「見栄を張る」の意味とは?語源と類語・関連することわざも解説

「見栄を張る」は性格や態度を表す表現ですが、日常でも職場でも、自分を大きく見せようと見栄を張ってしまうことがあると思います。その心理とはどのようなものか、ご存知でしょうか?

ここでは「見栄を張る」の意味と語源、使い方の注意点と関連することわざ、また類語表現と英語フレーズについて解説させていただきます。歌舞伎の「見得(みえ)」とは異なりますので、その違いにもぜひ着目してみてください。

「見栄を張る」の意味や語源とは?

「見栄を張る」の意味は”うわべや外観を取り繕うこと”

「見栄を張る」の意味は、“うわべや外観を取り繕うこと”です。自分を大きく見せようとしたり、能力以上の態度を示したりと、外見を着飾って相手に示すことを表す言葉です。

「見栄を張る」の語源は”見える”

「見栄を張る」は”見える”が「見え」に変化し、「張る」と組み合わせて、熟語の意味を完成させたという背景があります。「見栄」は「見え」のあて字であり、時代を経てそのまま「見栄」という表記が浸透していった経緯もあるようです。また「張る」には「突っ張る・頑張る」などのように、態度を強く表す時に使われる言葉でもあります。

「見えを張る人」の心理とは?

「見栄を張る」のは他人の目を意識しているから

普段の生活の中で避けられないこと、それは他人からの目や社会での評価です。「見栄を張る」ことの要因は”他人の目を気にする”や”周囲の期待に応える”などですが、周囲の評価を中心に捉えてしまうことで、上っ面だけの自分を演出してしまうことはよくある話です。

逆をいえば、他人の目をきにしない人は見栄を張る必要がないということになります。周囲の評価はどうでもいい、比較されても、悪いと判断されても気にしないなら、あえて面倒な見栄など張らなくても良いのです。

「見栄を張る」の使い方とは?

歌舞伎の「見得」や「見得を切る」とは違うことを理解する

「見栄を張る」と似たような熟語表現に「見得を切る」があります。無意識のうちに混同してしまいそうな二つの表現ですが、意味にやや違いがあるため、使い分けをすることが大切です。

「見得を切る」とは、”見得のしぐさを示し、自分を誇示する態度をとること”という意味があります。「見得」は歌舞伎の世界で使われる言葉で、芝居が最高潮の時を迎えた時、印象的で目に留まるような動きや表情を見せることをいいます。

役者は観客の掛け声や拍手の大きさや数で、自己の演技レベルを判断する傾向にあるため、実際的には評価を気にしてオーバーに自己を表現する必要があるのです。つまり「見得を切る」は、見栄を張ることをベースに、さらに背伸びをして誇示するというニュアンスがあります。また「見得を切る」の「見得」を「見栄」と表記しないように気を付けて下さい。

「見栄を張るより頬張れ」とは成功する秘訣のことわざ

「見栄を張るより頬張れ」はビジネスでも先輩から後輩へ、上司から部下へと、仕事における心得や成功する秘訣として使われることの多いことわざでもあります。

「見栄を張るより頬張れ」とは、”虚栄より実利を優先させよ”という意味です。つまり、「虚栄やうそなどで一時的な満足感を得るよりは、実際的なものごとで勝負せよ」という教えを説いているです。

体裁は見た目悪くても、実際に得られることのほうが大切であることを表す、つまり「花より団子」の意味と似たことわざとなります。

「見栄を張る」の類語とは?

類語①「美化する」は”実際以上に美しいと解釈すること”

「美化する」は実際の状況以上に美しいものとして解釈することを意味します。また、純粋に「美しくする」という意味もあり、加えて、現状からより美しいものに変化させるという意味を持ち合わせます。

  • Aさんは、自分の営業成績を美化しすぎじゃない?

類語②「糊塗する」は”一時的にごまかすこと”

「糊塗(こと)する」は、その場を取り繕い、一時的にごまかすことを意味します。失敗を隠したり、嘘をごまかしたりする時に使われますが、「虚実で塗り固める」といったネガティブなイメージがあるため、「見えを張る」の根本的な意味とは多少性質が異なります。

  • 仕事での失態をついつい糊塗してしまった。

「見栄を張る」の英語フレーズとは?

「見栄を張る」は英語で”show off”や”keep up with”

「見栄を張る」を意味するフレーズで最も一般的なのが“show off”です。「show off」は見せびらかす、大きく見せる、などの意味で使われますが、根底には上辺だけを取り繕って、その場をしのぐというようなニュアンスのある表現です。一目で「外面だけ」「実利でなく虚栄」と認識できるような態度に「show off」はよく使われます。

もう一つ、「keep up with」は、周囲や相手(ライバルを含む)に頑張ってついていくという意味があります。たとえ実力や能力は伴わなくとも、偽りの自分を演じて何とか追いついていく、という意味で使われます。ストレートな言い回し「show off」より軟らかいフレーズとなるため、ネガティブなニュアンスを控えたい時に使ってみて下さい。

「見栄を張る」を使った英語例文

「見栄を張る」を使った英語例文をご紹介しましょう。

  • 彼はただ見栄を張っているだけだ。
    He is just showing off.
  • 周囲の期待に見栄を張ることに疲れてしまった。
    I am getting tire of keeping up with everything.

まとめ

「見栄を張る」の語源は「見える」で「張る」を後続せた熟語表現です。意味は「うわべや外観を取り繕うこと」で、周囲の評価を気にして自分を実力以上に大きく見せる態度や話し方を表す時に使われます。補足ですが「見栄を張る」は映画のタイトルにもなりました。

職場やプライベートでも周囲や相手の目を気にして「見栄を張ること」はありませんか?「見栄を張るより頬張れ」とはいいますが、「嘘から出た実」のように、虚栄から生まれる成功もあります。ことわざも、状況によって上手に使い分けてていくべきなのかもしれません。