「顧みる」の意味とは?「省みる」との使い分けや類語・例文も解説

「歴史を顧みる」「自己を顧みる」などと使われる「顧みる」という言葉があります。振り返って考えるという意味だということはよく知られる一方で、家庭をおろそかにすることを「家庭を顧みない」などと表現することもあり、意味や使い方がわからないという人も多いかもしれません。

この記事では、「顧みる」の複数の意味やそれぞれの使い方と例文を紹介します。あわせて類語や「省みる」との違いについても解説します。

「顧みる」の意味とは?

「顧みる」の意味①振り返って考える

「顧みる」の意味は、“振り返って考える”ことです。「顧」という語には、”振り返る・後ろを向いて見る”という意味があります。「背後を顧みる」などの用い方で、後ろを振り返るという意味で「顧みる」が使われることもあります。

「自らの人生を顧みる」「あの時の判断を顧みる」などの用い方です。”立ち返って考える”という意味でもとらえることができます。

「顧みる」の意味②過ぎ去ったことを考える

「振り返って考える」と共通点もありますが、焦点を当てるポイントが違う“過ぎ去ったことを考える・昔のことを思い起こす”という意味も「顧みる」にあります。

例えば「歴史を顧みる」という用い方です。過ぎ去ったことをあれこれ考えることを「回顧(かいこ)」といいますが、これに近い意味だといえます。

「顧みる」の意味③気に掛ける

「顧みる」には、“気に掛ける・気遣う・心配する”といった意味もあります。この意味として使う時は「顧みない」と否定形で使われることが多く、”家庭を顧みない”や”危険を顧みない”などと使われます。

「気に掛ける、気遣う、心配する」は”心にとどめて考える”という意味であり、頭の中で一定の事柄について考えるということでは他の意味と共通点があります。

「顧みる」と「省みる」の違いとは?

「省みる」は”反省する”という意味

「顧みる」と似た意味を持ち、読み方が同じ「省みる(かえりみる)」という表現があります。例えば、「これまでの言動を顧みる」と「これまでの言動を省みる」とは、一見同じような意味のようにも見えますが、明確な違いがあります。

両者の違いのポイントとしては、「顧みる」の基本的な意味は「振り返る」で、「省みる」の基本的な意味は「反省する」ということです。この違いをおさえておくと、使い分け方がはっきりします。

例えば、過去の言動の意味についてあれこれと振り返って考えてみるということであれば「言動を顧みる」となり、軽率な言動を反省の気持ちで振り返る時は「言動を省みる」となります。

「顧みる」の使い方と例文とは?

自分のことを「振り返って考えるとき」に使う

自分のことについて振り返る時、「顧みる」を使うことがよくあります。「自分を顧みる」「自らを省みる」というフレーズが使われます。次のような例文を挙げてみましょう。

例文
  • 家族への不満をぶつける前に、自分を顧みる時間を持ちたいものだ
  • 自らの人生を顧みる時間を持つには旅に出るのが一番だ
  • 日記をつける時間は自らを顧みる大切なひとときだ

歴史など「過ぎ去ったことを考える」ときにも使う

昔のことや過ぎ去ったことについて考えるという意味では、「歴史を顧みる」が代表的な使い方です。

過ぎ去ったことを考えるという意味では「自らの人生を省みる」の使い方に代表される「振り返って考える」とも似ていますが、このような自らの人生について沈思黙考するという意味合いよりも、過去に起こったことから学びのポイントを探るといった意味合いが「歴史を顧みる」にはあります。

例文
  • 不確実な時代だからこそ、歴史を顧みることが重要だ
  • 退職後に会社員時代のことをを顧みるにつけ、反省することしきりである

否定形の「顧みない」は”気に掛けない”の意味で

「顧みない」という否定形で使われる「気に掛けない」という意味での使い方には次のような例文があります。

例文
  • 家庭を顧みず、仕事を優先第一とするのが昭和の父親だった
  • どんな批判であっても顧みることがないのが現政権の特徴だ
  • 危険を顧みず、救出にあたった人々に感謝の言葉を贈りたい

「顧みる」の類語・熟語とは?

「振り返って考える」という意味の類語”振り返る”

ある物事について、振り返って考える、基本に戻って考える、という意味の類語には「振り返る」があります。「半生を顧みる」は”半生を振り返る”と言い換えることができます。

「過ぎ去ったことを思い返す」を熟語にすると”回顧”

過ぎ去った出来事をあれこれと思い返すことを「回顧」といいます。「顧みる」と同じ「顧」の語が使われていることからも同じ意味を持ちますが、全く同じ意味というわけではありません。

「回顧」は、”回顧する”と使われ、ああいうことも有った、こんなことも有ったと、さまざまなことをあれこれと思い返す時に使われます。めぐらすという意味の「回」の語が使われているゆえんです。

その一方で、「半生を顧みる」などと使われる時の「顧みる」は、あれこれと思い出をめぐらすというより、もう少し深い洞察を行うというニュアンスが強いといえます。

まとめ

「顧みる」には3つの意味があります。「自己を顧みる」のように使われる「振り返って考える」という意味と、「歴史を顧みる」のように使われる「過ぎ去ったことや昔のことをを考える」という意味、さらに「家庭を顧みない」のように否定形で使われる「気に掛ける(否定形では気に掛けない)」という意味です。

「顧」という語には「振り返る」という意味があることをおさえておくと、「顧みる」のさまざまな意味や使い方が整理できます。