日常的にはもちろん、ビジネスにおける商談や取引のシーンでよく使われる言葉に「せざるを得ない」があります。何気なく会話で口にすることはあっても、文法的に見ると多少わかりにくい表現であると思いませんか?
ここでは「せざるを得ない」の意味と文法の説明、使い方の注意点とビジネス関連例文、類語と英語表現について紹介させていただきます。
「せざるを得ない」の意味と文法解説とは?
「せざるを得ない」の意味は”しないわけにはいかない”
「せざるを得ない」の意味は、“ある物事をしないわけにはいかない・どうしてもしなければならない”です。ある物事に対して選択の余地なくすることを強いられること、また避けられない事情や状況があって、そうはしたくはないが、どうしてもそうする必要があるという意味を持ちます。
「せざるを得ない」は”そうするしか他がない”という意味があり、言ってみれば自分ではどうすることもできない物事の成り行きに乗じて使われる言葉となります。
「せざるを得ない」の文法解説
「せざるを得ない」は5つの言葉から構成されています。
- せ:「する」の未然形
- ざる:打消しの助動詞「ず」の連体形
- を:格助詞
- 得:「得る」の未然形
- ない:否定の助動詞「ない」
このように「せざるを得ない」は、「せざる」で一度否定し、さらに「得ない」で二度否定される二重否定の表現となります。「しないという事が不可能である」つまり「しなければならない」という意味で解釈します。
「せざるを得ない」の使い方の注意点と例文とは?
「せざるを得ない」を”せざるおえない=せざる負えない”とするのは誤り
「せざるを得ない」を自動変換する時に、誤って「せざるおえない(”を”ではなく”お”)」と入力してしまうと「せざる負えない」と全く異なる表現が選択肢として上がってきます。
通常、話の中で耳から入ってくるのが「セザルオエナイ」なので、うっかり「せざるおえない」とローマ字打ちをしてしまうこともあるでしょう。
文法解説でご紹介したように「せざるを得ない」と「せざる負えない」では、意味が異なります。ビジネスシーンでも商談や取引関係のメールのやり取りをすることが多いですが、誤って「せざる負えない」と変換してしまわないように気をつけましょう。
「せざるを得ない」を使ったビジネス関連例文
「せざるを得ない」を使ったビジネス関連例文をいくつかご紹介しましょう。
- 大変ご迷惑をおかけいたしますが、今回の会議は延期せざるを得なくなりました。
- 本日雨天のため、イベントの開催を断念せざるを得ない状況でございます。
- 魅力的なお申し出に対し、こちらの都合でお断りせざるを得ないのは心苦しい限りです。
- 検討の結果、採用の件は残念ながら見送りをせざるを得なくなりました。
- 部下の業務レポートがあまりにも貧相過ぎて、どうにも却下せざるを得ないところである。
「せざるを得ない」で言い換えのできる類語と例文とは?
類語①余儀なくされる
「余儀なくされる」は、他に選ぶ道がなく、そうすることしかないことを意味します。
- 大雨警報が出たので、子供たちは帰宅を余儀なくされた。
類語②選択の余地がない
「選択の余地がない」は、他に選択肢がなく、仕方なくそうすることを意味します。
- お金が底をついたので、食費を切り詰めるしか選択の余地がない。
類語③止むを得ない
「止むを得ない」はそうするしかないこと、他にどうすることもできないことを表す言葉です。
- あれだけ海外留学を懇願しているんだ。賛成は止むを得ないだろう。
類語④致し方ない
「致し方ない」は物事に対してそうするしかない、避けることができないという意味で使われます。「致す」という謙譲語を用いた言葉であるため、丁寧な言い回しとしても使える言葉です。
- お世話になった手前、契約を承諾するのは致し方ないことであろう。
類語⑤他に打つ手がない
「他に打つ手がない」は、その他に良い得策や方法がないこと、またそうするしかないという意味を持ちます。最後の最後まで頑張ったが、これ以上何もできないという状況の時に使われます。
- 色々と検討を繰り返したが、やはり商品の破棄をする他に打つ手はないだろう。
「せざるを得ない」の英語表現とは?
「せざるを得ない」は英語で”no choice”や”must”
「せざるを得ない」とは、”そうする他、手立てはない・しなければいかない”という意味です。そうなると、適切な英語表現は「no choise」やシンプルに「must」を使うのが最も適切だといえます。
その他、口語的なフレーズでは「what can I do?」や「nothing else to do」なども「何ができるんだ・他に何もできないよ」というようなニュアンスで使うことができます。
「せざるを得ない」を使った英語例文
「せざるを得ない」を使った英語例文をご紹介しましょう。
- 彼を解雇せざるを得ない状況となった。
I have no choice but get rid of him now. - 断念せざるを得なくなったのは、膝の痛みが続いたからである。
I must stop now becuase my pain in my knees is just so relentless.
まとめ
「せざるを得ない」は「しなければならない」「そうする他仕方がない」という意味で、ビジネスシーンでは状況を説明したり、断りのメールを入れたりする時によく使われる表現です。こちらはそうしたいが、事情があって止むを得ないということを説明する際に、丁寧な文章と併せて使っていくのがベストです。
また「せざるを得ない」と「せざる負えない」は、それぞれ別の表現となりますの で、注意するようにしましょう。