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「巧言令色」の意味と語源とは?「令和」との関係や類語も紹介

「巧言令色」は、『論語』の一節を語源とする四字熟語です。元号「令和」が発表された時に話題となりましたが、その意味をご存知でしょうか?

この記事では、「巧言令色」の意味や語源について解説するとともに、「令和」の「令」との意味の違いについても解説します。あわせて類語・対義語も紹介しています。

「巧言令色」の意味と語源とは?

「巧言令色」の意味は「相手に気に入られようと言葉巧みに媚びる事」

「巧言令色(こうげんれいしょく)」とは、相手に気に入られようと、口先だけでうまいことを言ったり、にこにことして顔色をつくろうことを指します。簡単な表現で言えば、「媚びへつらう」という行為です。

「巧言令色」は、一般的な会話で使われることは少なく、格言や戒めの言葉として引用される形で用いられることが多い言葉です。

「巧言」は「言葉巧みなこと」、「令色」は「媚びること」という意味

「巧言」には「口先だけでうまく言う」「言葉巧みなこと」という意味があり、「巧言に惑わされる」「巧言を操る」などと用います。

「令色」には、相手に気に入られようとして心にもなく顔色をつくろうことという意味があります。「令色」だけで用いられることはあまりなく、「巧言令色」の四字熟語で使われます。

『論語』の「巧言令色鮮し仁」が語源

「巧言令色」は、中国の孔子の言葉をまとめた『論語』にある「巧言令色鮮し仁(こうげんれいしょくすくなしじん)」という一節が語源となっています。

「巧言令色」は先に説明した意味ですが、「鮮し仁」とは、人として最も大切な徳である「仁(じん)」の心が欠けているという意味です。「鮮し」とは、「少なし」という意味と同義です。

つまり「巧言令色鮮し仁」とは、「人に気に入られようと、心にもないのに言葉巧みに愛想をふりまく者は、深い人間が持つ徳が欠けている」という意味です。

「巧言令色」と「令和」に共通点はある?

「令和」の意味は「美しい調和」

2019年4月に日本の新しい元号が「令和」と発表された時、「令和」の「令」の意味についてさまざまな議論や報道が起こりました。

特に海外のメディアが、「令」の語について「命令」や「指令」の意味で使われていると報道したことをきっかけに、政府は令和の意味を「美しい調和(beautiful harmony)」であると発表しました。

その根拠であるところの「令和」の語源は、『万葉集』において梅の花の美しさを詠った「梅花の歌」にあります。歌の序文に「時に、初春の令月にして、気淑く風和ぐ」との「令」と「和」が入った一節があり、現代語では「初春の良き月、空気は美しく風はやわらかだ」と訳されています。

つまり「令」には「よい」という意味があるのです。「令嬢」「令息」など、相手の身内を敬って言う時に使われる「令」はこの意味からきたものです。

「令色」と「令和」のそれぞれの「令」は全く違う意味

前に説明した「令和」の意味のとおり、『論語』を語源とする「令色」と、『万葉集』を語源とする「令和」のそれぞれに用いられた「令」の意味は、全く異なる意味であり、関連はありません。

「巧言令色」の類語とは?

「巧言令色」は中国の古い教訓を語源とする言葉ですが、日本語にも同じような意味を持つ表現が複数あります。「本心ではないうわべだけの巧みな言葉」を意味する類語をいくつか紹介します。

「巧言令色」の類語①「舌先三寸」

「舌先三寸(したさきさんずん)」とは、巧みな弁舌で相手をあしらったり事実を偽ったりすることを意味します。うわべだけの言葉で、心や中身が備わっていないことを表現する言葉として「巧言令色」の類語であるといえます。

「舌先」」とは「口先」と同じ意味で、「三寸」とは短いものや薄いものの例えです。口先だけで中身のないことを表わしています。「舌先三寸で言いくるめる」などと使われます。

「巧言令色」の類語②「美辞麗句」

「美辞麗句(びじれいく)」とは、美しく見えるように飾り立てた言葉のことをいいます。「美辞麗句を重ねる」「美辞麗句を並べたてる」などと使われ、中身がないのに上辺だけを立派らしく見せる言葉や字句を揶揄する表現です。

良いことを言って媚びるという意味の「巧言令色」とも通ずる意味を持っています。

「巧言令色」の類語③「口八丁」

「口八丁(くちはっちょう)」とは、「口が達者なこと」という意味です。「八丁」は「達者」「巧みな者」という意があります。

しゃべることもやることも達者な人を揶揄する言葉として「口八丁手八丁(くちはっちょうてはっちょう)」または「口も八丁手も八丁」という表現もあります。

いずれも良い意味では用いられず、薄っぺらで世渡りが上手な人という意味合いで否定的な意味を持つことから、「巧言令色」に近い意味を持つ表現だといえます。

「巧言令色」の対義語とは?

「飾り気がなく心身がたくましいさま」という意味の「質実剛健」

「相手に気に入られようと言葉巧みに媚びる事」という意味の「巧言令色」に対峙する言葉として、「質実剛健(しつじつごうけん)」があります。

「質実剛健」とは、「飾り気がなくまじめで、心身ともにたくましいさま」という意味です。「質実」は飾り気がなくまじめ・誠実の意で、「剛健」は心身が強くたくましいという意です。うわべだけ媚びへつらうさまを表す「巧言令色」とは対極のさまであるといえます。

日本の中小企業の経営者は質実剛健な人が多い、などと美徳をたたえる意味合いで使われます。

「巧言令色鮮し仁」の対義語は「剛毅木訥仁に近し」

「巧言令色鮮し仁」の対義語に「剛毅木訥仁に近し(ごうきぼくとつじんにちかし)」があります。同じく『論語』の言葉で、「意志が強固(剛毅)で、飾りけのない人(木訥)は、道徳の理想である仁に近い」という意味です。

両者の対比から、うまい言葉を巧みに操る人よりも、素朴で飾り気のない人の方が徳を持っているという孔子の考え方がよく理解できます。

まとめ

「巧言令色」は、「巧言:言葉巧みなこと」「令色:媚びること」という二つの意味から、心にもない言葉で巧みに相手に媚びへつらうこと、というネガティブな意味を持つ熟語です。

『論語』における孔子の言葉「巧言令色鮮し仁」が語源であり、その意味は「巧言令色な者は、深い人間が持つ徳が欠けている」というものです。

新元号「令和」が発表されて間もない時期には、「令」の意味について議論がなされ、「巧言令色」の語が紹介されることもああったようです。しかし両者の意味につながりはありません。