「とりわけ」の意味とは?使い方の注意点と例文・類語も解説

「とりわけ」は文章の前や、文章の途中で「とくに(特に)」というようなニュアンスで使われる副詞です。家族や友人同士など親しい間柄ではあまり用いる表現ではありませんが、ビジネスシーンやフォーマルな場面では好んで使われています。

今回は「とりわけ」の意味を中心に使い方の注意点と例文の他、類語表現についてもご紹介します。

「とりわけ」の意味とは?

「とりわけ」の意味は「とくに(特に)」「ことに(殊に)」

「とりわけ」の意味は、“とくに(特に)・ことに(殊に)”です。

いくつかの具体的なものごとから一つを強調したり、とくに説明したいものを選ぶときに、その文章の前に置いて使われる言葉です。

同じようなものごとが複数ある中で、あるものの程度がすこぶる抜け出ていることを表します。広い範囲や数量が多い環境で、一つまたは少数を挙げながら、極めて甚だしい様子を表現する時に用いられる副詞の一つです。

「とりわけ」はそもそも”取り分ける”が語源

「とりわけ」は、”取り分ける”という動詞の連用形として確立した言葉です。

「取り分ける」とは、ビュッフェやパーティなどで食べ物を自分の分だけ取って分けたり、各々めいめいに分けることを意味する他、ジャンルを問わず「取りのけて別にする」という意味を持ち合わせています。「とりわけ」は、この「取り分けて別にする」が「別格に・特別に」というニュアンスに転じ確立した副詞となります。

「とりわけ」の使い方と例文

「とりわけ」はビジネスシーンで文章を引き締める効果あり

「とりわけ」は仲間同士や家族の間ではあまり使われない表現ですが、フォーマルな場面で、文章や内容を引き締める意図で用いることが多い言葉です。

「とりわけ」には元々「とくに・ことに」というように、多くの中でもとくに注意を引きたいものを指したり、個性や際立ったものに対して使われます。この意味を利用して商品やサービスのアピールを効果的にすることもできるでしょう。

例文
  1. とくに、我が社の商品は機能に優れています。
  2. ことに、我が社の商品は機能に優れています。
  3. とりわけ、我が社の商品は機能に優れています。

意味においてはどの文章も同じ内容を伝えていますが、よりビジネスライクで丁寧な表現となると、やはり3番目の「とりわけ」を使った文章になります。加えて、相手に与える文脈のインパクトや心に響く度合も若干ながら異なってくるでしょう。

「とりわけ」を使った例文

  • ショッピングモールでは数多くの掃除機が売られていますが、とりわけ我が社のコードレス掃除機は手軽で簡単、しかも高機能が自慢です。
  • 会議ではさまざまな意見が飛び交ったが、とりわけ短期間で売り上げを伸ばすための最善策は見つからなかった。
  • とりわけ、この課題を中心に取り組んでほしい。やるべき事は種々あるがクライアントの意向を考慮しての見解だ。
  • この寺の境内には緑が多くあるが、とりわけアジサイの数には驚く。
  • 研究所での細胞実験では、とりわけ大学院の研究生が多く参加した。

「とりわけ」の類語表現

ここでは「とりわけ」の直接的な意味「とくに」や「ことに」以外の類語をご紹介します。

「別段」は格別で普通ではないこと

「別段(べつだん)」とは”格別で普通ではないこと”を意味し、一般的なレベルではなく、格や程度が甚だしく異なることを指す言葉です。また、多くの場合、打消しの語を伴って「別に〇〇はない」「とりたてて〇〇はない」という使い方をします。

例文
  • このエリアでは別段、トラブルとなる案件は記録されていない。
  • 誰が何といおうと、別段気にするようなことはない。

「なかんずく」はとりわけとほぼ同義語

「なかんずく」とは、漢字で「就中」とも記載され「とりわけ」という意味で使われる副詞です。漢文訓読に由来するため、日常会話ではさほど見聞きしませんが、「とりわけ」と同じように、複数の物事のなかから目立つ一つを挙げる時に使われます。

例文
  • 美術館には多くの作品が並ぶが、なかんずくA氏の絵画は群を抜く勢いだ。
  • 数あるテレビ番組でも、なかんずくドキュメンタリーは安定して人気がある。

「一入」はひときわ・一層

「一入(ひとしお)」とは、ひときわ・一層という意味を持ちます。他のものごとや事象の程度が一段と増すことを表す副詞ですが、「一入」の「入」は当て字です。「一入の喜び」や「一入の感動」などのように使われます。

例文
  • ずっと負けが続いていたため、喜びも一入だった。
  • 感動を一入呼んだのは、子供から母親へ贈った手紙を読んだ時だった。

まとめ

「とりわけ」は動詞”取り分ける”の連用形で、「とくに・ことに・とりわけて」という意味で使われる副詞です。一般的に広く使われる言葉ですが、固くフォーマルな語勢があるためビジネスシーンでは頻繁に用いられます。文章を引き締めたり、多くあるものごとから一つ、ないしは少数を持ち上げて強調する際にはぜひ活用してみて下さい。