「水を差す」は「彼はすぐ水を差す人だから、仕事がやりづらい」のように悪口として使われることが多いことわざです。しかし、適切に使えば、クッション言葉として活用できます。今回は「水を差す」の意味や語源、類語をご紹介します。さらに、水を差す人の心理から対処法を検討しましょう。
「水を差す」の意味と語源とは?
「水を差す」の意味は”横から邪魔をする”
「水を差す」の意味は、“横から邪魔をする”ことです。良い流れで進行していることや、仲の良い人たちを邪魔する行動を表現することわざです。
- 話が盛り上がっている二人の間に割って入って、強引に別の話題を話し出す。
- 友人がコツコツ貯金して買った財布を「お金がもったいない」「高いものに見えない」と言う。
- まだ相手が話しているのに「つまり、こういうことでしょ?」と勝手にまとめる。
- 会議がまとまりかけたのに、最後に急に反対しだす。
なお、あまり使われませんが言葉通り「水を注ぐ」という意味もあります。
「水を差す」の語源は”水を足して薄くする”
「水を差す」が”邪魔をする”という意味のことわざになった由来は、適温のお湯や適度な濃さの料理に水をそそぐ様子からです。お湯はぬるく、料理は味が薄くなり台無しになってしまいます。このことから、良い状態のものに邪魔をして乱すことを「水を差す」と言うようになったそうです。
この場合の「差す」は”そそぐ、入れる”という意味です。「注す(さす)」という漢字でも書きます。
「水を差す」の使い方と例文とは?
「水を差す」は”邪魔をすること”の悪口や注意として使う
「水を差す」は邪魔をするという意味の言葉です。会話の中では、邪魔をされたことに対する悪口や注意に使われることがほとんどです。
- 悪口の場合
「話が盛り上がっていたのに、Aが水を差したせいで会話が途切れてしまった」
「Bはいつも水を差すようなことを言うから、もう遊びに誘うのは止めようよ」 - 注意の場合
「まだ話が終わっていないのだから水を差さないでほしい」
「ようやく意見がまとまってきたのに、今さら水を差すんじゃない」
「水を差す」は話題を変えることのクッション言葉にも
「水を差す」はクッション言葉(伝えにくいことを言う前の前置き)として使う方法もあります。主に話が脱線したときなどに軌道修正する際に使用します。いきなり切り出すのは失礼な立場の相手や、相手を傷つけたくない時に便利な表現です。
- 会議の議題とは違う話題が長引いている。
「水を差すようで恐れ入りますが、議題とは違う方向に話が進んでしまっています」 - 友人が勘違いして喜んでいる。
「水を差すようで悪いけど、このくじは外れがないからガムは誰でももらえるって書いてあるよ」
「水を差す」の類語・似たことわざとは?
「水を差す」の類語は”横槍を入れる”
「水を差す」と同じ”横から口を挟んで邪魔をする”という意味のことわざが「横槍(よこやり)を入れる」です。戦争の武器は槍が主流だった頃、別動隊が横から攻めかかる様子から「横から邪魔をする」という意味になったと言われています。この由来から「水を差す」よりも悪質なイメージがあり、”非難する・妨害する”といった意味合いで使われることもあります。
- 「二人が自分の知らない話題で盛り上がるのが寂しくて、つい横槍を入れてしまった」
「油を差す・釘を刺す」は”水を差す”の類語ではない
「〇をさす」という表現は「水を差す」以外にもあります。”油を差す”や”釘を刺す”などです。どちらも、実物の油や釘をさす意味以外に、比喩的な表現で使われます。しかし「水を差す」とは全く意味が違います。
- 油を差す:「励ます」「おだてる」「扇動する」
- 釘を刺す:「事前に注意する」「あらかじめ念を押す」
「水を向ける」「水に流す」も類語ではない
「水を差す」と同じ様に「水」を使った表現があります。”水を向ける”や”水に流す”などです。似た意味だと感じる人もいるかもしれませんが、この2つは「水を差す」の類語ではありません。
- 水を向ける:「それとなく相手の気を引く」「相手から話し始めるよう仕向ける」
- 水に流す:「過去の問題を、過ぎ去ったこととして不問にする」
「水を差す人」の心理と対処法とは?
「水を差す」のは悪意からとは限らない
すぐに水を差す人が職場にいると業務にも悪影響がでるし、プライベートでもストレスがたまってしまいます。しかし、どう対処するか考える前に、「水を差す人」の心理を想像してみてください。もしかしたら、以下のような理由で悪気なく、結果的に水を差してしまっているのかもしれません。その場合は、悪気がないのは分かっていることを伝えつつやんわりと注意すると、改善してくれる可能性があります。
- 素直に行動してしまう。
- 自分に気付いてほしい、自分を認めてほしい。
- 相手に余計な手間をかけさせるのは悪いので、理解した会話はすぐに終わらせた方が良いと思っている。
- 今すぐ教えてあげないと相手に悪いと思っている。
「水を差す人」とは争わない
残念なことに、悪意を持って水を差す人もいます。ですが、感情に任せてその人と争うのは避けた方が良いでしょう。時間や体力を浪費するし「いつも言い争ってうるさい人」と、あなたも周囲から悪く思われてしまうかもしれません。
全く気にしていないという風に装って、受け流すのが無難です。アドバイスのような形で水を差してくる人には、嫌味に気付いていないふりをして「ありがとうございます。勉強になりました」と返すのも効果的だと言われています。嫌がらせのし甲斐がなくなるので、あなたを標的にしなくなる可能性が高いそうです。
まとめ
「水を差す」は”横から邪魔をする”という意味です。順調に進んでいる物事や仲の良い二人を邪魔する際に使用されます。
悪い印象の言葉ですが、横から発言しなければならない際に「水を差すようで恐縮ですが……」とクッション言葉として活用できます。言葉の意味だけではなく、使い方もあわせてチェックして語彙を増やしていきましょう。