「沙汰」の意味や語源とは?「正気の沙汰」など使い方・例文も解説

「沙汰」とは、中世に使われた古語で、複数の意味を持っていました。現在は「正気の沙汰」や「ご無沙汰」「裁判沙汰」などさまざまな意味の慣用的表現として使われています。しかし「沙汰」がどのような意味を持つのかは曖昧だという人が多いかもしれません。

この記事では、現代においてもさまざまな意味を持つ「沙汰」を4つの意味に分類して解説します。あわせてその語源や使い方を例文をまじえて紹介します。

「沙汰」の意味とは?

「沙汰」の意味①物事の是非について論じ定めること

「沙汰」の意味は、“物事の是非について論じ定めること”です。あるいは「物事の是非について論じたその結果」という意味や、「物事の是非や善悪が問われる行為」という意味合いでも使われます。

例えば、よく使われる言い回しの「裁判沙汰になる」とは、内輪の話し合いで事を解決できず、裁判所で正式に事件として物事の是非を論じ、争うこととなったということを表現しています。

物事の是非や善悪の裁定にかかわる語としての意味をまずは押さえておきましょう。

「沙汰」の意味②常軌を逸した行動のこと

「沙汰」の2つ目の意味は“常軌を逸した行動”です。その行動の結果、世間にその是非が問われることを指します。物事の是非や善悪を問う行動という意味では、1つ目の意味「物事の是非について論じ定めること」と類似の関係があります。

例えば、否定の表現で使われる「正気の沙汰ではない」とは、とても正気とは思えない常軌を逸した行動や考え方であるという意味です。また、「喧嘩沙汰になった」とは、口論などが喧嘩にまで発展する事態となった(=常軌を逸した行動である)ということを表します。

「沙汰」の意味③話題として取り上げること

「沙汰」の3つ目の意味は“話題として取り上げること・ある事柄についてあれこれ言うこと”です。「うわさ」に近い意味でも使われます。

例えば、「世間に取り沙汰されていること」とは、世間の人の間で話題になっていることを表します。また、「沙汰止み(さたやみ)」とは、計画倒れ(あれこれ言うだけで終わること)という意味です。

他にも、「相続どころの沙汰ではない」とは、相続うんぬんを話し合うどころの状況ではないという意味です。

「物事の是非について論じ定めること」という意味や、善悪を裁定するという意味から発展して、話題として取り上げる、あれこれ言うこと、という意味として使われるようになったと思われます。

「沙汰」の意味④便り・音信

「沙汰」の4つ目の意味は“便り・音信・知らせ”です。善悪の裁定の意味から発展して、裁判などの判定を知らせるという意味として使われるようになり、そこから一般的な意味での「便り」や「音信」としても使われるようになりました。

「音沙汰がない・ご無沙汰」などはこの意味からできた語です。近頃はあまり使われませんが、「このところ何も沙汰が無い」などの使い方もあります。

古語である「沙汰」の語源とは?

「沙汰」の語源は”砂の中から洗って選り分けること”

「沙汰」は、中背に使われていた古語。「沙汰」の「沙」とは、”砂(すな)”を意味し、「沙漠・泥沙」などにも使われる語です。「汰」には”不要のものを除く・水で洗って選り分ける”という意味があります。「淘汰」の語にもに使われる漢字です。

そのことから、「沙汰」には”砂を洗って砂金を選り分ける”との意味があり、転じて善悪を選り分ける意味として使われるようになりました。また、そこから発展し、物事の是非や善悪を裁定する意味や、その処置を意味するようにもなったのです。

「沙汰」の使い方と例文とは?

ことわざ「地獄の沙汰も金次第」の使い方と例文

「沙汰」を使うことわざに”地獄の沙汰も金次第”があります。この語は、地獄に落ちるか極楽に行けるかも結局は金次第だということから、世の中は金が動かしているという考え方を表すものです。

この時の「地獄の沙汰」とは、”地獄へ行くかどうかを論じた結果”という意味で使われています。論じているのは地獄の管理人である閻魔様です。

「億万長者の被告が違法に国外に逃亡した。まさに地獄の沙汰も金次第ということだ」といった例文が考えられます。

常軌を逸した行動を意味する使い方「正気の沙汰ではない」

正常な判断力を持っているとは思えない行動や、全く正気だとは思えないような常軌を逸した行動を目にした時に、「正気の沙汰とは思えない」「これは正気の沙汰ではない」などと表現します。

例文
  • しつけと称して子どもに暴力をふるう親が増えているが、正気の沙汰とは思えない
  • 政府は都合の悪い文書は破棄にまで及んでいる。ますます正気の沙汰ではなくなってきた

計画が中止となる意味の「沙汰止み」の使い方と例文

計画や命令などが決定後に中止となることや、計画の途中で中止されることを「沙汰止み(さたやみ)」といいます。

「大規模開発計画は沙汰止みとなった」などと使われ、いわくがついておながれとなった、といったニュアンスで用いられます。

また、論争などがその途中で決着がつかないまま、しりすぼみとなったりする場合などにも「いつの間にか沙汰止みの状態である」などと表現されます。

常軌を逸した行動の結果を表す「〇〇沙汰」の使い方と例文

常軌を逸した行動の結果を表す表現として「警察沙汰・刃物沙汰・裁判沙汰」など「〇〇沙汰」の用い方があります。〇〇には、喧嘩や訴訟、裁判などに関連する言葉が入ることが一般的です。

例文
  • 隣人同士のささいな口論は、ひどくこじれて警察沙汰にまで発展するケースもある
  • かの著名タレントの離婚騒動は、裁判沙汰となってワイドショーを賑わせた

話題となっていることを表す「取り沙汰される」の使い方と例文

「沙汰」を使う表現の中で使われる頻度が高いものが「取沙り汰される/された」です。「話題として取り上げられる/られた」という意味で使われます。次のような例文が挙げられます。

例文
  • 二世政治家の発言は、一般社会の規範から逸脱していることが多いため、何かと取り沙汰されることが多い
  • 新型コロナウイルスについては早い時期からあちこちで取り沙汰されていたが、深刻に受け止める人は少なかった
  • 子どもの貧困問題が取り沙汰される中で起きた事件だった

まとめ

「沙汰」とは、元来「砂を洗って良いものと悪いものを選り分ける」という意味を持ち、転じて「物事の是非について論じ定めること」という意味で使われるようになりました。

その意味から派生して、物事の是非や善悪が問われる行為である「常軌を逸した行動」のことや、是非を論ずることから関係して「話題となっていること」や「音信」を意味する語としても用いられています。

中世には「追って沙汰する」などと判決を言い渡す時などの表現として使われましたが、現代では「話題」として取り上げるという意味の「取り沙汰される」の使い方や、論争の結果を表す「裁判沙汰」などの慣用的な表現が多く使われています。