「もらう」という言葉は日常でも職場でもよく登場する言葉です。しかし、上司や目上の人、取引先に使う時、どのように敬語表現を用いるべきなのか不安なこともあるでしょう。
ここでは「もらう」「受け取る」の敬語表現を中心に、「目上の人のことを第三者として語る時」「身内のことを目上の人に語る時」といった、尊敬語や謙譲語の適切な表現方法などを解説しています。
「もらう」の敬語表現は?
最初に、「もらう」「受け取る」の敬語表現から紹介しましょう。
尊敬語は「お受け取りになる」「お納めになる」
「もらう」の尊敬語は、「お受け取りになる」「お納めになる」です。職場なら上司や役員、取引先の相手やお客様など、日常生活でも目上の人から何かを「もらう(または受け取る)」ときに使いましょう。
- 本日、お受け取りになりますか?
- お受け取りになった封筒に資料が入っております。
- 先日の売上報告書です。どうぞお納め下さい。
尊敬語にするときは「おもらいになる」を使う時もある
尊敬語にするときは「お~になる」「お~くださる」「お~られる」と言葉を変化させるのが通常ですが、「もらう」を尊敬語にするために「おもらいになる」と表現することもあります。
忙しいビジネスシーンではさまざまな会話が飛び交うため、「もらう」の尊敬語が瞬時に頭に浮かばないこともあるでしょう。「お受け取りになる」「お納めになる」が最も正しい敬語表現ですが、「おもらいになる」も状況によって使うことがあります。
謙譲語は「いただく」「頂戴する」
「もらう」の謙譲語は「いただく」「頂戴する」です。謙譲語は自分のする行為に対して使われ、相手を敬うときの表現方法として使われます。
- 休暇をいただいてもよろしいでしょうか?
- いただいた荷物にサインをしました。
- 来週、商談にお時間を頂戴できませんでしょうか?
- 頂戴した報告書を部長にお渡しします。
謙譲語をさらに丁寧に「賜わる」
「もらう」「受け取る」の謙譲語は「いただく」「頂戴する」が正しい表現ですが、さらに丁寧にかしこまった言い回しをするなら「賜わる」「拝受する」なども適切です。会話をする相手や立場、またビジネスの状況によって謙譲語の使い分けを上手にしていきましょう。
- 先ほど、会議の日程を拝受しました。
- 拝受したメールにファイルが添付されていました。
- ご予約をたまわり、誠にありがとうございました。
- 社長から大切な訓示を賜った。
第三者の立場の時と身内に対しては?
「第三者」として目上の人の行為を誰かに説明する時、また「身内」からもらったものについて目上の人に話す時、それぞれ敬語表現はどうなるのか解説します。
第三者の立場なら「もらわれる」
第三者の立場で目上の人の話を別の人にする際は、「もらう」「受け取る」の敬語は「もらわれる」「おもらいになる」と表現するのが適切と言えるでしょう。逆に「お受け取りになる」「お納めになる」と表現するのはややかしこまり過ぎるニュアンスを与えることがあります。
- 社長は取引先の専務から新商品のパンフレットをもらわれていました。
- 部長は皆勤賞をおもらいになりました。
身内には「もらう」を使う
職場の上司や目上の人に「身内からもらったもの」について語る時、「母に花束をいただきました」というのは適切であるとは言えないでしょう。この場合、いくら会話の相手が職場の上司や目上の人であっても「母に花束をもらいました」とした方が適切です。
- 母からもらったペンダントは私の一生の宝物です。
- 昨日、父から時計をもらいました。
別の例で言うなら、職場を訪れた第三者に「上司の田中はお席を外されていらっしゃいます」と言うのと同じ感覚です。この場合は「上司の田中は席を外しております」が正解です。
「もらう」の名詞と熟語表現は?
最後に「もらう」の名詞と熟語表現を挙げてみましょう。
名詞は「受領」「拝受」など
「もらう」を名詞で表現するとハンコをもらう、手紙を受け取るなどの「受領」、またメールを受け取る、メッセージをもらうなどの「拝受」があります。これらは「受領する」「拝受する」と「する」をつければ動詞としても機能する言葉です。
熟語は「下賜される」「押し頂く」など
目上の人からものをもらったり、何かを受け取る時に「もらう」の熟語表現として使われるのが「下賜される」や「押し頂く」です。社会経験が短い間はお目にかかることは少ない言葉ですが、キャリアを積むにつれて使う機会も増えてくるでしょう。
まとめ
「もらう」の尊敬語は「お受け取りになる」「お納めになる」状況によっては「おもらいになる」という表現をすることもあります。一方、謙譲語は「いただく」「頂戴する」、ややかしこまった表現をするなら「賜わる」「拝受する」も適切です。
敬語の使い方を間違えると、時として失礼にあたることがあります。敬語の正しい使い方を理解することで、コミュニケーションを円滑に行えるように心がけましょう。