「正味」の意味と類語とは?読み方・方言から標準語への言い換えも

「正味」という言葉を「正味な話」のような形で聞いたことがある人もいるでしょう。実はこの使い方は、関西の方言が元になっています。今回は標準語と方言の意味や、標準語への言い換えに使える類語、対義語をご紹介します。

「正味」の意味と読み方とは?

「正味」の意味は「余分なものを取り除いた部分」

「正味」の意味は、“余分なものを取り除いた部分”です。実際に使われる文脈で、細かい意味は変化します。

  • レシピで食材に対して使われる場合
    皮や骨などを取り除いた食べられる部分のこと。
  • 商品の重さに対して使われる場合
    箱や梱包などを外した商品そのものの重さのこと。
  • 勤務などの時間に対して使われる場合
    休憩時間などを除いて実際に働いた時間のこと。
  • 商品の値段に対して使われる場合(「正味値段」の略)
    「値上げしていない実際の値段」または「仕入れ値」のこと。

「正味」は方言由来の”本当のところ”の意味でも使う

古い辞書には載っていませんが、正味は「隠されている本当のところ」という意味でも使われています。

例文

「正味な話、その納期には間に合いません」
本当のことを言うと、その納期には間に合わない。

本来は標準語の正味に「本当のところ」という意味はありませんでした。この意味の由来になったのは関西の方言だと言われています。本記事の執筆時点(2020年5月現在)には、複数の辞書に「本当のところ」という意味も掲載されており、標準語としては新しい意味です。

相手によっては通じない可能性がありますので、その場合は言い換え表現を使うとよいでしょう。

「正味」の読み方は”しょうみ”

「正味」の読み方は、“しょうみ”と読むのが一般的です。

読み方が「せいみ」の場合は”本当の味”の意味

「正味」には”しょうみ”だけではなく、「せいみ」という読み方もするという説があります。

「せいみ」と読む場合は「本当の味」という別の意味の言葉になりますが、使用例が少ないです。

例文

「伝統のある正味の料理が、当店のモットーです」
伝統を守った本当の味わいがある料理のこと。

「正味」の使い方と例文とは?

「正味」を使った例文

「正味」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。

  • 「カニ正味100gを用意してください」
    殻をむき、骨をとった食べられる部分を100g用意する。
  • 「刺し身の正味量は30gにそろえてください」
    正味量とは、外装を外した重さや量のこと。パッケージなどの重さを除き、刺し身そのものが30gになるよう統一する。
  • 「家事をしたり子どもの面倒を見たりしながらなので、作業できたのは正味3時間だけだ」
    家事や育児の時間を除いて、3時間作業した。
  • 「正味800円の商品なのだから、どれだけ値切られてもそれ以下で売ってはいけない」
    仕入れ値が800円なので、赤字になる価格で売ってはいけない。

「正味」の類語・言い換え語とは?

「正味」の類語は”実数”

「正味」の類語は“実数(じっすう)”です。

類語としての実数は「実際に確かめた数」という意味で使われます。正味との違いは、漢字の通り数に使われることが多い点です。正味や重さや量に使われることが多い言葉です。

「正味な話」と使う場合の類語は”率直”

「正味な話」のように”本当のところ”の意味で正味を使う場合、類語は「率直」が該当します。「率直」は”飾ったり隠したりしない・遠慮がなく、ありのまま”という意味です。出身地域や年代を問わず伝わりやすい言葉なので「正味」の言い換え語として無難に使用できます。

正味の類語「実数」「率直」を使った例文

「正味」の類語”実数”や”率直”を使った例文をご紹介しましょう。

  • 「参加者の実数が分かるよう、必ず受付でサインをもらってください」
    参加者の実際の人数が分かるように、受付でサインをもらうようにする。
  • 「正味、彼の話はウソだと思う」=「率直に言うと、彼の話はウソだと思う」
  • 「正味な話を聞かせてほしい」=「率直な意見を聞かせてほしい」[/box]

「正味」の対義語とは?

「正味」の対義語は”風袋”

「正味」の対義語は“風袋”です。対義語としての風袋は「ふうたい」と読みます。”物の入っている容器や袋、梱包”のことです。取引用語では、風袋と正味を合わせた重さを「皆掛(みなかけ)」と呼びます。

また、風袋には「外からの見た目・うわべ」という意味もあります。

正味の対義語「風袋」を使った例文

「正味」の対義語”風袋”を使った例文をご紹介しましょう。

  • 「風袋を抜いた重さを教えてください」
    容器や梱包を抜いた重さ=正味を教えてほしい。
  • 「風袋だけで人を判断してはいけない」
    見た目だけで人を判断してはいけない。

「婉曲」も「正味」の対義語

正味を「本当のところ」という意味で使う場合、「婉曲(えんきょく)」が対義語だと言えるでしょう。「婉曲」は”遠回しに表現する様子”です。悪意を持って事実を隠す場合より、相手を傷つけないよう優しい言い方をするために使われることが多い表現になります。

正味の対義語「婉曲」を使った例文

「正味」の対義語”婉曲”を使った例文をご紹介しましょう。

  • 「まずい料理だったが、娘ががんばったと思うと婉曲に伝えることしかできなかった」
    娘を気づかって、まずいとはっきり言えなかった。
  • 「そんなに冷たく断らないで、もっと婉曲に言ったほうがいいよ」
    断る際の文言を、もっと遠まわしにした方がいい。[/box]

まとめ

「正味」の標準語の意味は”余分なものを取り除いた部分”です。

関西の方言が由来の「本当のところ」という意味も広まりつつあります。ただし、「本当のところ」は標準語としては新しい意味です。通じにくい場面もあると思いますので、言い換えられるよう類語をチェックしておきましょう。