「迂遠」の3つの意味とは?使い方の例文や類語・英語表現も解説

遠回りするという意味を持つ「迂遠(うえん)」という言葉を知っていますか?普段の生活では見聞きすることは少ないかもしれませんが、社会的な情報を発信するニュースや企画・開発などのシーンで使われることがあります。

今回は「迂遠」の意味と語源を始め、使い方と例文・類語と英語表現についてわかりやすく解説させていただきます。

「迂遠」の意味と語源とは?

「迂遠」の意味①まわりくどい様子

「迂遠」の意味は、“まわりくどい様子”です。もともと「迂」には”真っすぐ進まず曲がる、遠回りする”という意味があり、加えて「遠い」という言葉を組み合わせた言葉です。つまり二つの意味を総合して「まわりくどい・遠回り」という意味で使われています。

「迂遠」の意味②世情に疎い様子

「迂遠」の二つ目の意味は“世情に疎い(うとい)様子”です。実際に起こっている事象や、世の中にある実情に明るくない様子を意味しています。周囲の状況について知識や理解が十分でないこと、感心がなく間が抜けていることを表す言葉が「迂遠」となります。

「迂遠」はてんかんなど精神的疾患の症状も意味する

補足となりますが、「迂遠」は精神医学において、一つの思考障害を表す言葉としても使われています。

てんかんや高次機能障害を持つ方の特有な症状のことで、主題や質問に対する答えに直接関係の無い内容から会話が始まり、遠回りして最終的に主題や質問に答えるといった様子を指しています。英語では「circumstantiality」と表記します。

「迂遠」の語源は”曲がりくねった道”

「迂遠」とは”道が曲がりくねっているため、なかなか目的地まで辿り着かない”という意味から生まれた言葉です。ストレートな道路ではなく、くねくねとした回り道やカーブの多い山道などでは、目的地に到着するまで時間がかかってしまうことでしょう。その状況を比喩的に表現し、使われるようになったのが「迂遠」です。これが語源となります。

「迂遠」の使い方と例文とは?

「迂遠」は実用的ではないことを表す時にも使われる

「迂遠」の使い方は基本的に”まわりくどい・遠回し・世情に疎い”などの意味で使われますが、これらの意味から転じて「実用的ではない・実際の用途に向かない」というニュアンスでも使われることがあります。

たとえば、スピーディな効果を上げるための販促を模索している場面では、「まず、市場調査をして、次にアンケートをとって、そして集計をして、それから新聞広告を制作して…」という長々とした行程は「迂遠」であり、実用的ではありません。それなら、既存の消費者を中心にインパクトのある写真やメッセージを簡単にまとめ、SNSで一気に拡散させた方が効率的でしょう。

このように、遠回しにものごとを進めて余計な時間や経費をかけることなど「実際には向かないこと」や「実際には役に立たないさま」を「迂遠」という言葉で表現することがあります。

「迂遠」を使った例文

「迂遠」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。

  • 友達のそのまた友達から気持ちを告白してもらうなんて、本当に迂遠極まりない。
  • 彼女の迂遠な別れ話には、もう飽き飽きしている。
  • 記者会見では迂遠な説明が多いため、一般市民は意味が到底理解しがたい。
  • 制作部長はテクノロジーに頼らず、迂遠な方法だけを実践する古い人間だ。
  • この時代に積極的に機織り技術を学ぶなど、迂遠な学生はそうもいないだろう。
  • ゲームおたくの息子にとって世情を語る父の話など、まさに迂遠の空談である。

「迂遠」の類語とは?

類語①「冗長」は”意味なく長話すること”

「冗長(じょうちょう)」とは、”意味なく長話をすること”を意味します。話しの内容や目的を失ってしまい、関係のない話にまで発展してしまうような無駄な話のことを指します。

例文
  • 最初からやる気のない同僚は、会議の席でも冗長に徹する始末だ。
  • ゴール設定やKIPについての言及がなく、これでは全くの冗長に過ぎない。

類語②「婉曲」は”直球ではなく穏やかに話すこと”

「婉曲(えんきょく)」とは、ものごとをストレートに語るのではなく、穏やかに角が立たないように話すことを意味します。露骨に意見を語らず、丸く平穏な雰囲気で話すことを表す時に「婉曲」という表現を使います。

例文
  • 彼女の話し方はやわらかく婉曲である。
  • 婉曲な語りは好感が持てるが、実際は話の核心に迫っていない。

類語③「インダイレクト」は”間接的なこと”

「インダイレクト(indirect)」は、直接という意味を持つ「ダイレクト(direct)」の対義語で、間接的なという意味を持つカタカナ語です。回りくどい言い回しや、意味が通じない遠回しな様子を表す時に使われます。

例文
  • クライアントからインダイレクトな返答をもらって困惑している。
  • 「そうとも言えるが、違うかもしれない」とはインダイレクトな説明だ。

「迂遠」の英語表現と例文とは?

「迂遠」は英語で”circulty”

「迂遠」は英語で“circulty(サーキュリティ)”と言います。「circulity」は”円、ぐるぐる回ること”を意味する「circle」の変化形です。状況が「回りくどいことや遠回しなようすを表す時に使ってみましょう。

例文
  • 彼女との迂遠な関係から脱出したい。
    I need to get out of the circulty relationship with my girlfriend.
  • 10年前の流行りを主張する妹は、やはり迂遠女子なのか?
    My sister still keeps on rephrasing about what was in 10 years ago. She is so behind what is really happening in the world now.

まとめ

「迂遠(うえん)」とは「回りくどい様子」「世情に疎いこと」を意味する言葉です。もともと曲がりくねった道を進んでいても目的地までなかなか到着しないことから、比喩的に使われるようになったのが語源とされています。

ビジネスシーンや職場では、時間短縮や効率を考えて今すぐにでも作業にとりかかりたい、また実践に移りたいことがあるでしょう。このような状況で「迂遠」は好まれないでしょう。

一般的な社会生活を覗いても、やはり「迂遠」な状況は多くあります。しかし、巡るめく速さで時間が通り過ぎていく現代社会では、「迂遠」ではなく、できるだけ近道をした方が実用的なのかもしれません。