「慈しむ」の意味と読み方とは?由来や使い方・類語も例文で解説

可愛がって大切にするという意味で「慈しむ」という言葉を使うことがあります。子供や目下の人に対して使われることが多いですが、正しい言葉の意味や由来などを知っていますか?

今回は「慈しむ」の意味と読み方、由来、使い方と例文、類語について紹介させて頂きます。この機会にぜひご自身の語彙帳に加えてみて下さい。

「慈しむ」とは?

「慈しむ」の意味は”愛情を注いで可愛がること”

「慈しむ」の意味は、“愛情を注いで可愛がること”です。「慈しむ」とは弱い人や自分より立場が下の者を大切にすることを表す言葉で、大事大事に思い愛情をもって深くいとおしむことを指しています。

また、相手をいたわり育てるという意味も持ち合わせています。たとえば、両親が子供を大切に大事に育てるさまや、幼稚園の先生が幼児に対して愛情をもった優しいまなざしで接することなどを「慈しむ」と言います。

「慈しむ」の由来は平安時代の”うつくしむ”

「慈しむ」は平安時代に使われていた言葉”うつくしむ”が、時代の影響で「大切に祭る」という意味の「いつく(斎く)」へと連想され、結果として「いつくしむ」へ語形変化して生まれた言葉だと言われています。

「慈しむ」の読み方は”いつくしむ”

「慈しむ」の読み方は“いつくしむ”です。音読みが「ジ」なので”じしむ”などと誤読しまわないようにして下さい。

また「慈しむ」は”愛しむ”とも書きます。どちらも正しい使い方で、同じ読み方と意味を持つ同音同義語となります。

「慈しむ」の使い方と例文とは?

「慈しむ」は目上の人には使わない

「慈しむ」は目下の人やかよわい人など、一般的に「自分より弱い人」に対して使われる言葉です。そのため、自分より立場が上にいる人に対して「慈しむ」という表現を使うのは不適切になります。例として、職場では上司や先輩、プライベートでは両親や祖父母などに「慈しむ」という表現を使うのは適切ではなく、相手の解釈の仕方によってはむしろ失礼にあたる場合があります。

もちろん、目上の人でも高齢者の方や身体が弱い方もいらっしゃいます。この場合は状況によって「慈しむ」を使うことは無きにしも非ずです。

基本的に「慈しむ」は弱い人を大事に愛情を注いでかわいがる」となりますが、軸の意味を明確に理解して、正しいシチュエーションを取捨選択するようにしましょう。

「慈しむ」を使った例文

「慈しむ」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。

  • 同僚は子供を愛しむ素晴らしい父親である。
  • 人を慈しむ気持ちがあれば、誰にでも優しくできるものだ。
  • 祖父母は我が子を慈しむように、他人の私たちを可愛がってくれた。
  • 部下を育てるには厳しいばかりではなく、むしろ慈しむ気持ちをもって育てていくことが大切である。
  • 子供にとって他人を思いやり、他人を慈しむ心を持つことは大切なことだ。
  • 慈しむ心を育てながら、自立心も養っていこう。

「慈しむ」の類語とは?

類語①「愛慕」は深く慕い愛すること

「愛慕(あいぼ)」とは、言葉が示す通り”深く慕い愛すること”を意味します。いつも側にいたいと願い、心を強く惹かれるさまを表す言葉です。愛慕はどこかしか相手を懐かしく思い、心の中で相手を思い続けるという意味も含まれています。

例文

職場でひそかに愛慕を寄せる男性がいる。

愛慕の感情に浸りながら、遠くで暮らす彼女を思う。

類語②「愛好」はその事を愛し好むこと

「愛好(あいこう)」とは、あるものごとを愛し好むことを意味します。その事が好きで大事にすることを表す時に使われる言葉で、「愛好家」や「御愛好」などの熟語表現で使われています。

例文

車好きではなかったが、彼の趣味ですっかり愛好家になった。

愛好するには至らなかったが、ドローンは最新の技術を乗せた人気のガジェットである。

類語③「愛寵」は特別にかわいがること

「愛寵(あいちょう)」とは、特別にかわいがることを意味します。他の人とは一線を越えて別レベルで注ぐことを表し、甲斐甲斐しく世話を焼くような愛情のカタチを指しています。また、漢字をひっくり返した熟語「寵愛」と同じ意味を持ちます。

例文

両親の私に対する育て方は、まさに愛寵と言える。

愛寵してやまないのは、彼女は私にとって極めて特別な存在だからである。

類語④「愛おしむ」は愛情を持って可愛がること

「愛おしむ(いとおしむ)」とは、深い愛情を持って相手を可愛がること、心から大切に大事に思い、かわいくてたまらないことを表します。「愛おしむ」は文脈によって「愛おしく・愛おしさ」というように形を変えて使うことがあります。

例文

息子を愛おしむ気持ちは、成人してからも変わらない。

単身赴任で家族と離れていることもあり、子供たちを愛おしむ気持ちが倍増した。

まとめ

「慈しむ(いつくしむ)」とは「弱い人や自分より立場が下の者を大切に可愛がる、愛情を注いで大切にする」という意味を持ちます。

「慈しむ」は「愛しむ」とも表記することができ、同じ意味で使われています。同音同義語となるため、メールや文書をタイプする時に迷いがちですが、文章の性質や内容を考えてしっくりくる方を選ぶようにすると良いでしょう。

また、「慈しむ」は目上の人や自分より強い立場にいる人に対して使うことはありません。うっかり目上の人に使ってしまい、相手に誤解を与えないように気を付けましょう。