「おります」の意味と使い方とは?敬語表現や「います」との違いも

「おります」「しております」といった表現は、普段から何気なく使われます。しかし、「います」とどう違うのかと問われると、答えに困ってしまう人も多いのではないでしょうか。実は、「おります」と「います」には明確な違いがあるのです。それを知らないまま使っていると、おかしな言葉遣いになってしまいます。「おります」の意味と正しい使い方について、確認していきましょう。

「おります」の意味と敬語表現

「おります」は「います」の丁重語

「おります」は、「おる」と丁寧語の「ます」が合わさった言葉です。一方、「います」は、「いる」と「ます」を合わせた言葉です。

「おる」と「いる」を漢字で書くと、どちらも「居る」となります。つまり、どちらも存在や状態を表す、同じ意味の言葉ということです。

では、この二つの違いはなんでしょうか。

実は、「おる」は「いる」の変化した形。具体的にいうと、「おる」は「いる」の丁重語なのです。

丁重語(謙譲語Ⅱ)は自分の動作に使う

ここで丁重語について解説します。

丁重語とは、謙譲語の一種です。それまで、敬語は尊敬語、謙譲語、丁寧語の3種類に分けられていましたが、2007年以降、分け方が細かくなり、尊敬語、謙譲語、丁重語、丁寧語、美化語の5種類になりました。
※文化審議会答申が示している「敬語の指針」では、「丁重語」は「謙譲語Ⅱ(丁重語)」と記載されています。

丁重語は、謙譲語と同じく「自分や身内の行動をへりくだっていう言葉」です。謙譲語がその動作を向かう先に敬意を示すのに対して、丁重語は話し相手に敬意を示すという違いがあります。

例えば、「行く」の謙譲語の「伺う」は、「そちらに伺います」のように、「行く」という行動の対象に敬意を示します。

しかし、「おる」、つまり「いる」という行為には、行動の対象はありません。このような場合、敬意は行動の対象ではなく話し相手に向かいます。これが丁重語です。

まとめると、丁重語は自分や身内の行動をへりくだっていうことで、話している相手に対して敬意を示す言葉ということになります。

「おります」と「います」の違いとは

「おります」は身内のみ、「います」は誰にでも使える

「おります」は、丁重語の「おる」を丁寧にした言い方です。丁重語ですから、自分や身内について話すときにしか使えません。一方、「います」は単なる丁寧語ですから、誰について話すときでも使えます。

「おります」と「います」の使い方の違い

たとえば、自分が10時に会社にいることを言う場合には、「10時には会社におります」とも「10時は会社にいます」とも言えます。

しかし、自分の身内以外の人の場合、「○○様は10時にはいます」とはいえますが、「○○様は10時にはおります」とはいえません。

このとき「います」よりも丁寧に表現するならば、「いる」の尊敬語である「いらっしゃる」を使い「○○様は10時にはいらっしゃいます」とするのが適切です。

「おります」の使い方を例文で確認

「おります」を使った例文

まずは、いることを表す表現です。

  • 8時には現地におりますので、到着されましたらご連絡ください。
  • 弊社の田中はそちらにおりますか。
  • 明日は社内におりません。
  • 今朝までは現地におりました。

「しております」の形で使った例文

「している」など、「(動作)+いる」という表現でも、「おります」を使って丁寧にいうことができます。

  • お会いできるのを楽しみにしております。
  • 現在は出張に出ております。
  • みなさまのご来場を心よりお待ちしております。
  • 妻は病気で寝ております。

「おります」の誤った使い方

「おります」は使われる機会が多いこともあってか、間違った表現も多く出回っています。当たり前に使われる表現でも正しくないこともありますから、自分が誤った使い方をしていないかチェックしましょう。

相手のことを尋ねるときに「おりますか」はNG

「おります」は丁重語ですから、相手について表現するときには使えません。「本日お約束していたのですが、○○部長はおりますか」「○○様は元気でおりますか」といった表現は誤りです。

相手の存在や状態を表したいときには、「いる」の尊敬語である「いらっしゃる」を使いましょう。先の例なら、「○○部長はいらっしゃいますか」「○○様は元気でいらっしゃいますか」が正しい表現です。

「おられます」は文法上誤り

「おられます」は、丁重語の「おります」に尊敬を意味する「れる、られる」を無理やり合わせた言葉です。丁重語は自分の動作に、尊敬語が相手の動作に使う言葉なので、「おられます」という表現はありえません。

相手がいることを丁寧に言いたい場合は、「いらっしゃる」を使いましょう。

尊敬語混じりの「されております」は間違い

「されております」は、「しております」の「して」を尊敬語の「されて」に変えた言い方です。尊敬語と丁重語が混ざっていますから、これも間違いです。

誤用の例としては、「課長の○○はただいま外出されております」といったものがあります。相手にも上司にも敬意を払おうとした結果、敬語が混乱してしまったケースです。

この場合、自分の身内である課長に対する敬語表現は不要です。したがって、単に「課長の○○はただいま外出しております」と伝えればいいということになります。

「おりますでしょうか」は二重敬語

丁寧に言わなければと思うあまりやりがちなのが、敬語に同じ種類の敬語を重ねてしまう「二重敬語」です。

「おりますでしょうか」は、丁重語の「おる」に丁寧語の「ます」と「です」がついています。この丁寧語の部分が二重敬語になってしまっているのです。

もし、自分の身内の所在を尋ねたいときには「おりますか」、身内以外の人の所在を尋ねたい場合は「いらっしゃいますか」を使いましょう。

まとめ

「おります」は「います」の丁重語で、自分や身内についていうときにだけ使える言葉です。これを無理に相手に対して使おうとすると、本文で挙げたような誤った表現になってしまいます。普段何気なく使っているだけに、知っているつもりで失礼な言い方をしてしまわないよう、使い方を覚えておきましょう。