「ファシリテーター」の意味とは?コーディネーターとの違いも

会議の進行役を「ファシリテータ―」と呼びます。普段何気なく使っている呼称ですが、その意味や役割がはっきりわからないという人も多いかもしれません。この記事では、ファシリテータ―の意味や語源となった英語、役割やコツまで幅広く解説します。さらに深く知りたい方のために、おすすめの本も紹介します。

「ファシリテーター」とは?

「ファシリテータ―」の意味は”話し合いを円滑に進行する役割の人”

「ファシリテータ―」の意味は、“話し合いを円滑に進行する役割の人”のことです。会議や講座、ワークショップなど、目的を持って複数の人が集まる場で、参加者の多様性を活かしながら議論を導いたり、創造的なアクティビティ(活動)を実践する進行役を担う人の呼称です。

「ファシリテータ―」は、ただ漫然と司会進行を行うのではなく、様々な工夫を凝らしながら、合理的で生産性の高い会議や場を作り上げます。「ファシリテーター」に求められる能力や技術は多岐にわたり、専門性が求められると言えますが、資格がなくてもファシリテーターを名乗ることができます。

民間資格や養成講座なども多数存在するため、興味を持った人はファシリテーターの技能を身につけることが可能です。

「ファシリテーター」の語源は英語の”facilitator”

「ファシリテータ―」の語源は、”ファシリテーションをする人”という意味の英語「facilitator」です。ファシリテーションとは”促進する・容易にする”といった意味を持ち、英語で「facilitation」と書きます。

ビジネス用語としてのファシリテーションは、会議などの場において、効率よく合意形成や問題解決などを促す議論の進行手法を意味し、ひとつの重要なビジネスツールです。

ファシリテータ―のことを「ファシリテーション役(の人)」などと呼ぶこともあります。

集団心理療法の進行役として呼称が最初に用いられた

ファシリテータ―の呼称は、アメリカの心理学者であるカール・ロジャースが開発した集団心理療法「エンカウンターグループ」で最初に用いられました。エンカウンターとは出会いという意味です。

エンカウンターグループとは、心理療法のために集まったグループの中で感じたことを思いのまま話し合ったり、課題に対するエクササイズなど行うもので、ファシリテーターが進行します。

この流れにより、現在でも心理学的なワークショップなどで進行役を務める人のことをファシリテータ―と呼んでいます。

「ファシリテータ―」の役割やコツとは?

「ファシリテータ―」の役割は”中立的な立場で場をリードすること”

ビジネスの場における「ファシリテータ―」の役割は、会議などに中立的な立場で参加し、進行役として会議をリードすることです。参加者全員に対等に接し、全員の意見を聞き出すために、話が長い人や、脇道にそれた意見を述べる人に対しては介入して軌道を修正し、発言しようとしない人に対しては質問をするなどして発言を促します。

ファシリテータ―は自分の意見を述べることはせず、目指すゴールに向けて進行しながら、最終的には参加者の合意を形成します。

「ファシリテータ―」のコツは安心・安全で自由な”場の空気”を作ること

参加者の自由な発想や力を引き出すには、活発な議論を安心して行える場が必要です。自由に意見を出し合えない雰囲気や環境での会議は非生産的です。会議がうまくゆくかどうかは、その場の空気作りで決まると言っても過言ではありません。

ファシリテータ―は、参加者が安心して自由にアイデアを出せるような場の雰囲気を醸成します。そのためには、肩書による差がつなかいように配慮したり、会議の開始時に場をほぐすためのアイスブレイクを行うなどの工夫を行います。

また、属性の異なる様々な立場の人が集まるワークショップなどにおいては、参加者の個人的な情報は外に漏らさないという守秘義務をあらかじめ確認し、安全な場を作ることも大切です。これらの取り決めをルール化して、会議やワークショップの前に箇条書きにして提示するやり方もあります。

議論を「見える化」して話し合いの質を高めることも重要

ファシリテータ―の役割は議論やワークショップを円滑に進行することですが、話し合いの質を高めるために欠かせないのが議論を「見える化」することです。

「見える化」とは、ホワイトボードや、なければ模造紙などを使って、イラストや図を交えながら議論の流れや内容を視覚化することを言います。ファシリテータ―が自ら行ったり、担当者を別に設けることもあります。

話し合いが視覚的に見えることで、新しいアイデアが出たり、認識が一致して合意形成がスムーズに行われたりするなど、議論の質が高まります。

話し合いの流れを図式化して記録する技術を「ファシリテーション・グラフィック」と呼び、専門書なども出版されています。

「ファシリテータ―」と似たカタカナ語の違いとは?

「コーディネーター」は調整や取りまとめを行う

「コーディネーター」は、広義では調整やとりまとめを行う役割の人のことで、さまざまな場面や業界で役割を持ちます。職業の呼称や肩書としても用いられます。

会議などにおけるコーディネーターは、参加者の発言などを調整し、会議を進行し、一つにまとめ上げる役割の人を呼びます。その役割はファシリテータ―と重なる部分が多いですが、コーディネーターは「調整する人」という意味が強く、ファシリテータ―は「議論を導く人」という意味が強いと言えます。

「モデレーター」は討論会を進行する

「モデレーター」とは、パネルディスカッションや座談会などを進行する司会者の呼称です。掲げられた議題に沿って、参加者の発言の時間配分を調整したり、討論をまとめたりします。討論会の観覧者がいる場合は質問応答を取りまとめます。

モデレーターは、異なる意見をまとめたり、共通する意見を探ったりしながら、テーマに沿って議論を進行します。その意味ではファシリテータ―と同じ役割を持ちますが、モデレーターは特にパネルディスカッションなどの討論会の進行役を呼ぶことが一般的です。

まとめと本の紹介

ファシリテータ―とは、もともとは集団心理療法の進行役の呼称として用いられたものであるため、当初は心理学系のワークショップなどの進行役を呼ぶことが多かったのですが、現在はビジネスや教育、地域活動などさまざまな分野で行われる会議や創造活動の場で、まとめ役を担う人がファシリテータ―と呼ばれています。

ファシリテータ―の技術は、NPOや協会などが行っている各地の講座で身につけることができます。また、ビジネス会議や地域活動など、目的に合わせて解説された書籍が多数出版されていますので、独学も可能です。

特にビジネス会議に役立つファシリテータ―の技術については、次の本がおすすめです。会議を改善するためのコツなども具体的に挙げられています。