「堪能」という言葉があります。「英語が堪能な人」などとその道に深く通じているという意味で使われる他に、十分に満足することを「堪能する」とも表現します。「堪能」の意味は一つではないようです。
この記事では、「堪能」が持つ複数の意味を解説し、移り変わった読み方についても紹介します。あわせて使い方と例文、類語や対義語も紹介します。
「堪能」の意味と読み方とは?
「堪能」の意味は本来”学芸に優れている様子”
「堪能」の意味は、“学芸に優れている様子”です。
本来は仏教用語であり、物事によく耐え忍ぶ能力を指す言葉でした。転じて、才能に優れ、その道に深く通じていることを意味する言葉として用いられるようになりました。
語学や和歌など、特に技芸や学問に習熟していることを表します。
「十分に満足すること」という意味もある
「十分に満足すること・気が済むこと」という意味の「足んぬ(たんぬ)」という言葉の音が変化して、「たんのう」と使われるようになり、「堪能」が当て字として使われるようになりました。
そのため、「堪能」の本来の意味である”学芸に優れている様子”とは別に、”十分に満足すること”という意味でも「堪能」が使われるようになりました。
「豪華な料理を堪能した」や「素晴らしい舞台を堪能した」などと用いられます。
なお、「堪能」の当て字は、本来は「湛能」の字を当てるところを誤用したとの説もあります。
「堪能」の読み方は”かんのう”と”たんのう”
「堪能」の読み方は本来は”かんのう”でした。
しかし、先に説明した”十分に満足すること”という意味に「堪能」の当て字があてられたことから、本来の「堪能」自体も”たんのう”と誤読され、「たんのう」の読み方が浸透しました。
「堪能」の使い方と例文とは?
「十分に満足すること」という意味の「堪能」の使い方と例文
「十分に満足すること」という意味で使われる「堪能する・できる」は、文化的な要素を持つ事柄に対して、精神的な満足を表現する時に使われます。次のような例文があります。
- 世界に誇る日本の伝統美術を堪能する機会を得た
- 京都は古来からの食や歴史、風景など多方面から日本を堪能することができる有数の観光地である
- 今回の旅行では美術館巡りをして芸術を堪能することにした
- 一人でもグルメが堪能できるよう配慮されたレストランが増えている
- デザートまで時間をかけてコース料理を堪能した
「堪能」の類語とは?
「十分に味わい、楽しむこと」という意味の「満喫」
「十分に満足すること」という意味の「堪能」に近い表現に「満喫(まんきつ)」があります。「満喫」とは、”十分に味わい、楽しむこと”という意味です。もともとは十分に飲み食いするという意味として用いられていました。「喫する(きっする)」とは、口を通してのどに入れるという意味を持ちます。
「堪能」も”十分に楽しむこと”という意味を含みますが、その場の雰囲気や芸術性なども含めて総合的に深い満足を得たという場合には、「満喫」よりも「堪能」が用いられます。
「満足して喜ぶ」という意味の「満悦」
「満悦(まんえつ)」とは、”満足し、喜ぶ(悦ぶ)こと”という意味です。満足するという意味では「堪能」と同じ意味を含みますが、文化などを深く味わい満足するという意味よりも、”楽しいことがあって上機嫌になる”といった場面で使われるのが「満悦」です。
上機嫌な様子を揶揄して「ご満悦のご様子です」などと使われることもあります。
満足することの和語的表現「満ち足りる」
「堪能」の類語で漢語的表現ではない和語的表現としては、「満ち足りる」と言い表すことができます。「満ち足りる」とは、”十分に満足する”という意味です。
「伝統芸術を堪能した」は”伝統芸術に触れて満ち足りた気持ちとなった”と言い換えることができます。
「堪能」の対義語とは?
「堪能(かんのう)」の反対は”不堪”
仏教用語として「物事によく耐え忍ぶ能力」という意味の「堪能(かんのう)」の対義語は“不堪(ふかん)”です。堪えがたいこと、我慢できないことの意から、その道の心得がないこと、技芸が未熟なこと、という意味で用いられます。
「堪能(たんのう)」の反対は”不満・渇望”
「十分に満足すること」という意味の「堪能」の対義語には“不満(ふまん)”や“渇望(かつぼう)”が挙げられます。
「不満」とは、”満足できないこと”という意味であり、「渇望」とは、”満たされない気持ちから、待ち焦がれること”という意味です。
まとめ
「堪能」とは、本来は物事によく耐え忍ぶ能力を指す言葉でしたが、転じて、その道に深く通じていることを指す言葉として用いられるようになりました。例えば「語学に堪能な人」などの使い方です。
それとは別に、「十分に満足すること」という意味の「足んぬ(たんぬ)」という言葉が「たんのう」に変化し、当て字として「堪能」の漢字があてられて使われるようになりました。「おいしい食事を堪能した」などの使い方です。
また、当て字の「堪能」の影響で、本来の「堪能」は「かんのう」と呼んでいましたが、「たんのう」の読み方が定着することとなりました。
ちょっとややこしい「堪能」の歴史を紹介しましたが、全く別の二つの意味があることを押さえておくことがポイントです。