「庇護」の意味と使い方は?「擁護・保護・加護」との違いや類語も

「庇護(ひご)」は日常生活ではあまり見かけることのない言葉ですが、正式な文書にまとめたり、公式なスピーチなど場面ではよく聞く表現です。

ここでは「庇護」の意味と使い方をはじめ、「擁護」「保護」「加護」との違い、使い方と例文、類語・対義語、また英語での表現について解説させていただきます。

「庇護」とは?

「庇護」の意味は”かばって守ること”

「庇護」の意味は、“かばって守ること”です。「庇護」の「庇」は”かばう”とも読み「おおいかくす・おおう」という意味を持ちます。また「護」は”まもる”とも読み、「付き添って大切にする・過ちの無いようにまもる」という意味を持ちます。

「庇護」は”弱者を危険から守る”という意味合いが強い

「庇護」の意味を理解する上で大切なのは、「庇護」には”弱者を危険から守り、かばい抜く”というニュアンスが強いことです。

とくに、子供や難民など、自分ひとりだけでは生きてはいけない人を助け、付き添いながら守るという意味があります。つまり、「庇護」には弱い立場にいる人を間違いをないように、安心して生活ができるよう、精神的・物質的に支援するというニュアンスのある言葉です。

「庇護申請者」とは”他国に辿り着き保護申請を行う人”

「庇護」を使った熟語に「庇護申請」や「庇護申請者」があります。「庇護申請者」とは、たとえば、戦争に巻き込まれたり、人種差別や宗教上の理由で迫害を受けたりすることで、生活や命に危機に脅かされ、自国を離れて他国の避難所に逃げた人に対し、その国で庇護の申請をする人のことを言います。

「庇護申請」のプロセスは、まず、申請者の国に向けて支援や保護ができるように呼びかけ、申請者を守るための法律をと整えるように求めます。話し合いが合意され、正式に庇護されると、法的な保護処置、また難民認定の確定、支援物資など拝受が認められます。

「庇護」の使い方と例文とは?

「庇護」の誤用に気を付ける

「庇護」は”弱者”や”子供”などの弱者に対して「過ちのないようにかばう・生活や身を危険から守る」といった意味で使われます。そのため、通常困った人を助けたり、家族を災害から守ったりする行為などに「庇護」を使うのは適切ではありません。

たとえば、「台風が来る前に窓を強化ガラスに替えて、家族を庇護した」という文章では、家族を災害から守る手立てをしたという意味なので、弱者をかばうという意味の「庇護」を使うのは正しいとは言えません。この場合は「保護」や「守る」を使う方が適切です。

また、「道にうずくまっているお年寄りがいたので庇護した」という文章も、弱者を助けたことにはなりますが、「保護」や「助ける」という表現を使った方が意味的には通じやすくなります。

「擁護」「保護」「加護」との意味の違いを理解する

「庇護」を使う時は、似た言葉である「擁護」や「保護」との意味の違いを理解することが大切です。

  • 「擁護」:「特定の危害から弱者や困っている人を精神的にかばい守る」
  • 「保護」:「弱者をかばい見守る」
  • 「加護」:「神や仏の力で守り抜き、助けること」

まず「擁護」は、特的の危害から弱者を「精神的に」かばい守るというように、たとえば「人権擁護」といった使い方をします。

保護」は先ほども解説したように、通常困った人を助ける一般的な表現として使います。「庇護」は”弱者をかばう”という意味合いが非常に強く、守る対象は「子供・社会的に立場の弱い人・被害者・迫害された人・難民」などになることが多いです。

「加護」の場合は、「神のご加護」というように、人の力というよりは信仰や祈り、自分の願いや思いを伴って自分や相手を守ることを意味しますので、似た言葉もしっかりと使い分けるようにしましょう。

「庇護」を使った例文

「庇護」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。

  • 難民として船でやってきた家族が、庇護の申請を始めた。
  • 私たち兄弟は、親の庇護のもとで安全に暮らしてきた。
  • 孤児院で育ったが、手厚い庇護を受けたことには心から感謝している。
  • 庇護を約束されたが、やはり自分の力で生きていくことにした。

「庇護」の類語と対義語とは?

「庇護」の類語は”後見”や”保全”

「庇護」の類語には“後見”“保全”があります。

「後見」には親代わりに面倒を見る人、また表に出ないで後ろに控えて世話を行う人という意味があります。よく見聞きする言葉に「後見人」がありませすが、裁判や結婚式などで、表に出ずバックステージで世話をする人のことを指します。

「保全」は”保護して安全を守ること”という意味があります。「環境保全」や「財産を保全する」などのように使いますが、「庇護」の弱者をかばうという意味にフォーカスすれば、意味合いがやや異なるかもしれません。

「庇護」の対義語は”迫害”

「庇護」の対義語は“迫害”です。「迫害」とは強い立場にいる人が弱者に対し、生きる権利や自由を奪い取ること、またそう脅かすことを意味します。また、「迫害」の類語には「虐待」があります。「虐待」は肉体的に苦痛を与えることで、「動物虐待」や「虐待の危機」などのように使われます。

「迫害」や「虐待」から弱者をかばい守るのが「庇護」ですので、お互いに相対関係のあることばであることが理解できるでしょう。

「庇護」の英語フレーズとは?

「庇護」は英語で”asylum”

「庇護」は英語のaylum(アサイラム)”を使いましょう。英語圏で頻繁に使うフレーズに「asylum seeker(庇護を求める人)」があります。自国から自力で脱出し、他国に生活の保護を求める人のことで、第三国や戦争国から自分や家族の命や生活を守るためにやってくる人たちのことを指します。

また、広義では「protection」を使うこともできます。たとえば「庇護のもとで」は”under the protection of”を使って表現します。その他、よく使う熟語は以下の通りです。

  • 庇護権:right of asylum
  • 庇護国:country of asylum
  • 外交的庇護:diplomatic asylum

「庇護」を使った英語例文

「庇護」を使った英語例文をご紹介しましょう。

  • 私は両親の庇護のもとで暮らしてきた。
    I have been under protection of my parents in my life.
  • 庇護の希望者は100名に達した。
    People who seek asylum have been reached to 100.

まとめ

「庇護(ひご)」は「子供や難民などの弱者に対して、安全に生活できるように、あやまちのないようにかばい、見守ること」を意味します。日常生活では使用頻度の高い表現ではありませんが、「擁護」「保護」と併せて、特定のシーンで弱い立場にいる人を守り、支えるという意味で使われます。

ビジネスシーンでは「上司にどなられている同僚がいたので、間に入って庇護した」などと、誤用をしないように気を付けて下さい。この場合は「仲介に入った」「立場を守った」などが適切です。「庇護」の意味を把握して、正しく会話に用いるように心がけましょう。