「野放図(のほうず)」とはずうずうしい態度や際限がないさまを表す時に使われる表現です。人柄やものごとの状況に対して用いることが多いですが、言葉の由来や正しい意味をしっかり把握していますか?
今回は「野放図」の二つの意味と言葉の由来、使い方の注意点と例文、類語、英語フレーズについて解説します。
「野放図」の意味と由来とは?
「野放図」の意味①横柄で図々しいこと
「野放図」の意味は、“人が横柄で図々しいこと”です。「野放図」は人を人とも思わないような「しゃあしゃあとした態度」や、傲慢で慎みの無いさまを表す言葉です。主に人柄や態度に対して非難する意で使われます。
「野放図」の意味②際限がないこと・たるむこと
「野放図」のもう一つの意味は“際限ないこと・たるむこと”です。ダラダラと締まりがなく、状態が緩慢なさまを表しています。この場合の「野放図」は限度知らずでキリがなく、最後までとどまることのない状態のことを指しています。
「野放図」の由来は”野”と”方図”それぞれの意味から
「野放図」は”野”と”方図”の二つの熟語からできた言葉です。「野」には”自然のままで、未開の”また”従うことがない”という意味があり、「方図」には”ものごとの範囲”や”限度”という意味があります。
つまり、人柄や性格を表す時は「自然体で言動に限度がない=横柄、図々しい」、そして状況を表す時は「従わず状態に限度がない=キリなくたるむこと」というように意味が発展したと考えられます。
「野放図」の使い方と例文とは?
「野放図」はだらしない状況を包括して表す時に使う
「野放図」は”際限がない”という軸の意味があるため、人柄においても状況においても、包括的に「だらしない状況」を表す言葉とも言えます。
また「野放図」は”横柄な態度”や”締まりがなくだらしない”という意味で使われるため、受け手が喜ぶような表現ではありません。どちらかと言えば、相手や状況をネガティブに否定するようなニュアンスの方が強いでしょう。下記で例文を挙げてみます。
「野放図」を使った例文
「野放図」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。
- 部長の野放図な性格に、そろそろ嫌気が指してきた。
- 野放図に振舞っていると、周囲から嫌われるよ。
- 新人教育の焦点は、彼らの野放図さをいかにして改善させるかということだ。
- 久しぶりに訪ねた息子は、何とも野放図な暮らしを送っていた。
- 経済観念がないため、野放図にカネを使い果たしてしまった。
- 結婚まじかだというのに野放図に遊び過ぎだ、と友達に釘を刺された。
「野放図」の類語・類義語とは?
類語(類義語)①「傍若無人」とは勝手な振る舞いをすること
「傍若無人(ぼうじゃくぶじん)」とは、そばにいる人に対し遠慮なく勝手な振る舞いをすることを意味します。相手の気持ちや状況を考えず、厚かましく振舞うことを表します。
- 彼は相席になった高齢者のグループに、傍若無人にもため口で話しかけた。
- 傍若無人に接しても、最後に心から謝れば理解してくれるだろう。
類語(類義語)②「勝手気まま」とは自分の考えだけで行動すること
「勝手気まま」とは、自分の考えだけで行動することを意味します。社会的な常識を無視し、一定のルールを右から左へと聞き流すような様子を表しています。他人のことは気に留めず、どこ吹く風のように自由に思いのまま行動をすることを「勝手気まま」と言います。
- 兄は勝手気ままに家を出て、勝手気ままに帰ってくるのが通常である。
- 勝手気ままな性格が裏目に出て、職場では無責任のレッテルを張られてしまった。
類語(類義語)③「天井知らず」とはキリがないこと
「天井知らず」とは、キリがなく限度のないさまを意味します。天井は範囲を示しますが、その天井がないということは、どこまでも際限なくということです。文章の中身によって良い意味でも悪い意味でも使われる言葉となります。
- 3歳になる娘の要求は天井知らずである。
- 店の売り上げが天井知らずに伸びたのは、有名タレントがコマーシャルに起用されたからだ。
類語(類義語)④「湯水のごとく」とは惜しげもなく
「湯水のごとく」とは、湯や水を惜しげもなく使うことから、大量に、たっぷりとという意味で使われています。おおむね文章では無駄遣いをする、浪費するといった意味で使われることが多いです。
- 宝くじがあたり、湯水のごとくカネを使った。
- 湯水のごとく女子から告白された、若かりし自分が懐かしい。
「野放図」の英語表現とは?
「野放図(図々しい)」は英語で”bold”や”arrogant”
「野放図」で図々しいことを意味する単語は“bold”や“arrogant”などが挙げられます。どちらも厚かましく横柄な態度や図々しい人柄を表す時に使う単語です。
- He is nothing but bold(or arrogant):彼はまったくもって野放図な人である。
「野放図(際限がない)」は英語で”no limit”や”lazy”
「野放図」で際限がないこと、だらしないことを意味する英語は“no limit”や“lazy”が一般的です。「limit」はキリがなく歯止めが聞かない状態を指し、「lazy」は人柄や性質においておいてだらしないことを表します。どちらも英語圏では非常に使用頻度の高い単語となります。
- 彼女のカネの使い方は野放図そのものである:She spends money absolute no limit.
- 私は野放図な生活を送っている:I am having lazy life.
まとめ
「野放図」は「人柄が横柄で図々しいこと」また「際限がなくだらしないこと」を意味する言葉です。
たとえば、相手が礼儀知らずだったり、失礼な態度をとったりした時に、言い方を変えて「野放図な人」「野放図な態度」と表現してみましょう。また、暮らしぶりや金の使い方などがだらしのない時も「野放図な暮らしぶり」「野放図な金銭感覚」などと言ってみると文章全体の伝わり方も変わってくると思います。
「野放図」は決して相手が喜ぶような表現ではありませんが、社会生活をしていく上で使う場面も出てきます。この機会に意味と使い方を把握して、適切に会話に取り入れていきましょう。