「昼行灯」の意味と由来とは?使い方の注意点や類語も解説

「昼行灯」は意味が誤解されやすい言葉です。時代劇や漫画のキャラクターの影響で、かっこいい印象を持っている人もいるようです。しかし、「昼行灯」は、本来言われて気持ちの良い言葉ではありません。言葉本来の意味を確認しましょう。また、類語や由来もご紹介します。

「昼行灯」の意味と由来とは?

「昼行灯」の意味は”ぼんやりした人、役に立たない人”

「昼行灯」の意味は、“ぼんやりした人・役に立たない人”です。「掴みどころがない人」「いつもへらへらしている人」に使われることもあります。読み方は“ひるあんどん”です。「昼行燈」と書くこともあります。

本来は相手をののしる言葉で、気楽に使える表現ではありません。しかし、かっこいい意味がある褒め言葉やフォローの言葉だと勘違いし、相手を褒める意味で使っている人もいます。

「昼行灯」に本来はかっこいい意味はない

「昼行燈」は意味を勘違いしている人もいる言葉です。「普段はぼんやりしているが、本気を出せば有能になる・理由があって無能のふりをしている」という意味だと誤解しています。

理由として考えられるのは、忠臣蔵で有名な大石内蔵助や、漫画やアニメなどのフィクション作品のキャラクターです。大石内蔵助は普段は役に立たない昼行灯と呼ばれていましたが、忠臣蔵事件の際は優秀なリーダーになりました。また、フィクション作品には、本当は優秀なのに昼行灯を装うキャラクターが多くいます。そのため昼行灯に「能ある鷹は爪を隠す」のような良いイメージがあると勘違いする人が増えていったのでしょう。

「昼行灯」の由来は照明器具

「昼行灯」は”明るい昼に行灯を点けても役に立たない”ということが由来になっています。行灯とは照明器具のことです。風で消えないように、和紙を貼った筒で光源を覆ったもので、江戸時代ごろに普及しました。

当時の行灯の光源は油に芯を入れただけの小さな火でした。そのため、昼につけてもほとんど目立ちません。その様子から「役に立たない人」「ぼんやりして、はっきりしない人」を例える言葉になったと言われています。

「昼行灯」の使い方と注意点とは?

「昼行灯」は悪口として使われる

「昼行灯」は言葉の意味の通り、悪口やけなし言葉として使われます。言われて気分の良い表現ではありませんので、不用意に使うことは避けた方が良いでしょう。”昼行灯のように……”と、後ろに続く言葉を説明したり、「昼行灯」だけで人物を表現したりします。

例文
  • 「課長は昼行灯だと、陰で言いあっている」
  • 「もっとしっかりしないと、みんなに昼行灯だと言われてしまうよ」
  • 「昼行灯のようにぼんやりされるのは困ります」

「昼行灯」を褒め言葉に使いたい場合

先程ご説明しました通り「昼行灯」を褒め言葉だと勘違いして使う人もいます。忠臣蔵や時代劇の影響もあるため、相手の年齢に関わらず思い違いをしている可能性があります。

誤用には変わりませんので、自分が褒め言葉として使うのは避けた方がよいでしょう。説明を足して、褒めている意図が伝わるよう言い変えるのが無難です。

言い換え例
  • 「表面に出さないが、本当は実力がある人」
    →「あの人は昼行灯を装っているだけで、本当は優秀な人だ」
  • 「ぼんやりしているが、本当はしっかりしている人」
    →「あの人は昼行灯のようだけど、本当は芯が強い人だ」

「昼行灯」の類語とは?

「昼行灯」の類語は”木偶の坊”

「昼行灯」のように、役に立たない人や無能な人を物に例える言葉に“木偶の坊”があります。「木偶の坊」は”でくのぼう”と読み、操り人形のことです。操り人形は、人間が操らないと動けません。その様子から、何もしない役立たずな人をののしる言葉になりました。「昼行灯」と違い、人の言いなりになっている人に対しても使われる言葉です。

例文
  • 「あの人は木偶の坊のようにただいるだけだ」
  • 「木偶の坊みたいな新人でがっかりだ」

物に対しては「月夜に提灯」

「昼行灯」のように昔からある照明器具で物を例えることわざが“月夜に提灯”です。「つきよにちょうちん」と読みます。「役に立たない物・邪魔な物」を例える表現です。「昼行灯」は人に使いますが「月夜に提灯」は物に対して使います。「無駄な物・贅沢すぎる物」にも使われます。

提灯はお祭りなどで見られる照明器具です。明るい月夜には照明は不要だという意味から、ことわざになりました。なお、正式には「夏火鉢(なつひばち)」が続きます。暑い夏には暖房器具である火鉢は不要だという意味です。

例文
  • 役に立たない物という意味の例文
    「傘を持って来たのに天気予報が外れたので、月夜に提灯となってしまった」
    「防災グッズが月夜に提灯になることを祈るよ」
  • 贅沢すぎる物という意味の例文
    「毎日の朝食にそんなに高いパンを買うのは、月夜に提灯だ」

まとめ

「昼行灯」は「ぼんやりした人」「役に立たない人」を例えるけなし言葉です。しかし「実力を隠している」という意味だと勘違いし、褒め言葉として使っている人もいます。昼行灯だと言われても感情的にならずに、どちらの意味で言っているのか冷静に判断しましょう。