「諭す」の意味とは?「悟す」「叱る」との違い・類語も例文で解説

「諭す」は目上の人が目下の者に使う言葉の一つです。相手に上手に話聞かせるというような意味がありますが、果たして目上の人に対して使っても良いのでしょうか?また同じ読みの「悟す」や、「叱る」とのニュアンスの違いも気になるでしょう。

今回は「諭す」の意味と読み方、使い方の注意点と例文をまとめました。類語もあわせてご紹介します。

「諭す」の意味と読み方とは?

「諭す」の意味は「目上が目下に話聞かせること」

「諭す」とは目上の人が目下の者に話聞かせることを意味します。立場が上にある人が、立場が下にある者にものごとの道理や話の内容を理解させるために、わかりやすく上手に言い聞かせることを指しています。

たとえば、職場なら上司が部下に「こういうものだ」と理解しやすい言葉を使ってゆっくりと話をしたり、また、容易で明確な表現を使ってものごとの筋や理屈などを納得するように教え導くことを言います。また、別の環境なら、大学や研究所など教育の場で、教授が生徒などに学問をわかりやすく伝えて理解させるという意味でも使われています。

「諭す」は元々神仏からのお告げ知らせることの意味

「諭す」とは、そもそも神仏からのお告げを知られることを意味する言葉で、神々から人へ、ものごとの教えや学びを警告するという意味を持ちます。これが現在の使い方に通じる由来ともなっています。

「諭す」の読み方は「さとす」

「諭す」は「さとす」と読みます。「諭」は「ユ」とも読むため「ゆす」と誤読してしまったり、また「論」と酷似していることから「ろんす」と読んでしまうことがあるようです。正しい読み方は「さとす」となりますので気を付けましょう。

「諭す」と「悟す」は意味が異なる

「諭す」と似た言葉に「悟す(悟る)」があります。同音であるため、意味を混同してしまいがちですが、「諭す」と「悟る」は根本的に意味が異なりため使い方に注意が必要です。

「悟す」とは、自分自身が迷いから目覚め、ふと自身で答えを得ることを意味します。心に迷いがあったり、わだかまりある時、突然目が覚めて真実や真理が見えてくることを表しています。つまり、「諭す」が意味する「上の人が下の人にものごとを教え、理解しやすいように言い聞かせる」という意味とは基本的にズレがあるということが理解できます。

「悟す」とは自分自身が理解に目覚め、自分自身で答えを導き出すような状況で使われる言葉です。誰かから教え聞かされて学ぶのか、それとも自分から学び真理に気付くのか?二つの言葉の意味を明確にして適切に使うようにしましょう。

「諭す」の使い方の注意点と例文

「諭す」を目上の人に使うのは失礼

「諭す」とは、そもそも高い位置に存在する神仏がお告げを知らせ警告するという意味を持つ言葉で、転じて目上の人が目下の者にやさしく教え導くという意味があります。

そのため、目下の人が目上の人に「諭す」を使うのは、相手を見下したような行為と解釈されるため適切ではありません。「諭す」を目下の者が目上の人に使うのは失礼にあたりますので、気を付けるようにしましょう。

「叱る」との違いは「注意する」のニュアンスがあるかないか

「諭す」と似た言葉に「叱る」があります。日常会話では「叱る」のほうがよく使うでしょう。「叱る」には目下の人に対して、相手の非を指摘して説明し、注意するという意味があります。たとえば「母親が娘のいたずらを叱った」というと、そのいたずらが悪いことだと指摘し、なぜダメなのかを説明したうえで「もういたずらはしないでね?」と注意することまで含みます。

「諭す」には物事を上手にわかりやすく伝えるという意味がありますが、その内容が「注意かどうか」は限定されません。より広い範囲で教え導くことを「諭す」、相手の行動に対する注意であれば「叱る」と使い分けましょう。

目下から目上に対して警告する時は「諫める」を使う

時には目下の者から目上の人に間違いを忠告したり、ものごとを警告したいこともあるでしょう。そのような場合は「諭す」を使わず、「諫める(いさめる)」という表現を使うのがベストです。

「諫める」は目下の人が目上の人に対し、過ちや不注意などを改善してもらいたい時に使われ、尊敬の意を込めながら、やや強い意志を伴ってお願いする意図で用いられる言葉です。たとえば、「部長に経費の無駄使いをしないよう諫めた」「教授に授業で怒鳴らないよう諫めた」などのように使います。

目下から目上に注意を促すことは状況的にも良いではありませんが、「諫める」を使えばさほど失礼な感情を生むようなことはないでしょう。

「諭す」を使った例文

  • 父は小さいころから正しいことだけをするよう諭すのが習慣だった。
  • 技術部長はいつも理解しやすいようにネットワーク回線のいろはを諭してくれる。
  • 教授は生徒に化学の基本を諭すように、図解やデータを使ってわかりやすく説明してくれた。
  • 経験豊富な母から子育てを諭された時は、必ず聞き入れるようにしている。
  • 社長に先代からの社訓を諭され、改めて社会人としての自覚が出てきた。

「諭す」の類語は?

「躾ける」はものごとの習慣を身に着けさせること

「躾ける(しつける)」とはものごとの習慣を身に着けさせることを意味します。社会的に身に着けたい作法や礼儀などを習得するように教え聞かせることを表しています。

例文
  • 息子には食事のあとは皿を片付けるように躾けている。
  • 挨拶の習慣を躾けることは大切だ。

「戒める」は過ちをしないよう注意すること

「戒める(いましめる)」は過ちや間違いをしないように注意することを意味します。悪いことや正義に反する行動をおこさないよう警告することを表す時に使われる言葉の一つです。

例文
  • 盗みを働こうとしていた泥棒を捕まえて戒めた。
  • いじめを二度と繰り返さないように戒めていく意向である。

「戒飭する」は行動を慎ませること

戒飭する(かいちょくする)」とは、人の言動を注意し慎ませることを意味します。誤った行いに対し警告を与え、行動を控えさせる時に使われます。また、自分自身を戒め慎めるためにも使われる言葉となります。

例文
  • スポーツ観戦中、野次を飛ばす観客を戒飭するにいまで至った。
  • 自分の子供じみた行動を戒飭した。

まとめ

「諭す(さとす)」は「目上の人から目下の者へ、ものごとの通りや教えをわかりやすく言い聞かせること」を意味する言葉です。上司から部下へ、会長から社長へ、両親から子供へ、また先生から生徒へと、「諭す」が活用される場面は日常生活にも多くあるでしょう。

ただし「諭す」は目上から目下に使うのがルールです。この逆をしてしまうと上から目線で接していると誤解され、相手に失礼にあたってしまします。くれぐれも使う相手との立ち位置を確認し、間違いのないように心がけるようにしましょう。