「卑劣」の意味と語源とは?「卑怯」との違いや類語・対義語も解説

「卑劣」とは「卑劣な行為」や「卑劣な態度」のように、いやらしく汚いことを表しますが、意味をはっきりと把握せず、誤って日常会話で使っていることはありませんか?今回は「卑劣」について、意味や使い方、類語・対義語をわかりやすくご紹介します。似た言葉の「卑怯」との違いもぜひ知っておきましょう。

「卑劣」の意味とは?

「卑劣」の意味は”品性がなく下劣なこと”

「卑劣」の意味は、“品性がなく下劣なこと”です。人格はもちろん、考えから言動に至るまで、汚く卑しいさまを表す時に使われます。

「卑劣」の特徴は”やることなすことが正々堂々としていない”ということです。性根が汚れているため、周囲から見ても敬遠したくなるような人柄を「卑劣」と呼んでいます。そして、人格的にも低級に属し、軽蔑するべきさまを一般的に「卑劣」と言います。そのため「卑劣」とは決して良い意味を持つ言葉ではありません。

「卑劣」のそれぞれの漢字の意味

「卑劣」は「卑・劣」の二つの漢字で構成されますが、「卑」は”身分や地位が低い・心が卑しく汚い”、「劣」には”質が劣る・いやしくつたない”という意味があります。「卑劣」という意味を理解する上でも重要なキーとなりますので、ぜひ覚えておきましょう。

「卑劣」と「卑怯」の違いとは?

「卑怯」とは”勇気がなくて臆病なこと”を指す

「卑劣」と似た言葉に「卑怯(ひきょう)」があります。「卑怯」の意味は”勇気がなく臆病であること・正々堂々としていないこと”です。「怯(きょう)」という漢字は、訓読みで「怯える(おびえる)」。つまり「怖がってびくびくすること」です。

「卑劣」の場合は品性のなさによる卑しさの意味合いが強いですが、「卑怯」については「勇気がないこと」が特徴です。不安や怖れにより物事に真正面から立ち向かうエネルギーがなく、その結果として正しい手段が取れない、といったニュアンスになります。

「卑劣」の使い方と例文とは?

「卑劣」は相手を非難する時のみに使われる

「卑劣」という言葉は相手の下品な言動や態度に対して「非難する」意図で使われるため、使う相手や状況をしっかり把握しておく必要があります。

たとえば、人間関係を良好に保つべき職場や組織の中では、いかなる状況においても「卑劣」という言葉を使うのは非常に勇気がいることです。その場所に居合わせない第三者について「卑劣」という言葉を使うことはあるかもしれませんが、面と向かって「卑劣」を直接的に放つ場合は注意が必要でしょう。

もちろん「卑劣」は間違っても褒め言葉や長所として用いる表現ではありませんので、言葉が持つ威力についても十分理解しておくことが大切です。

よく使う言い回し「卑劣さ」「卑劣にも」「卑劣な」

「卑劣」でよく使う言い回しは「卑劣である・卑劣だ」のほか、「卑劣さ・卑劣にも・卑劣な」なども、文脈にフィットする適切な形で用いられます。下記でそれぞれの言い回しの例文を挙げてみます。

例文

この陳述書には、犯人の卑劣な手口が刻々と綴られていた。

卑劣にも、彼は私の家族に対していやしい言葉を吐いた。

彼女の卑劣な態度が許せない。

「卑劣」の類語表現とは?

類語①「姑息」はその場逃れで卑怯なこと

「姑息(こそく)」とは態度や言動がその場逃れで卑怯なことを意味します。汚らしい言い訳や嘘などをついて自分の立場を守ろうとすることを指し、ズル賢いさまを表す時に使われます。「姑息な手段」「姑息な相手」などのように使います。

例文

彼は姑息な手段を使ってゴールを決めようとしていた。

ライバル会社の営業マンは、裏金を使って契約をとろうとする姑息な相手だ。

類語②「下衆」は心がいやしいこと

「下衆(げす)」とは心がいやしく汚いこと、またそのような人を意味します。「下衆」はもともと、低身分の人や使用人のことを意味し、上級階級から卑下される立場の人を指す用語として使われてきました。現在は広義で心が卑しく汚いことを表す時に使われています。

例文
  • 公園で子供に怒鳴っている人がいるよ。何て下衆なんだろう。
  • 下衆な考えを持っていると、自然と表情に出てくるよ。

類語③「奸悪」は心がひねくれていること

「奸悪(かんあく)」とは心がひねくれていること、またそのような人を意味します。考えや思考が曲がっていて常識に欠けることを表し、言動や態度が卑しく下品なさまを表しています。

例文
  • 酒場の周辺では、奸悪にも大声をまき散らしている酒飲みが見られる。
  • 社会人一年目の新人を訳もなくやじるなんて、本当に奸悪だ。

類語④「狡猾」は悪賢いこと

「狡猾(こうかつ)」とは悪賢いことを意味し、考えや行動が抜け目なく、人を上手に欺くことに長けているさまを表す言葉です。海千山千に輪をかけてズルくこすいことを意味します。「狡猾」には品性のなさや、下品な意味はあまり含まれず、どちらかというと「ズルくて姑息」というニュアンスが強い表現となります。

例文
  • 決勝戦の相手は狡猾に責めてくるのが特徴のチームである。
  • 狡猾な話しぶりは結構だが、最終的な決定権があるのは私だ。

「卑劣」の対義語とは?

対義語①「高潔」は穢れがないこと

「高潔(こうけつ)」とは穢れ(けがれ)がないことを意味し、品性や振舞い、考えなど全てが気高く立派なさまを表す言葉です。また人柄や人格に優れ、利欲のために心を動かすことなく清らかであるという意味も持ち合わせています。

例文
  • 落とした財布を拾ってくれた男性は、まさに高潔な人柄だった。
  • 高潔な振る舞いができる女性は、やはりモテる。

対義語②「高尚」は上品で俗っぽくないこと

「高尚(こうしょう)」とは上品で程度が高く、俗っぽくないことを意味します。とくに、学問や技芸など知性や才能を持ち合わせ、気高く立派なことを表す時に使われます。

例文
  • 大学の教授陣には、やはり高尚な人が大勢いる。
  • 自慢の彼は高尚な面もちで、私の家族と初めて体面した。

まとめ

「卑劣」とは”品性がなく下劣なこと・考えや言動がいやらしく汚いこと”を意味します。文章や会話の中で「卑劣」という言葉がしっくりこない時は、「卑怯・下衆・奸悪」などの類語から適切な一語に置き換えることも大切です。

「卑劣」は良い言葉ではないため、相手に向かって「卑劣な方ですね」というのは、半ばケンカを打っているようなものです。「卑劣」を含め相手を非難する言葉を使う時は、適切な状況とタイミングを見計らうようにしましょう。