重なる痛手を感じさせることができれば、物を無意味に壊す愚かさに気づくかもしれません。

物に当たり始めたらその場を去る

物に当たり始めたら、すぐさまその場を去るのも効果的です。自分が被害を被る前に身を守るということ、また「物に当たる」相手に、「物に当たる」ことは好意的なことではなく、周囲ににいる人にとって「不快な行動である」ということを、言葉を欠けずに知らせてみましょう。

また、可能であれば、相手が物に当たっていない時を見計らって、「ストレスが多い日だったけど、物に当たっていないあなたは素晴らしい」と褒めてあげて下さい。

「物に当たる」のを治す方法とは?

「物に当たる」前の行動を工夫する

「物に当たる」というクセは実に厄介なものですが、努力次第で治すことはできます。日常的に実践できることとして「物に当たる前に深呼吸をする(させる)」があります。深呼吸には「気持ちや感情をコントロールし、自律神経のバランスの崩れを整えてくれる効果があります。緊張やイライラが原因となって「物に当たる」場合、まず深呼吸を5回してみると、衝動的な感情が収まり、気持ちがある程度リセットできます。

アンガーマネジメント・カウンセリングも治す方法

海外でも「物に当たる」ことを好意的に受け止めることはほぼありません。

いくら怒りの矛先が「物」でも、感情が上手にコントロールできないと社会生活にも支障ができます。そのため「アンガーマネジメント」の講座に参加したり、カウンセリングを受けることも多くあります。

「物に当たる」ことはDV・パワハラになる?

DV・パワハラの定義とは

DV(Domestic Violence =ドメスティックバイオレンス)とは、配偶者や結婚はしていないが婚姻関係に等しい事実婚の相手に対し、暴力を振るうことを指します。DVは身体的暴力(殴る、叩く、蹴るなどのなど)のみではなく、相手の行動を制限する、携帯メールをチェックする、生活費を渡さない、人前でののしるなどの精神的暴力、加えて性的暴力も含みます。

一方、近年問題視されているパワハラ(Power Harrasment=パワーハラスメント)とは、職場内における職務上の地位や権限の優位性を利用した上で、業務に対しての適性範囲を超えて、精神的な苦痛を与えることを意味します。つまり、社会的に強いものが弱い者に圧力を与えたり、嫌がらせをすることを指します。

心理的・精神的暴力に相当すれば刑法上「傷害罪」となることも

それでは「物に当たる」という行為はDVになるのでしょうか?

たとえば、家庭内で「物に当たる」を行為を繰り返した場合、周囲にいる人の精神的苦痛レベルは上がっていきます。自分も被害にあうかもしれないと、不安と恐怖におののき、通常の日常生活が送れなくなるかもしれません。結果的に精神的な病気にかかってしまう場合もあるでしょう。

DVを例にとってみると、精神的・心理的暴力と判断される行為として「不機嫌になると物に当たる」が挙げられます。つまり「物に当たる」ことは立派なDVとしてみなされるのです。この場合、刑法上「傷害罪」として問われることもあります。

「物に当たる」行為ががパワハラに該当することも

パワハラの場合も同様です。DVの場合と状況は多少異なりますが、職場の人間関係において権限のある人が、下に位置する人が見える場所で、怒りを物に向けたりすれば、間接的ではありながら立派なパワハラ行為だと言えます。その光景を見て、下の人は恐怖におののき、何も言えなくなってしまうからです。

「物に当たる」の英語表現とは?

「物に当たる」は英語で”take it out on things”

日常会話でよく使う英語フレーズに「don’t take it out on me = 私に八つ当たりしないでよ!」があります。この流れで「物に当たる」は“take it out on things”、「物に当たるな」なら“Don’t take it out on things”となりますので、ぜひ覚えておきましょう。「物に当たる」人を横目に、見るに見かねない、行為を否定したい時にぜひ使ってみて下さい。

まとめ

「物に当たる」とは「不満や怒りの矛先を物に向ける」ことを意味します。中には「人に当たるよりはまし」と笑い飛ばす人もいるかもしれませんが、「物に当たる」行為は、実際的にも周囲に与える影響は多大であるため、相手に精神的な苦痛を生ませる要因にもなりかねません。どのような環境でも人間関係を良好に保ちたいのなら、やはり「物に当たる」クセを治す必要はあるでしょう。

ストレス社会は加速するばかりですが、自分なりストレスを発散させる突破口を開くことは重要です。ジムで汗をかいたり、メディテーションで精神を落ち着かせるクセをつければ、思い出の品や高価なアイテムを無駄に壊すことはなくなるかもしれません。