「あまねく知られる」「あまねく広がっている」など「あまねく」という表現を使うことがあります。「あまねく」は広く行き渡ることを表す時に使われますが、正しい意味をしっかり把握していますか?
今回は「あまねく」の意味と語源、漢字表記と使い方、類語を解説しています。語彙力アップにお役立てください。
「あまねく」の意味と語源・漢字表記とは?
「あまねく」の意味①広く行き渡る・漏れなく
「あまねく」の意味は、“広く行き渡ること・漏れなく”です。全ての範囲、または非常に広いエリアに隅ずみまで行き渡る様子を表し、広がりや状況に対し、漏れがなく、全域に渡ってという意味で使われます。
「あまねく」の意味②全体的に・普遍的に
「あまねく」は”広く行き渡る・漏れなく”の意味が転じ、「全体的に・普遍的に」という意味も持ちあわせています。広がりの状態が全体的であること、また永遠に変わることがないこと、というニュアンスでも使われています。
「あまねく」の語源は”あまねしの連用形”
「あまねく」は”広く行き渡る”という意味の形容詞「あまねし」の連用形が副詞的な形に変化した言葉です。
「あまねく」の「あま」は”余る(あまる)”や”数多(あまた)”など、数が多いことを表す語句と同源だと考えらえれています。加えて”数が多い”という意味を持つ「まねし」が後続し、”広く行き渡る”という意味へと発展したとも言われています。
「あまねく」の2つの漢字表記
「あまねく」には2つの漢字表記があります。
1つ目は「普く」です。音読みでは「フ」と読み、一面に広く渡るという意味があります。
2つ目は「遍く」です。音読みでは「ヘン」と読み、”広く・全て・何もかも”という意味を持ちます。
つまり、「あまねく」の2つの漢字表記を組み合わせると「普遍」という熟語になることがわかります。「あまねく」が”普遍的に”という意味でも使われている理由が、ここで理解できるでしょう。
「あまねく」の使い方と例文とは?
「あまねく」は文語として使われることが多い
「あまねく」は日常生活であまり使われない言葉です。加えて、会話で用いる口語表現としても選ばれることは少ないようです。たとえば、友達同士の普段の会話で「この話は世界にあまねく知られている」というよりは「この話は世界に広く知られている」と言ったほうが、コミュニケーションはスムーズにいくかもしれません。
一方で「あまねく」は古語単語であるため、言葉の響きが独特で古風であるのが特徴です。そのため、文学的な舞台や映画のシーン、昔の小説・書籍などで「あまねく」は好んで使われる傾向があります。
「あまねく」を使った例文
「あまねく」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。
- 日本で発表された論文は、あまねく世界中に知られるようになった。
- 紅葉の時期の山岳地帯は、あまねく鮮やかな色が広がる。
- あまねく広がる静かな海の光景に、心休まる思いだ。
- 着陸がせまり、キラキラと輝くネオンが、下方にあまねく広がるのが見えた。
- アジア諸国を中心にあまねく宣伝活動をするよう、部長に指示された。
- 国の新しい方針が、最近になってあまねく行き渡るようになった。
- テクノロジーの発展で、インターネットが子供から高齢者まで、あまねく普及されるようになった。
「あまねく」の類語とは?
類語①「なべて」は”すべて・総じて”
「なべて」は古語語句の一つで”すべて、総じて”という意味があります。一般的に、一面になど、全般に渡ることを表す言葉となります。
- 都会の人はなべて速足で街中を歩く特徴がある。
- 冬の時期は、なべて体を温めるなべやスープなどを食す傾向がある。
類語②「一般的に」は”広く認められるさま”
「一般的に」は広く認められ行き渡るさまや普遍的なことを表す言葉です。特別なようすや特殊な事象を指すのではなく、あくまで広く行き渡っていることを示す時に使われます。
- このダイエット食品は日本でも一般的に知られる商品の一つである。
- 一般的にクレジットカードは海外旅行の必須アイテムだと言える。
類語③「どこもかしこも」は”限定なく広く渡ること”
「どこもかしこも(何処も彼処も)」は、限定することがなく、広く行き渡るさまを意味する言葉です。たとえば、見渡す限り、知る限りという限定的な範囲を超えて、あらゆるところでというニュアンスで使われています。
- 休日の行楽地は、どこもかしこも家族連れで一杯だ。
- どこもかしこも、流行りのファッションに身を包んだ若者であふれている。
まとめ
「あまねく」は「普く」と「遍く」の二つの漢字表記があり、「広く行き渡る」「漏れなく」「全体に」という意味を持ちます。口語ではあまり使われませんが、小説をはじめ、文学的な要素をシーンで多く使われています。「あまねく」は古語表現であるため、やわらかで古風な響きを運ぶのが魅力である言葉の一つとも言えるでしょう。
もちろん、日常会話や職場でも、状況によっては「あまねく」を使うこともできます。普段の会話とは異なり、「あまねく」を使って文章のトーンに変化をもたらすのも良いのではないでしょうか?