「御仏前」とは仏様にお供えする金品の表書きに使われていますが、どのような意味があるのでしょうか。今回は「御仏前」の意味と漢字の書き表し方について、さらに「御仏前」の書き方や持参するときのマナーの他に、「御仏前」と似た言葉である「御霊前」との違いについても解説します。
「御仏前」とは?
「御仏前」の意味は”丁寧な表現にした仏前”
「御仏前」とは、“丁寧な表現にした仏前”のことです。仏の前という意味の「仏前」を丁寧に表した表現で、仏前への供物や香典袋、不祝儀袋の表書きに用います。
「仏前」とは言葉通り仏の前という意味です。「仏」とは仏教で悟りを得た者のことで、死んだ人またはその霊という意味もあります。
「御仏前」の読み方は”ごぶつぜん”
「御仏前」の読み方は“ごぶつぜん”です。仏の前を意味する「仏前(ぶつぜん)」の前に接頭語の”御(ご)”が付いて「ごぶつぜん」と読ませます。
「御」という字は「お」と読むこともありますが、「御」が和語の前に付いたときに「お」と読み、漢語の前に付いたときには「ご」と読みます。「仏前」は漢語のため、「御」は「お」でなく「ご」と読みます。
「御仏前」は”御佛前”とも書ける
「御仏前」と似た書き方に“御佛前”があります。読み方はどちらも「ごぶつぜん」で、意味も同じです。
違いは「御佛前」は”仏”の旧字が使われていて、「御佛前」は”佛”の略字である「仏」が使われていることです。
「仏」が略字だからといって仏前に対して失礼ということはなく、どちらの表記を使っても構いません。
「御仏前」の書き方とは?
中央下段にフルネームで名前を書く
名前は表書きの下段中央にフルネームで書きます。
香典は個人で出すのが基本なので、家族の場合は世帯主の名前を、夫婦では夫の名前を書くことがマナーです。
しかし夫婦共に故人と親しくしていたか、妻側の親族が亡くなった場合には、夫婦連盟でも書けます。夫婦連盟では、夫の名前を下段中央に、妻の名前の苗字を省略して夫の名前の左側に書きます。
表書きは薄墨でなくていい
四十九日以後の法要で捧げられる御仏前の表書きには、薄墨(うすずみ)でなく濃墨(こずみ)で書いて構いません。
薄墨は、四十九日以前の法要での供物の表書きで使われます。なぜなら薄墨は、故人を悼む気持ちが強く表れるからです。故人を思うがために涙が出て、その涙で墨が薄くなったことに由来して、香典などの表書きに薄墨が用いられるようになりました。
ただし四十九日を過ぎたころからは表書きは濃い墨で書いても構わないとされています。
「御仏前」を持参するときのマナーとは?
金額は故人との関係による
故人と親しい関係にあるかどうかで、御仏前に包む金額が違います。
相場では、故人の親なら10万円、兄弟姉妹なら3万円、祖父母または親戚なら1万円、友人や食の関係者なら5千円と言われています。しかし包まれる金額は地域差もあり、相場は参考程度にとどめるのがいいでしょう。
包む金額がわからないときは親しい親戚などの意見を参考にして、切りのいい金額にします。
御仏前は新札でもいい
四十九日以降に渡す御仏前には新札を使えます。しかしそれ以前に渡す御霊前などには新札は使えません。
新札はいつでも手元にあるわけではなく事前に用意しなくてはならないため、新札を包むと受け取った相手は死ぬのを待っていたのかと解釈する可能性があるからです。
お金は揃えて入れる
お金はなか袋に揃えて入れるのが基本ですが、お札の自分の描いてある方を下にして裏向きにする方がいいとも言われています。
お菓子などのお供え物には「のし」をつける
お菓子などのお供え物には、弔辞用ののし紙をつけて渡します。のし紙には結び切りという結び方の水引を印刷されたものを選び、中央下段にフルネームを書きます。
お供え物には食べ物や飲み物、線香などの消費されるものを選びましょう。また日持ちのするものや故人が好きだったものも喜ばれます。
「御仏前」のお返しのマナーとは?
御仏前のお返しは当日に引き出物として渡す
御仏前のお返しは当日に引き出物として渡すのが一般的です。法事に参列していない方には、一ヵ月以内に引き出物を郵送または宅配便などで送ります。
「のし」の表書きは「志」が一般的
お返しの品につけるのし紙の表書きは「志」がよく使われます。水引は、東日本では黒白の5本結び切り、西日本では黄白の5本結び切りにするのがマナーです。
「御仏前」と「御霊前」の違いとは?
「御霊前」の意味は”故人の御霊に捧げ供えること”
「御霊前(ごれいぜん)」とは、“亡くなった方を敬い、故人の御霊に捧げ供えること”です。
仏教では、一般的に死後49日までは死者が六道輪廻(ろくどうりんね)をさまよい成仏していないので、その期間に捧げる供物の表書きには「御霊前」を使います。
御仏前は49日後、それ以前は御霊前を使う
お供えする供物の包み紙の表書きには、故人が亡くなった49日後から「御仏前」を、それ以前は「御霊前」を使います。
7回目の追善法要である四十九日で故人の霊は成仏するので、成仏する前は霊なので「御霊前」、成仏後は仏なので「御仏前」が使われます。
四十九日が繰り上げられたら御仏前を使う
法要の都合により四十九日が繰り上げて営まれることがありますが、その場合は「御仏前」を使います。法要を執り行うことで、死後49日が経っていなくても成仏したと考えるためです。
浄土真宗と真宗ではいつでも御仏前
同じ仏教でも宗派によって死後についていろいろな考え方があるのですが、浄土真宗と真宗には霊という考え方がありません。死者は亡くなられたと同時に成仏すると考えられているので、四十九日以前でも「御霊前」は使わず「御仏前」が使われます。
まとめ
「御仏前」とは、四十九日以降の仏前に捧げられる金品の表書きに使われる言葉です。四十九日以前の香典やお供え物には、「御霊前」が用いられます。ただし浄土真宗と真宗では、常に「御仏前」が使われますので、事前にお悔やみ申し上げる先の宗派を確認しましょう。