「叱責」とは人を叱り責めることという意味ですが、ただ叱ることとは違います。では、どのように違うのでしょうか。今回は「叱責」の読み方や意味のほかに、「叱責」の使い方や類語、「叱咤」や「パワハラ」との違いに英語表現も解説します。
「叱責」の意味と読み方とは?
「叱責」の意味は”叱り責めること”
「叱責」の意味は、“叱り責めること”です。単に叱るのではなく、人の失敗や過ちなどの悪い点を責めて非難するという意味が含まれています。そのため「叱責」は人に対して使われる言葉で、自分に使うことはありません。
「叱責」の読み方は”しっせき”
「叱責」の読み方は“しっせき”です。「叱」は音読みでシツですが、「責」と連結することで促音「っ」になります。「叱」にはしかるだけでなく怒鳴る、言葉で追い詰めて責めるや罵るなどの意味があります。
「責」の音読みはセキの他にシャクがあり、その意味は他人を悪く言う、非難する、罪を正す、勧めるなどです。
「叱責」の使い方と例文とは?
人を叱るときには「叱責する」と使う
人を叱るときに「叱責する」という使い方をします。相手の過失を責めるときに使われる表現で、特に責任を問われた際にその責任は相手にある場合に用いられます。
- 「上司は、顧客への不親切な対応をした部下を叱責した」
- 「レポートの提出期限を守らない生徒を叱責する」
「厳しい叱責」や「強い叱責」で強く叱ることを言い表す
強い口調で叱責することを「厳しい叱責」や「強い叱責」という言い回しをします。
- 「先生の厳しい叱責が室内に響いた」
- 「先輩の強い叱責で、新入部員は部に出てこなくなった」
叱責されることは「叱責を受ける」
叱責される場合には、「叱責を受ける」という言い回しがあります。責任を負わなくてはならに事で過失をして叱られるといった状況で使われます。
- 「叱責を受けて猛省した」
- 「叱責された理由がわからない」
「叱責」の類語とその違いとは?
類語①「譴責」の意味は”叱り責めること”
「譴責(けんせき)」とは、叱り責めることという意味の言葉ですが、日常生活ではあまり使われません。主に職務上の過失により叱り責められた場合に用いられる言葉です。
また、企業が社員に罰として課す懲戒処分の中で最も軽い罰を「譴責」と言います。「譴責」により、職務上の過失による業務または会社の規則に反していることを警告しています。
「譴責」と「叱責」の違いは、「叱責」は日常的に使われますが、「譴責」は主に職場で使われるという点です。
類語②「小言」の意味は”細かなことを一つ一つ叱ること”
「小言(こごと)」は、細かいことを一つ一つ取り立てながら叱ることとその言葉という意味で、それ以外にも不平や文句という意味もあります。
「叱責」と「小言」の両方とも叱るという意味ですが、「小言」は叱る相手への批判や非難の意味が含まれる点で違います。
- 「小言をちょうだいする」
- 「小言を言う」
類語③「非難」の意味は”人の過失を責めること”
「非難(ひなん)」とは、人の過失や欠点を取り上げて責めることという意味の言葉です。
「非難」と「叱責」では、「非難」は「叱責」のように叱ることはありませんが、人の過失や欠点を責めるという点で類似しています。そのため「叱責」に比べると「非難」はずっと穏やかな語調や態度になるでしょう。
「協調的ではない彼の態度を非難する」
「叱責」と「叱咤」の違いとは?
「叱責」は叱り責めることで、「叱咤」は大声で叱ること
「叱咤」と「叱責」のどちらとも叱るという意味がありますが、違いは、「叱咤」は大声を出しながら叱るのに対して、「叱責」は大声を出す必要はありません。
また「叱責」には相手の過失や非を責めるという意味がありますが、「叱咤」には責めるという意味はありません。
「叱咤」の意味は”大声で叱ること”
「叱責」の類語のひとつである「叱咤(しった)」は、大声で叱ることという意味です。ただ叱るのではなく大きな声を出すときに「叱咤」が使われます。
また「叱咤」には大声で励ますという意味もあります。
- 「いたずらをした子供を叱咤する」
- 「棟梁は見習いの職人を叱咤してやる気を起こさせるようにした」
「叱咤激励」とは”大声で励まして元気づけること”の意味
「叱咤激励」とは大声で励まして相手の元気づけるという意味です。
この場合の「叱咤」の意味は叱るというニュアンスが含まれていますが、むしろ大声をあげて相手を励ますという意味合いが強いです。一方、「激励」は相手を元気づけて奮い立たせることという意味です。
- 「試合に負けた選手を叱咤激励する」
- 「尊敬する先輩から叱咤激励を受けて、もう一度やり直してみようと思った」
「叱責」と「パワハラ」の違いとは?
「パワハラ」とは”職場での過度な嫌がらせやいじめ”
「パワハラ」とは”パワーハラスメント”の略語で、職場で権限を持つ上司などが権限の少なり社員に対して行う過度な嫌がらせやいじめのことです。精神的な苦痛や肉体的な苦痛などさまざまな苦痛を与える行為をパワハラと呼びます。
過度の叱責はパワハラになる
「パワハラ」とみなされる行為には、「叱責」が含まれることがあります。ビジネスでは業務上の指導から上司が社員を叱責する、または先輩が後輩を叱責するシーンが見られます。
ただし指導を超えて、「会社を辞めろ」のような相手の人格を否定したり威圧したりするような過度の叱責はパワハラと判断されることがあります。
「叱責」の英語表現とは?
「叱責」は英語で”rebuke”や”reproach”
「叱責」は英語で“rebuke”や“reproach”と表現します。「rebuke」は”相手の過失を叱り責めること”を、「reproach」は”非難”を意味していて、どちらとも正式な文書で使える英単語です。
- “He was rebuked by his manager in front of others.”
「彼は上司に人前で叱責された」 - “She reproached her boyfriend for canceling the date.”
「彼女はデートをキャンセルした恋人を叱責した」
まとめ
「叱責」とは人の過失などを叱り責めることという意味の言葉で、叱責される相手にとっては精神的にダメージを受けることもある行為です。そのため人を非難するときは感情に任せた叱責はせず、注意や忠告をして、それでも改善が見られないならば叱責をするように段階を踏む方がいいでしょう。